その他令和8年7月10日

民間企業等における転勤の実態と取組

掲載日
令和8年7月10日
号種
号外
原文ページ
p.36 - p.38
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民間企業等における転勤の実態と取組

令和8年7月10日|p.36-38|原文を見る

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第3章民間企業等における転勤の実態と取組
第1節民間企業等における転勤の実態
転勤は、国に限らず民間企業や地方公共団体でも広く行われている。近年、一部で見直しの動きが
進みつつあるものの、なお多くの民間企業等で転勤が行われている。
令和7年9月に公表した令和6年「民間企業の勤務条件制度等調査」(人事院)によると、転居を伴
う転勤がある企業は42.6%となっている。企業規模が大きくなるにつれて、転居を伴う転勤がある企
業の割合は高くなっており、500人以上の企業では、転居を伴う転勤がある企業の割合は79.2%となっ
ている。
〔図3-1転居を伴う転勤の有無別企業数割合
図編あるV/7)ない ない 不明
場合 ) ) )
(會合 ) 196) 日) 22848888年号 18
また、「企業の転勤の実態に関する調査」(平成29年10月25日独立行政法人労働政策研究・研修機構)
によると、転勤の目的として「社員の人材育成」が最も多くなっており(66.4%)、この点は前記の
各府省ヒアリングにおける回答と大きな違いは見られない。
■図3-2転勤の目的(複数回答)
(注)1「企業の新勤の実態に関する調査」(平成29年10月25日作立
2転勤がある企業(「正社員(総合職)のほとんどが転勤の可能性がある」と「正社員(総合職)でも転勤をする者の範囲は限られ
ている」の合計)を対象に集計。
これに対して、「マイナビ2026年卒大学生就職意識調査」(令和7年4月23日株式会社マイナビ)によ
ると、行きたくない会社(あてはまる項目を二つ選択)として、「ノルマのきつそうな会社」に続き、「転
勤の多い会社」が多くなっており(31.0%)、5年連続で増加している。
(図3-3行きたくない会社(上位3項目のみ抜粋)
注)「マイナビ2026年卒大学生就職意識調査」(令和7年4月23日株式会社マイナビ)より作成。
また、転勤に対する意識やニーズを調べた「転勤に関する定量調査」(令和6年5月30日株式会社パー
ソル総合研究所)によると、社会人(ホワイトカラーの正社員)においては、どの年代も、女性では
3割以上、男性では2割近くが「転勤がある会社は受けない」としている。
1図3-4社会人中途入社意向
注)1「転勤に関する定量調査」(令和6年5月30日株式会社パーソル総合研究所)より作成
2括弧内はサンプル数。
このように、新規学卒者か転職者かにかかわらず、就職先の選定に当たって転勤がある企業を敬遠
する者が相当程度に上っている。
第2節民間企業等における転勤に関する取組
このような状況の下、民間企業等では転勤について様々な見直しが行われている。
1民間企業の取組
民間企業においても,転勤は、事業やサービスの広域展開、適材適所の人員配置、多様な経験付
与による人材育成などを目的として行われているが、働き方に関する価値観の多様化や法令改正を
背景に、その在り方を見直す企業が出てきている。そこで、令和7年12月から同8年2月にかけて、
転勤に関する取組について複数の企業にヒアリングを行った。
ヒアリングでは、事業展開上の理由などから社員の転動が避けられないといった事情がある中で
も、「働く場所を選びたい」という社員のニーズに向き合い、転勤の有無・範囲を社員が選択するこ
とを前提としたものへと人事制度を全体として再構成した上で、転働に応じる社員には、転居に伴
う単なる実費補填,従来の単身赴任者に対する手当の支給等を超えた金銭的支援のほか,引っ越し
サポートや転居先住居を探す際のサポート、転居・帰宅のための休暇付与など、様々な支援を行っ
ていることが確認できた。
それらの取組の主な傾向をまとめると次のとおりである。
(1)転勤の有無・範囲を社員が選択することを前提とした制度の導入
○入社時に分けた人事グループによって転勤の有無も分かれていたことを見直し、人事グ
ループを統合した上で転勤の有無や勤務エリアが選べる制度を導入している例が見られた。
育児・介護等を理由とした転勤の一時免除制度を設けている例も見られた。
○拠点となる勤務地を社員自身が選択し、当該勤務地から転居を伴う異動をすることに対し
て補償やインセンティブを与える仕組みを導入している例が見られた。
86 1 10 10 日) 日) 日本
(2)実際の転勤に伴う負荷に見合った補償・支援の充実
○将来転勤があり得ることを考慮した処遇ではなく、実際に転勤があった場合に、その転勤
に伴う様々な負担に見合った補償・支援を行うという企業が多かった。
○従来から設けられていた家族と別居になった場合の手当のほかに、遠距離異動そのものへ
の手当・一時金を新設した例が見られた。
○単身赴任(家族と別居)している場合は、別居手当のほかに帰宅のための交通費が実費で
支給される例も見られた。
○転勤、帰宅のための休暇制度を設けている例が見られた。
○引っ越しに係る費用は、全ての企業において負担していた。業務の引継ぎと併せて実施す
る場合も含め、転居先の内見の費用についても負担する例が複数の企業で見られた。
○その他、引っ越し業者・不動産業者の紹介、部屋探しや引っ越し手続の支援等の取組が見
られた。
【コラム2】ヒアリングを行った主な民間企業の具体的な取組
(株式会社JTB)
株式会社JTBは、平成30年から、入社時に事業所へ通勤可能な範囲内で生活の拠点
とする住所 (居住登録地) を登録した上で、 ①全国転勤可能、 ②居住登録地を含むエリ
ア内での転勤あり、③居住登録地から通勤可能な事業所でのみ勤務という三つの勤務地
区分を選択させ、①から③までの勤務地区分それぞれで基本給に差を設けている。また、
希望するエリア外で勤務することとなった場合には、①との基本給の差に相当する額を
「基本業務・勤務地外手当」として支給している。
居住登録地外への転居を伴う異動を命じられた社員が、新任地において異動と同時に
パートナー又は扶養家族と別居する場合には別居手当を支給し、帰宅旅費は年12回まで
会社で負担するとともに、新任地における生活に必要な備品購入といった出費への補填
を目的として赴任手当を支給している。
令和2年10月から、テレワークをペースに業務に従事することで、自身の希望する場
所にいながら遠隔地の拠点に勤務することができる「ふるさとワーク制度」を導入した。
転居が必要な遠隔地の事業所への異動自体は発生するが、実際の転居は伴わず、生活の
拠点である居住登録地に住みながら働くことが可能となる。 また、転勤中の社員の場合、
この制度を利用して、途中から転勤を解消することもできる。
(東京海上日動火災保険株式会社)
東京海上日動火災保険株式会社では、社会的な共働きの普及や働き方に対する価値観
の多様化に伴い、転勤への抵抗感が高まってきていること等を背景に、令和8年度から
総合職とエリア総合職を一本化するとともに、全従業員が生活の拠点となる「本拠地」
を定め、転勤については、毎年、①国内外問わない、②本拠地を含む一定の地域内、③
本拠地からの転勤には同意しない、 実際に転勤が
生じた場合には、転勤に伴い発生する経済的負担や生活の拠点から離れることによる心
理的負担などを考慮し、本拠地と勤務地との距離等に応じて毎月10万円~13万4,000円
の「転居転勤サポート手当」が支給される。
さらに、こうした転勤政策の転換と併せて、社員が自ら希望するポストに応募する「J
OBリクエスト制度」や、現行業務を担いながら社内プロジェクトに参画できる「プロ
ジェクトリクエスト制度」を強化・充実させ、主体的なキャリア形成や成長機会の提供
にも取り組んでいる。
(AIG損害保険株式会社)
AIG損害保険株式会社は、平成31年4月から、全社員に、①全国どこでも異動可能
か/異動範囲を特定のエリアに限定したいか、②全国11エリアのうち異動を希望するエ
リアはどこか、③②のエリア内で異動を希望する都道府県はどこかをそれぞれ記載させ、
原則として希望する地域の範囲内で異動させる[Work@Homebase制度」を導入した。
転勤する職員本人が選んだ賃貸住宅を社宅として借り上げているが、令和3年10月か
ら、転勤する職員全員への補助を廃止し、希望する都道府県(③で記載したもの)以外
に勤務となった場合にのみ、その地域の賃料平均額の80%を会社が負担することとした。
また、単身赴任手当や一時帰省旅費も廃止し、家族帯同の有無にかかわらず、希望す
るエリア(②に記載したもの)以外に勤務している間、毎月15万円の「モビリティ手当」
を支給することとした。
これらは、「希望しない地域での勤務か否か」に重きを置くという考え方に某づくもの
であり、これに基づき、寒冷地において支給される暖房手当など地域の特性に応じた手
当も廃止した。
(大成建設株式会社)
大成建設株式会社は、令和7年7月に社員の転勤に伴う処遇を大幅に引き上げた。従
来から、引っ越し費用のほか、赴任手当、単身赴任者への別居手当を支給してきたが、
これらの手当額の引上げに加え、転勤時に一時金を支給することとし、特に社員の「家
族との時間を大切にしたい」という声を受け、家族帯同の場合には、最大(転岡距離が
500km以上の場合)で100万円を支給する。
また、育児・介護等を理由とした最大5年間の転勤免除制度や、従来の専任職を総合
職に一本化することにより、勤務エリア限定型の総合職の制度も設けた。なお、社員は
引っ越しに当たり同社が提携する運送会社を利用でき、また、条件を満たせば社宅・寮
や借上げ住宅に居住できる。
国内外の各地で事業を手がけていることや、キャリア形成の観点もあり、多くの社員
は転勤を経験するが、会社として、「転勤に伴う負担に配慮し、報いる」というメッセー
ジを打ち出すことにより、人材確保や離職防止を目指している。
(東日本旅客鉄道株式会社)
東日本旅客鉄道株式会社は、 転勤の発令
等を受けた際、現勤務箇所から新勤務箇所までの距離が100km以上ある場合は、遠距離
の転勤等に対する一定の負担に配慮し、1回につき30万円の一時金を支給する。家族と
別居する者には、遠距離異動手当に加えて別居手当が支給される。
同社における転勤は、社員の能力開発に加え、近年では活躍フィールドの拡大を目的
として実施しているが、遠距離の通勤や転居への不安を持つ者もおり、そのような通勤
や転居の負担に配慮する姿勢を示している。なお、社員が転居する際は、ゲループの物
流会社を利用して自己負担なく引っ越しができ、一定の要件を満たせば各地の社宅や社
員寮に入居できる。
さらに、令和8年度の採用者から、これまでのエリア職を改め、より多様な役割を果
たし、各地域の事業運営を担うことが期待される「地域総合職」を新設した。
(中部電力株式会社)
中部電力株式会社では、転勤者が利用できるサポート制度として、転勤休暇制度、部
屋探しサボート制度を設けている。
転勤休暇制度は、転居を伴う異動について、年次有給休暇とは別に、異動前4日間
異動後4日間の計8日間休暇を取得できる制度である。役所への転居届など,転勤者の
ニーズに応じて、休暇を取得できる。
また、部屋探しサポート制度は、各事業拠点に存在していた社宅の廃止・縮小を背景
に平成30年4月から導入した。同社が、不動産の賃貸仲介会社と提携し、社員が専用サ
イトに広さや家賃などの希望の条件を入力すれば、該当する物件を紹介してもらえると
いう仕組みであり、部屋を探す負担を軽減している。
これらのサポート制度に加え、赴任旅費の支給、転居に係る雑費の一括支給、引っ越
し費用の支給のほか、単身赴任者には単身赴任手当の支給がある。
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