その他令和8年7月10日

国家公務員の転勤に係る施策の方向性に関する検討

掲載日
令和8年7月10日
号種
号外
原文ページ
p.43 - p.44
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国家公務員の転勤に係る施策の方向性に関する検討

令和8年7月10日|p.43-44|原文を見る

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例えば,前記第2章第1節7のとおり、多くの府省では、業務の合理化や働き方の見直しの観点か
ら、事務の集約、AIの活用、外部委託の促進、手続のオンライン化等を既に行っているが、これら
の取組を更に推進していくことが考えられる。
このほか、異動範囲の限定や遠距離通勤を認めることによる転勤を伴わない人材育成やジョブロー
テーションの強化、官署が所在する地域での採用強化、府省や人事グループをまたいだ地方機関同士
の人事交流・併任、転勤ではなく引っ越しを伴わない一定期間の出張による業務への対応、地方公共
団体との連携、定期的な監査・内部チェック体制の徹底による不正防止など、様々な方法を具体化す
ることにより前記の目的を達成できる転勤については,見直していくことが考えられる。
また、今後、日本の人口減少が見込まれる中で、将来にわたって公務を担う人材を確保するととも
に、全国津々浦々に必要な行政サービスを提供し、様々な課題に対応していくためには、府省間の連
携や役割分担のほか、地方公共団体や民間企業等との協力の在り方なども検討の対象になると考えら
れる。
なお、例えば、配偶者の転勤に同行することや高齢の親を介護するため地元に戻ることを希望する
場合のように、職員側が特定の地域への転動を希望することも考えられる。このような転勤希望に対
しては、個々の職員と丁寧にコミュニケーションをとりつつ、仕事と生活の調和の観点から、可能な
範囲で勤務地の希望を踏まえた人事配置に努める必要があると考えられる。
第2節転勤に係る施策の方向性
前節で述べたとおり、転勤の意義や目的に照らしてその必要性を見直すことは、持続可能な公務の
ためにも重要である。しかし、その結果、一部の転勤を廃止・縮減したとしても、職員が全国津々浦々
で働き行政サービスを提供するためには、転勤自体がなくなることは考え難い。
このような状況の下、転勤に対する職員の意識は様々であることを踏まえると、転勤を命じるに当
たっては、職員の意向や事情を具体的に把握し、勤務地・官職と職員の意向を丁寧にマッチングして
いくことが重要である。
また、転勤は職務命令に基づいて行われることからすると、本来、金銭面を中心とした負担を職員
に負わせることは適当でない。職員アンケートにおいても、「できれば行きたくない」者にとって「転
勤に伴う金銭的負担がある」ことが転勤したくない理由で最も多く、転勤に対する金銭面での負担感
が強いことが転勤を敬遠することにつながっていることがうかがえる(図2-21)。したがって、職
員がその転勤を希望するか否かにかかわらず、少なくとも転動に対する金銭的負担感を軽減すること
が必要不可欠である。
これらを前提に、職員の意向に配慮した転勤とするための施策や転動に係る負担軽減・円滑化のた
めの施策の方向性を以下検討する。
1職員の意向に配慮した転勤とするための施策の方向性
転勤を円滑に行う観点からは、採用時に転勤の有無等についての実情を踏まえた情報開示をより
積極的に行うとともに、採用後も職員の転勤に対する意識を把握し、今まで以上に丁寧な説明で理
解を得ることなどにより、職員の希望に沿わない転勤を減らしていくことが考えられる。
(1)採用時の情報開示・発信
国家公務員志望者が転勤の可能性があることを理解した上で働くことができるよう、特に転勤
が避けられない職種・人事グループへの採用に当たっては、多くの府省で既に行っているとおり、
転勤の有無、転勤の範囲、キャリアパスの中で転勤する時期等について、採用後に認識の齟齬が
生じないよう、志望者に転勤の実態を可能な限り具体的に説明し、理解を得た上で採用すること
が必要である。
その際、転勤や異動のバターンは府省や人事グループによって様々であり、必ずしも全ての職
員が全国異動となるわけではなく、また、転勤に対する理解や考え方は人によって異なることか
ら、画一的な説明にとどまることなく、その時点における対象者の理解や採用過程の進捗も踏ま
えつつ、場合によってはネガティブな情報も含めて、採用後の転勤の実情を丁寧に説明すること
が必要である。
なお,公務職場における転勤について正しい情報を発信するとともに、本稿で言及したような
課題や今後の改善の方向性を合わせて提示し発信することは,公務全体の魅力向上にも資するも
のと考えられる。
(2)職員への説明と理解の確保
採用時には転勤があることに納得していた職員又は支障がなかった職員であっても、結婚、出
産、育児、介護のほか自身の健康状態など、採用後の様々な生活環境の変化によって、転動に対
する考え方や許容性が変化することは避けられない。このため、各府省においては、志望者のみ
ならず、現に勤務している職員に対しても、その転勤が当該職員のキャリアバスにおいてどのよ
うな意味を有するのかも含めて、転働の目的や必要性を継続的かつ具体的に説明していくことが
求められる。
その際、職員アンケートで「どこにでもぜひ行きたい」理由として「経験を積めるから」「色々
なところに住みたいから」が上位に挙がっているように(図2-18),転動によって得られる能
力,赴任先の職場や地域においてこそ得られる経験等について、より分かりやすく言語化し、発
信することも考えられる。
また、職員の側においても、転勤によってどのような経験が得られるのか、絶対に転勤できな
いのか、転勤しないことによって自身にどのような影響があるのか、転勤しない場合にはどのよ
うに業務上の実績を積み上げるのかなど、各職員が人生設計や生活環境の変化等を踏まえ、自身
のキャリアプランにおける転勤の位置付けについて考え続けていくことが重要である。
人事管理を行うに当たっては、職員の意向を十分に把握することが必要であるが、とりわけ転
勤については、転勤の可否、転勤可能な地域や時期、住居についての考え、それらの背景となる
職員の事情等、職員それぞれが転勤に対してどのような考えを持っているのかを具体的かつ的確
に把握した上で、可能な限り職員の事情に配慮することが必要である。前記の職員アンケートに
おいて転勤先の地域を重視する旨の回答が多かった(図2-19及び図2-20)ことも踏まえると、
例えば、部内公募等によって希望する勤務地に転勤させることが考えられる。このほか、一部の
府省で既に行っているように、転動の期間をあらかじめ明示すること、配偶者が職員である場合
に同一又は近隣の官署に転勤させること、職員のライフステージを踏まえて転勤を一時的に免除
して職員が対応可能となった時点で転勤させることなども考えられる。
その上で、必ずしも職員の希望に沿えない転勤を命じざるを得ない場合には、可能な限り丁寧
に当該転勤の意義や目的を職員に説明し、理解が得られるよう努める必要がある。
(3)希望勤務地域に限定した人事配置の検討
転勤に関する職員の意向を反映させる観点から、民間企業における地域限定社員のように、職
員の転勤の範囲を制限することも考えられる。
もっとも、現状、各府省では、一部の地域に限定して異動するような人事グループを除き、一
定程度の転勤を前提とした人事管理がなされており,採用時から勤務地を限定することに対して
各府省のニーズは見られない。また、前記(2)のとおり、採用時点では転勤に支障のない職員であっ
ても、キャリアの途中で育児や介護等の事情により転勤できなくなるケースも多く、職員の事情
や転勤に対する考え方は常に変化する可能性がある。
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前記のとおり、転勤の必要性を改めて見直す中で、各府省の人事管理の在り方が変わっていけ
ば、勤務地域が限られた職員が採用されて活躍する余地が広がっていくものと考えられる。勤務
地域が限られた職員のキャリアバスが確立され,対外的にも示されることで地元志向の優秀な人
材を公務に惹きつけることができれば,人材確保の裾野を更に広げることができるものと考えら
れる。
なお、人事院では、令和8年度から、一般職試験(大卒程度試験)合格者の採用において活用
されるよう、初任地に関する受験者の希望を聴取し、各府省に提供することとしている。今後、
勤務地に関する職員の希望や各府省における人事管理上のニーズ等も踏まえ、地域ごとに作成す
る採用候補者名簿の作成単位の見直し等、地元志向に対応した採用の仕組み等について更なる検
討を進める。
2転勤に係る負担軽減・円滑化のための施策の方向性
前記のとおり、実際に転勤する職員に対しては、職務命令に応じて転勤することとなる以上、少
なくとも転勤によって生ずる負担を軽減する必要がある。
加えて、第2章第1節4で述べたとおり、全体として転動を敬遠する職員が増えており、一部の
府省では人事管理上の課題となっていることに加え、転勤に伴う職員及びその家族等への影響もあ
ることを踏まえると、転勤可能な要員を確保するため、転勤のインセンティブとなり得る措置やサ
ボートを講じることが考えられる。
その際、育児や介護等のやむを得ない事情によって転勤することができない職員がいることを踏
まえると、新たな措置を講じるに当たっては、転勤をすることができない職員の勤務条件を切り下
げるのではなく、転勤することとなった職員に対する追加的な措置を講じることが適当と考えられ
る。
前記の職員アンケート結果や民間企業等の取組を踏まえると、新たな金銭的インセンティブの創
設、引っ越し準備のための時間の確保、居住環境等を整えるための取組を講じることが考えられる。
(1)新たな金銭的インセンティブの創設
現状、家財道具の購入・整理を始めとする引つ越しに付随する費用(引つ越し費用・旅費を除
く。)や、不在自宅の管理、赴任先からの帰宅費用、引つ越しに伴う諸々の手続の作業負担のほか、
転勤することに伴う精神的負担など、転勤する職員には既存の仕組みではカバーしきれない様々
な負担が発生することになる。
また、例えば、本府省から地方機関に転勤となる場合には、本府省業務調整手当が支給されな
くなるとともに、地域手当の異動保障はあるものの、段階的にその支給割合が下がっていくこと
などにより、給与支給額が下がることとなる。給与は職務等に応じて変動するものではあるが、
このことが転勤に対する否定的な意識につながっていることは否定できない。
上記の費用や負担への対応に加え,職員の属性や転勤の態様にとらわれず、転動することに対
するインセンティブを設ける観点から、既存の転勤に関する手当を再編・統合すること等により、
転勤に伴う新たな金銭給付制度を創設することが考えられる。その際には、民間企業での取組例
を踏まえ、一時金として支給することも考えられる。
(2)引っ越し準備のための時間確保
転動は、本人のみならずその家族等にも影響を与えることから、各府省における運用上の取扱
いとして、余裕を持って準備ができるよう、転勤を命じる場合には可能な限り早期の打診、内示
等を行うことが考えられる。また、転勤に伴う引っ越し業者の選定、荷造り、各種住所変更手続
等のための時間を確保できるような仕組みを設けることなどが考えられる。
なお、引っ越しに当たっては、様々な作業や手続が必要となる中で、各職員が行っている引っ
越し業者の選定等を効率化するとともに、職員の負担を軽減する観点からも、組織としてこれら
の手続を包括的に支援する仕組みを設けることも考えられる。
(3)居住環境等を整えるための取組
転勤が円滑に行われるためには,転勤先の居住環境を整えるほか、当該転動に伴って別居する
家族への対応も含めて、負担を軽減する方策を講じる必要がある。このため、転勤に当たって民
間の賃貸住宅等を借り受ける職員に対する金銭給付との関係も踏まえつつ、前記第1章第2節2
のとおり、宿舎が不足する地域における対応を更に進めることが必要である。
なお、持ち家の状況や宿舎入居の希望等、職員の住居に関する事情や考え方は区々であり、転
勤に当たっては、各府省人事担当と宿舎担当との間において、その職員の住居に関する事情等を
早期に共有することによって、宿舎への入居を希望する者がスムーズに入居できるよう努めるこ
とが重要である。
また、赴任先の地方公共団体等において移住者への支援策がある場合には、当該支援策等を各
府省が転勤する職員に紹介することや,赴任先の住居とは別に住居を有する職員等が帰宅しやす
くなるように職場で配慮すること等、転勤する職員に対するサポートを充実させることも考えら
れる。
おわりに
本報告では,まず第1章において,転勤の意義や制度の概要について整理した。続く第2章では、
各府省の人事担当者へのヒアリングや職員を対象としたアンケートを通じて、転勤に対する人事当局
及び職員の意識の現状をまとめた。さらに第3章では、民間企業等における転勤の実態や転勤に関す
る取組の例を紹介した。これらを踏まえ、第4章では、公務における転勤の必要性や課題を改めて整
理するとともに、今後の転勤に係る施策の方向性について示した。本報告が、公務における転勤の在
り方や転勤に関する施策についての議論を深めるきっかけとなることを期待したい。
近年、職員の働き方や価値観が多様化する中で、従来と同じ形で転勤を続けていくことは難しくなっ
ている。今後、各府省においては、人材マネジメント全体の在り方を見直す中で、転勤を行う目的や
必要性について、改めて検討していくことが求められる。また、職員一人一人においても、自身のキャ
リア形成の中で転勤をどのように位置付けるのかを考えることが重要である。
その上で、転勤を円滑に行う観点からは、採用時における情報開示を適切に行うことに加え、採用
後においても、職員に対し丁寧な説明を行い、十分な理解を得ることが必要である。また、実際に転
勤する職員の負担に十分配慮することが重要である。具体的には、転勤によって生じる経済的・生活
上の負担を適切に補填することが求められる。さらに、転勤を敬遠する職員が少なくないという現状
が人事管理上の課題となっていることを踏まえれば、転勤可能な人材を確保するためには、転勤に対
して前向きになれるようなインセンティブ措置を講じることが必要である。
人事院としては、各府省や職員の意向を十分に踏まえつつ、内閣官房内閣人事局を始めとする関係
機関とも連携しながら、第4章で提案した施策を含め、転勤に関する様々な施策の実現に向けて取り
組んでいきたい。
第2部執筆メンバー(五十音順)
蘆田麻喜
植田有佐
川島貴子
p.43 / 2
読み込み中...
国家公務員の転勤に係る施策の方向性に関する検討 - 第43頁
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