その他令和8年7月10日
外国政府・国際機関における転勤の状況と支援策(英国、タイ、米国)
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外国政府・国際機関における転勤の状況と支援策(英国、タイ、米国)
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〇寸
(言葉195号(
OV(會社(注目(第611三圖局日01目/48月号
3職員の意向への配慮、職員の理解の確保
転勤の意義や必要性について、職員に対して丁寧に説明し、理解を促す取組が重視されている点
も多くの国で見られる特徴である。採用段階から転勤の可能性やキャリアパスとの関係を明示した
り、評価面談やキャリア面談を通じて転勤経験の意味付けを行ったりすることで、職員が自らのキャ
リアの中に転勤を位置付けられるよう工夫がなされている。これにより、希望に沿わない転勤を最
小限に抑えつつ、組織として必要な人材配置を確保することが図られている。
また、へき地や生活環境が厳しい地域における勤務について、組織のミッションを最前線で体現
する重要な役割として位置付け、その意義ややりがいを職員に浸透させている点も重要である。困
難な地域で勤務することが組織や社会にとって不可欠であること、また、その経験が職員自身の成
長や評価につながることを繰り返し発信することで、そうした勤務地で働くことに誇りを持つ文化
が形成されている例が見られた。
1英国
【コラム4】調査を行った外国政府・国際機関の状況
(1)転勤の状況
英国政府の職員の異動は、ポストに空席が生じた際に自ら公募に応募する方式であり、
転勤についても同様に、職員自身の意思によることとなる。そのため、英国政府において
は希望に沿わない転勤は原則として起こらない。
例外として、ファストストリーム試験と呼ばれる幹部候補を採用するためのプログラム
を通じて採用された者を全国で様々な経験をさせるという観点から半年程度で繰り返し転
勤させるケースが挙げられる。しかし、近年はファストストリーム試験で採用された者で
あっても、希望に沿った対応がなされており、職員の希望に沿わずに転勤させるという考
え方からは遠ざかってきている。
また、政府機能の移転でボスト自体が別の地域に移り、それに伴い職員が異動するケー
スも存在する。政府機能の移転の例として、過去には財務省の一部が英国中部の都市であ
るダーリントンに移転し、最近では「Places for Growth」(以下「PfG」という。)と呼ば
れるプログラムにより、ロンドンに所在する約2万3,000ポストが移転した。
PIGでは、ポストが空席になったタイミングで当該ポストを地方に移転する方法が採ら
れており、職員の転勤は最小限に抑えられている。移転したポストは主に、ボストの移転
先の人材で埋められており、例えばスコットランドにあるグラスゴーに移転した内閣府の
ポストのうち、95%程度はスコットランド出身者が就き、残りがロンドンなど別の地域か
ら転勤してきた者が就いている。
職員を転勤させる際には、ロンドンでのキャリアと同等の十分に魅力的なキャリアを歩
むことができることを示しており、それが機能移転を進める大きな成功要因となっている。
キャリアの明確化に加え、移転先の家賃の安さ、教育環境など、転勤によって生活の質が
どのように上がるかを示したパンフレットを配布したり、転勤予定先で2週間程度業務を
体験する機会を付与したり、移転先での生活を実感しやすくする取組も実施している。
PIGに伴う移転では、「職員のキャリアを移す」という視点に立っており、各職員は転勤
先で今後のキャリアを築いていくことを前提としているため、家族帯同で移っている。日
本のように単身で赴任するということは考えられないとのことであった。
(2)転勤に対する支援・インセンティブ等
職員を転勤させる場合、各府省の判断により、転勤の費用として最大1万4,000ポンド
まで支給可能なパッケージが用意されている。ただし、そのための予算は、内閣府が政府
統一であらかじめ確保しているわけではなく、各府省が独自に予算を確保する必要があり、
また、 実際の利用は限定
的である。この1万4,000ボンドについては、引っ越し費用も含めて支給するものであり、
インセンティブというよりは、移転に伴い生じる経済的な不利益を補う側面が強い。
また、ロンドンでは物価等を踏まえ、特別な給与体系(London weighting)が適用さ
れているが、ロンドン以外に移った際にも、給与の減額へ対応するため、2年間はこの給
与体系が適用される仕組みとなっている。
2タイ
(1)転勤の状況
欧米諸国と同様に、基本的には職員が自発的に異動していく方式である。国の行政機関
は、バンコク及び各地方に所在しているが、職員は採用時に希望する勤務地を選ぶことが
できる。本省と地方機関で昇進ペースに変わりはなく、給与水準も同じであるため、職員
の多くは自らの出身地での勤務を希望する傾向にある。
本省の局長級以上に昇進するには、三つの異なる地域で勤務する必要がある(異なる地
域の定義は府省によって異なる)ため、上位のポストを目指す職員は自らの意思で他地域
のボストに転勤することとなる。また、現在の勤務地において現職位より上位のボストに
空きがない場合に、昇進のために自発的に別の地域のポストに移る職員も存在する。
当局側の命令により転勤させるケースは少ないが、各府省では職員の異動計画を作って
おり、人員不足の地域に職員を補充する場合のほか、人材育成の観点で他地域での経験を
積ませたい場合や異なる仕事を経験させたい場合に、局長等の上司の判断により転勤を命
じる場合もある。転勤を命じられた場合には,従うことが義務と考えられており、拒否す
ることはできない。
転勤命令の前段階で打診等のプロセスはないが、日常的に職員の将来のキャリアプラン
を話し合っており、上司から、転勤が成長の機会であることをしっかりと説明しているた
め、職員側も基本的には拒否することはない。仮に転勤に不服がある場合には、人事担当
部局に相談することは可能であり、転勤が不当なものと判断された場合には転勤前の職場
に戻す判断がなされることもある。
なお、へき地には軍隊が駐在しており、一般の事務系職員はへき地の官署に常駐するこ
とはなく、必要に応じて都市部の官署から出張するなどして事務を行っている。
(2)転勤に対する支援・インセンティブ等
転勤に対するインセンティブ等は基本的にはなく、引っ越し費用も職員の自己負担であ
る。引っ越し費用は、従来から支給されておらず、タイでは引つ越し費用が安く、バンコ
クから国境付近まで異動しても、2,000~3,000バーツ(約1万~1万5,000円。令和8年3
月31日時点)程度しかかからない(初任給は日本円で10万円程度)こともあり、職員から
不満が出ていることは特にないとのことである。
タイ政府の場合、上記のとおり、給与水準が本省と地方で変わらない中、バンコクの生
活費が高いこと、本省の業務は責任が大きいことなどから、地元での勤務を希望する職員
が多く、本省で勤務している職員は、既にバンコクに家を持っているバンコク出身者が多
い。バンコクの民間企業は国家公務員と比べて給与水準が高いこともあって、国家公務員
志望者は減っており、本省で勤務する人材の確保が難しくなってきている。
3米国
(1)転勤の状況
米国政府において、海外赴任も含む転勤を前提とした人材育成や人事配置が体系的に行
われている職種の一つとして外交官が挙げられる。米国内で勤務する職員とは手当等の処
週面で異なる面はあるが、転勤の意義、インセンティブや支援を考える上で、職員のキャ
リア上、転勤が体系的に取り入れられている事例として、本稿では外交官に着目して整理
を行った。
外交官は、採用後最初の2ポストについては、人事当局が約15か所の勤務地候補を職員
に提示し、職員から提出された希望順位や人材育成上のニーズを踏まえて配属先を決定す
る。最初の2ポストを終えた後は、幹部層を含め、夏と冬の年2回の異動サイクルごとに
公示される空席ポストに対し、職員が自ら応募して異動することが基本となる。
公募ポストは通常、着任の約1年前に示され、選考に当たっては職員の等級、必要とさ
れる語学要件、語学習得に要する期間、志望動機、生活が困難な地域での勤務経験などが
総合的に考慮される。実際の着任時期は、赴任する官署と調整の上、子の学校の日程等の
家庭事情も考慮の上で決定される。なお、例外的に、生活が著しく困難な地域のポストや,
要人支援に伴い長期出張を要する等、極めて負荷の高い国内ポストに配属された場合には、
着任後短期間で人事当局の指示の下で職員を異動させる場合がある。
第1991號(告2號 17
人材育成と人事配置の公平性を確保する観点から、外交官にはキャリアを通じて海外勤
務を行うことが強く期待され、同一ポストでの連続勤務は原則5年、米国内での連続勤務
は原則8年が上限とされている。また、幹部への昇進には、原則として2回、生活が困難
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な地域での勤務経験が求められている。家庭の事情や重大な健康上の理由により、生活が
困難な地域での勤務を経験できない場合には、 昇進資格を維持するための申立てが認めら
れる場合もある。
このように、米国政府の外交官については、公募による異動を基本としつつも、特定の
業務や勤務地に偏らない配置が実現されるよう、定期的な人員の循環を促す仕組みが設け
られている。
(2)転勤に対する支援・インセンティブ等
米国内の転勤の場合、特別な手当は支給されないが、引っ越し費用は官費で賄われる。
また、国務省本省(ワシントンD.C.)から国際連合米国政府代表部(ニューヨーク)ヘ
の異動など、 勤務地の物価水準が大きく異なる場合、住宅手当や地域調整手当が支給され、
生活費の差異に対する調整が行われている。
海外転勤の場合、家財の輸送には重量枠が設定され、その範囲内での輸送費は官費負担
となるほか、自動車1台分の輸送費も官費の対象とされている。赴任時には、一時宿泊手
当が支給され、 食費、 食費、交通費など赴任初期の生活立ち上げに要する費用が補助さ
れる。また、生活が困難な地域での勤務など、やむを得ない事情により家族が米国内に残
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留せざるを得ない場合、二重生活に伴う経済的負担を軽減するため、単身赴任手当が支給
される。赴任や帰朝、外国間の転勤に伴う引っ越し費用は、米国内での自動車保管料など
ごく一部の費用を除き、ほぼ100%官費で支給され、職員の自己負担は最小限に抑えられ
ている。
子女教育に関しては、在外においてもワシントンD.C.と同等の教育機会を確保するこ
とを基本方針として教育手当が支給される。特別支援教育、家庭教育、寄宿学校の授業料・
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寄宿学校に通う子の帰宅旅費についても、条件に応じて実費精算が認められている。一方
で、ベビーシッター代や学童保育料等については私費負担とされている。
( ) 1 1111-1 199
金銭的支援のほか、在外公館には円滑な赴任を支援するための担当者が配置され、職員
本人のみならず家族の生活面も含めた支援が行われる。具体的には、帯同した家族の現地
社会への適応支援や、子女の教育に関する手続・調整に加え、教育に関する特別なニーズ
がある場合には、適切な支援機関や支援サービスへの紹介も行われる。
4マレーシア
(1)転勤の状況
マレーシア政府においては、本省と地方機関との間や、同一地域内であっても異なる機
関間での異動など、 職員の異動は、 必ずしも本人の自発
100 000 00 00 00 00 00 000 000 000 000 000 000 000 00,0000000000000000000000000000000
的な応募のみに委ねられているわけではなく、人事当局の命令によって行われるケースも
一般的である。異動の形態としては、同一機関内での異動、他機関への異動、昇進に伴う
異動の三類型があり、組織運営や人材育成の観点から計画的に運用されている。
人事当局は、転勤や異動を政府全体のパフォーマンスを高めるために不可欠なものと位
置付けており、特に会計や給付決定などに関わるポスト(センシティブボスト)について
は、 一定期間ごとに異動させる必要性が高
いとされている。具体的には、センシティブポストでは3~5年、そうでないポストでも
3~8年程度を目安に異動が行われており、専門性の蓄積と人材の固定化防止のバランス
が意識されている。
職員の異動は原則として各府省単位で管理され、ポストの必要性や職員の能力実績を踏
まえた上で、上司の承認を得て行われる。異動命令は14~30日間の通知期間を置くことと
されている。転勤命令に先立って全職員に一律に事前面談を行うことが制度化されている
わけではないが、実際の運用では、家庭や介護などの事情が聴取され、考慮されることも
ある。
転勤命令を受けた場合、原則として拒否することは認められておらず、正当な理由なく
応じない場合には懲戒処分の対象となり得るが、転勤命令に対して不服を申し立て、命令
の妥当性を争うことは可能である。この場合、不服申立て手続には一定の時間がかかり、
通知期間である14~30日の間で行うことはできないため、いったんは次の勤務地に異動し
特徴を得ることは、その他の地域の状況により、
た後、不服申立てを行い、転勤命令が不適当と判断されれば、元の勤務地に戻ることとな
る。
「異動や転勤は昇進やキャリア形成の一環として前向きに捉えられており、現職の職員や
国家公務員の志望者の間で強い抵抗感が生じている状況にはないと考えられている。
(2)転勤に対する支援・インセンティブ等
転勤という仕組みを支えるため、給与・手当制度を通じた支援が講じられている。2024
年には新たな報酬制度が導入され、基本給は固定しつつ、勤務地や業務内容に応じて手当
の給付額を調整する仕組みが整備された。異動に関連する手当の支給額は、業務の困難度、
職員の役職段階、地域間の生活費や物価の差、追加的な業務責任の有無など、複数の要素
を勘案して決定される。
国全体を複数の地域に区分し、地域間で異動する場合には地域手当が支給されるほか、
転勤インセンティブとして1か月分の給与を一度だけ支給する制度が設けられている。ま
た、職員本人に加え、家族の帰宅費用も支給対象であり、年に1回実家を訪問するための
航空運賃や、介護・忌引きといった事情に配慮して支給される手当も存在する。
引っ越しに伴う実費についても、交通費や梱包費、引っ越し期間中の食費などについて
補償を求めることが可能であり、転勤によって職員が過度な経済的負担を負わないよう配
慮がなされている。一方、金銭以外の支援、例えば、住居探しや生活立ち上げに関する支
援については、特段の制度は設けられていない。
こうした仕組みにより、転勤は個々の職員に一時的な負担を伴うものの、制度全体とし
ては生産性の確保や人材流出の防止、地域間格差への対応を目的とした合理的な人事運用
として受け止められている。
5国連関係機関
国際連合(国連)は、1945年に設立された国際機関で、平和と安全の維持、開発、人権、
人道支援など幅広い課題に取り組んでいる。国連システム全体の「行政・調整の中枢」とし
て国連事務局があり、事務総長の下、ニューヨーク本部を中心に安全保障理事会や国連総会
を始めとする加盟国の会議の運営や政策立案等に関する事務を担っている。また、紛争地域
や政情が不安定な地域には、現地拠点としてPKO(国連平和維持活動)ミッションや特別
政治ミッションが置かれ、当地の平和維持活動や政治・外交的手法による紛争解決支援に従
事している。
一方、国連の基金・計画は、国連総会決議に基づき、開発、こども支援、人口・保健など
の特定分野に特化した実施機関として設置され、それぞれ独自の予算・事務局を持つ。各国
に国事務所(Country Office)、各地域に複数の国事務所を統括する拠点として地域事務所
(Regional Office)を置き、各国政府や現地機関と連携して事業を実施している。
国連事務局と各基金・計画はそれぞれ別組織であり、採用や任用などの人事運用は個別に
行われているが、給与制度は共通のものが適用されている。
今回は、ニューヨークに本部を置く国連事務局、国連児童基金(UNICEF)、国連開
発計画(UNDP)、国連人口基金(UNFPA)に対して調査を行った。
(1)転勤の状況
国連関係機関は世界各地に拠点を有するため、共通して、世界各地で活動することを前
提とした人事運用が行われている。国連の職員規則においても「職員は事務総長の権限に
より国連のいずれの活動や事務所にも配属される」旨が規定され、国をまたいだ転勤も頻
繁に行われている。
各機関の人事当局に転勤の意義を聴取したところ、①多様な環境を経験することで現場
の実情を踏まえた質の高い意思決定を行えるようにすること、②本部と現場の知識・経験
を循環させること、③危険地域や生活が困難な地域に勤務する負担を職員間で平準化する
こと、④特定勤務地への長期滞留を防ぎ組織の新陳代謝を確保することなどが挙げられた。
国連関係機関における職員の異動は、欧米諸国と同様、空席ポストが生じた際に選考に
応募して異動する形態が基本であり、転勤についても同様である。一方、ニューヨーク等
の生活が便利な地域に長期勤続する職員が存在したり、危険地域や生活が困難な地域への
人事配置に苦慮し、一部の職員に負担が偏ったりといった問題もあり、当局側の差配によ
り転勤を行う仕組みも存在する。
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国連事務局やUNICEFでは、困難度に応じて、当該勤務地に在勤できる最大勤務年
数(例:ニューヨーク本部の場合、5年間)を設定し、一定期間経過後には当局主導で異
動を行う仕組みが導入されている。私的事情、医療事情又は組織運営上の事情については、
特別に組織されるパネルによる審査を通じて、転勤対象からの免除や延期が認められる場
合もあるが、例外的である。
この仕組みで異動する場合、当局が異動候補ポストの一覧を異動対象となる職員に提示
し、職員が提出した希望を踏まえてマッチングが行われ、職員に異動先ポストが示される。
異動ポスト提示後に正当な理由なく異動を拒否した場合は職務放棄として懲戒・免職の対
象となり得る。
UNDPでも同様の仕組みが導入されているが、ニューヨーク本部の最大勤務年数は7
年間と長く設定され、同一勤務地内での異動でも勤務年数がリセットされる(国連事務局
及びUNICEFでは、同一勤務地内で別のポストに異動しても勤務年数はリセットされ
ず、最大勤務年数が18か月延長される)など、緩やかな運用がなされている、
UNFPAは、現場志向の強い組織であり、組織として現場での経験を重要視している。
また、困難度の高い勤務地ポストを確実に充足すること、長期滞留による組織硬直化を防
ぐことを主な目的として、国事務所の管理職等(全職員の約6割)を対象として、人事当
局が差配して一定年数(困難度の高い勤務地は2年、それ以外は4年)ごとに転勤させる
人事ローテーションが行われている。
(2)で述べるように、国連関係機関においては、転勤に伴う金銭的インセンティブが設け
られているが、人件費も含めた国産予算は加盟国からの拠出で賄われており、近年は非常
に厳しい財政状況にあることを反映して、上記の当局側が職員を異動させる仕組みは一部
機関では停止されている状況である。
(2)転勤に対する支援・インセンティブ等
上記のとおり、今回調査した機関では、一部で当局側による異動の仕組みが設けられて
いるものの、基本的には、職員が空席に公募することによって転勤することが期待されて
いる。そのため、まずは職員による自発的な転勤を促すために金銭的・非金銭的なインセ
ンティブや支援が存在する。
国連共通の給与・手当制度の中では、異動奨励手当が設けられている。異動奨励手当は、
国をまたぐ異動の回数に応じて支給額が増加し、かつ、本部に勤務している間は支給され
ないため、本部外への転勤を促すインセンティブとして機能している。
また、民間賃貸住宅に居住する際に支給される住宅補助手当は、同一勤務地に勤務する
年数に応じて支給額が減少し、7年間で支給されなくなる仕組みとなっており、勤務地を
移るインセンティブとなっている。また、危険な地域や生活が困難な地域に勤務する職員
の負担軽減を図るため、危険手当や困難度に応じて支給額が増えるハードシップ手当、心
身の回復を目的として一定期間ごとに通常の年次休暇に付加して付与される休暇(Rest
& Recuperation)などが設けられている。
その他、国によって教育の整備状況が異なる中で、職員の子女がインターナショナルス
クールも含む様々な形態の学校に通学するための費用を補填するため、教育補助手当
(Education grant)が支給されている。
非金銭的なインセンティブとしては、機関によって差はあるが、昇進において、本部外
の現場経験、特に困難度や危険度の高い地域での勤務経験が考慮されることが挙げられる。
これにより、国連職員としてキャリアを積んでいく上で、転勤は重要な要素として受け止
められている。
国連事務局では、制度上、一定以上の職位への昇進において、転動回数が要件の一つと
なっている。その他の機関では、制度上の要件とはされていないが、困難地勤務が昇進機
会の拡大に直結することは周知され、空席公募においても現場経験の重要性を明示してい
る。
これに加えて、UNICEFでは、キャリア面談や評価面談の機会を通じて、職員の長
期的なキャリア展望を聴取し、当該キャリアパスにおける転勤の重要性に対する理解を促
している。あわせて、困難度・危険度の高い地域で組織のミッションを果たすことの重要
性ややりがいを職員に浸透させることで、転勤して本部以外の現場で勤務することに誇り
を持つ文化が形成されている。
第4章転勤の必要性・課題等の再整理と今後の施策の方向性
第1節公務における転勤の必要性・課題等の再整理
前記第3章第1節のとおり、民間企業においても、様々な施策を講じつつも転勤がある企業が相当
数に上っている。公務においては、法令で定められた職務の遂行のため、例えば、海上保安官、刑務
官、入国警備官など現場に多大な人的リソースを投入する必要がある場合や、へき地や海外で勤務す
る要員を確保しなければならない場合など、職員を配置すべき職場と必要とする人材の居住地が遠く
離れているときには、採用時の配置又は採用後の転勤によらざるを得ない。
このように、転勤によらざるを得ない場合がある一方、近年の情報通信技術の発達や交通の利便性
の高まりによって、その場所に職員を配置する必要性自体が薄れているなど、必ずしも転勤によるこ
となく行政上の目的を達成できる場合もあると考えられる。 例えば、 人材育成のための転勤のうち、
マネジメント能力のかん養という点については、転居が不要な職場において必要な経験を付与するこ
とで、必ずしも転勤を経験させずとも一定の効果を上げることが可能と考えられる。
前記第2章第1節のとおり、各府省ヒアリングを通じて、府省ごとや人事グループごとに様々な観
点で転勤を行っているものの、各府省では、必ずしも目的に応じた転勤の重要性や必要性の違いを明
確に区別せずに、従来からの定期人事異動の一環として転勤が行われていることがうかがわれた。
前記第2章第1節の各府省ヒアリングでは、子育て、介護等で転勤が困難な職員に配慮している結
果、転勤する職員に偏りが生じているといった声も聞かれた。第2章第2節の職員アンケートの結果
(図2-10)によれば、転動に肯定的な意識を持っている職員の割合は全体として5割弱は存在する
中で、転勤に対する意識は配偶者の有無等によって大きく傾向が変わるものではなく、配偶者がいて
就業している場合でも、4割を超える職員は転勤に肯定的な意識を持っていることも確認できる(図
2-14)。
これらのアンケート結果や各府省ヒアリングを踏まえると、各府省においては、職員の外形的属性
による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)によって、例えば、家族を有する職員に対し
て転勤の可否を深く確認せず、まずは独身の職員を転勤の候補者とするなど、実際には転勤が可能な
者を十分に把握できていない可能性もある。
また、若年齢層の職員、子育てや介護を行っていない職員の中にも、転勤に否定的な意識を持って
いる職員が一定割合存在することからすると(図2-11、図2-15及び図2-16)、既に転勤が人事
管理上の喫緊の課題となっている府省はもとより、ヒアリングで現時点では転勤は課題とはなってい
ないとした府省においても、今後、人材確保や円滑な組織運営に当たって問題が顕在化する可能性が
ある。
以上のような状況の下で、個々の転勤を検討するに当たっては、各府省において単に従来どおりの
慣行として転勤を続けるのではなく、人材確保や円滑な組織運営の観点から、改めて転勤の必要性を
検討することが必要ではないか。
その際には、どのような目的で転勤を実施するのか、従前は相応の目的があったとしても、社会情
勢が変化する中で現在も相応のコストをかけて実施する必要性があるのか、転勤可能な職員が確保で
きるのか、転勤以外の手段により代替できないのかなど、様々な観点から転勤の必要性を検討するこ
とが必要である。
その上で、組織としての必要性が必ずしも高くない転勤があれば、その職員を転勤させる必要があ
るのか、転勤を伴わない現地の職員を異動させること等を含め、代替措置について検討を行うことが
必要である。
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