その他令和8年7月10日
第2部 公務における転勤の現状と今後について~時代に応じた持続可能な公務を目指して~
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第2部公務における転勤の現状と今後について~時代に応じた持続可能な公務を目指して~
はじめに
国民が、全国どこに住んでいてもあまねく行政サービスを受けられるよう、各府省は、東京の本府
省だけでなく、離島やへき地を含む全国各地の職場で業務を行っている。そのため、必要な人材を確
保し、全国各地にある職場に職員を配置するとともに、職員の成長を支援し、円滑な昇進や人事運用
を行い、職場の活性化や組織の健全性を保つことが重要となる。
こうした観点から、国家公務員にとって転勤(異動や組織の移転により勤務地が変わり、転居(引っ
越し)する必要があるもの。以下同じ。)は、これまで不可欠なものとされてきた。
一方で、転勤は職員の生活に大きな影響を及ぼす。家族との同居、子育てや介護との両立、地域コ
ミュニティとのつながりなど、個人のライフスタイルや価値観に深く関わる問題でもある。近年は、
情報通信技術の発達等により、必ずしも勤務地に縛られない働き方が可能な職種・職域も増えてきた。
また、働き方やライフスタイルが多様化する中で、官民を問わず、転勤を避けたいと考える人が増え
ているとの指摘もある。
こうした状況を踏まえると、転勤の意義や必要性について、改めて見直すことが求められている。
特に、転勤は国家公務員を目指す人の応募意欲にも影響を与え得るため、人材確保の観点からも重要
な課題である。転勤によって幅広い業務経験を積み、キャリア形成につながるという利点がある一方
で、それが本人の望むものではない場合には、仕事へのモチベーションの低下や離職につながるリス
クも否定できない。
このように、職員の転勤をめぐっては、行政サービスを安定的に提供するための必要性と、職員-
人一人の生活の質や希望との間でどのようにバランスを取るかという難しい課題がある。令和7年3
月に取りまとめられた人事行政諮問会議の最終提言においても、「ワークスタイルやライフスタイルが
大きく変わるような転勤の必要性を改めて見直すべき」とされている。人事院としては、こうした提
言や最新の実態を踏まえ、公務の持続可能性を高める観点から、職員の多様な価値観やライフスタイ
ルに配慮した、これからの転勤の在り方と考えられる施策を提案したい。
本報告を執筆するに当たり,アンケートやインタビューに御回答いただいた職員、ヒアリングに御
協力いただいた各府省人事担当部局、民間企業、地方公共団体、外国政府等の方々には感謝申し上げ
たい。
第1章転勤の意義と制度
第1節転勤の意義
「転勤」という用語は、国家公務員法には規定されていない。本稿では、異動に伴い転居する必要
があるものを転勤として取り扱うことは先に述べたとおりであるが、国家公務員制度において、昇任、
降任、転任、配置換等の異動によって職員を配置すること(任用行為)は、各省大臣等の任命権者の
権限とされている。行政機関においては、行政組織法令に基づき、本府省には局や課が、全国には地
方機関が置かれ、そこに職(官職)が置かれている。国家公務員制度においては、欠員が生じた官職
に職員が任命されるとされており、職員の働く場所について、官職への任命にはその官職が置かれる
官署で勤務することが含意されていると考えられる。そのため、異なる官署に置かれる官職への任命
(転任発令)には、職員がその官署において勤務することの命令も含まれていることになる。転任、
配置換の法的性質について、多くの判例は民間企業における労働契約とは異なる職員本人の同意を要
しないものとして取り扱っており、任命権者の裁量に委ねられるものとしている。したがって、異動
に当たって職員の意向を事実上考慮することはあるものの、国家公務員制度において、職員の転勤は、
任命権者が一方的に決めることができるものであり、裁量の逸脱又は濫用がある場合にのみ違法とさ
れ得るものである。
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彗星
日曜令 日曜金曜日
様々な地域に職場がある組織においては,組織や職員の一体性・一体感を確保する観点から,地域
をまたいだ人事交流を行うことが重要である。転勤の必要性については、平成6年に人事院に設けら
れた転勤問題研究会の報告においても議論されていたが、具体的な転勤の必要性を今日的な観点から
整理すると、(1)行政内容の統一性保持、(2)人材育成、人材の効率的配置、(3)人事管理上の要請、(4)組
織の健全さの維持及び(5)へき地勤務の公平性等の確保の五つと考えられ、それぞれ次のとおりである。
(1)行政内容の統一性保持
官署が全国に存在する国の行政機関においては、国全体として行政内容を統一的に実施し、組
織としての一体性を確保するため、転勤が行われている。様々な官署間で人材が異動し、その地
域で一定期間勤務することによって、本府省の方針を全国に浸透させ、又は様々な現場の実情を
全体方針に的確に反映させることが期待されている。
このように,地域をまたいで職員個人が身に付けた知識や経験を組織内で移転し共有すること
は、組織全体としての公務能率の向上にもつながるものと考えられる。
(2)人材育成、人材の効率的配置
各府省では、人材育成の観点から、本府省等で政策の企画・立案等に当たる職員に地方の現場
における政策執行の経験を積ませること、又はその逆に、地方の現場で政策執行を担当する職員
に本府省等における全国的規模での政策の企画・立案等の経験を積ませること、将来の管理職候
補となる職員に比較的小規模な組織でマネジメント経験を積ませることなどが行われている。本
府省職員にとっての地方の現場での勤務経験、地方機関職員にとっての本府省での勤務経験や、
知らない土地で人的ネットワークを構築する経験等を他の方法で代替することは困難と考えられ
る。
さらに、地域によって必要な業務量や確保できる人材に違いがあることから、地方の現場にお
ける業務や海外での勤務を担う人材の量と質を調整して効率的な配置をするため、また、本府省
における要員確保等のため、転勤が行われている。
(3)人事管理上の要請
(2)でも述べたとおり、人材育成の観点で転働により管理職候補となる職員に様々な経験を積ま
せる例が見られる。
また、例えば、地方の事務所の所長をより上位の官職に昇進させる場合など、その官署には職
員を配置すべきより上位の官職が他にないときには、転勤によって別の官署に職員を異動させる
必要がある。昇進する職員以外についても,人間関係や業務が硬直化して農場に活気が失われる
ことによる弊害を避ける観点から転勤が行われている。
これらは長期勤続雇用を前提とした人事運用であり、硬直化の弊害を避けることについては、
近年の中途採用者の増加等を始めとする人材流動化が進めばある程度解消が図られていくことも
考えられる。
(4)組織の健全さの維持
各種の許認可、監査、補助金の交付等を担当する組織では、特定の地域における当該行政事務
の対象者との人間関係の固定化が癒着につながることを防止し、組織の健全さを維持する観点か
ら転勤が行われている例がある。
(5)へき地勤務の公平性等の確保
離島やへき地に所在する官署等での勤務については、現地に居住するなど、その官署に通勤可
能な者のみで必要な人材を確保することが困難であり、転動によって人材を配置する必要がある。
また、離島やへき地、開発途上国等の海外で勤務することの負担が特定の職員に偏らないよう、
公平性を確保するため、定期的な転勤が行われている。
第2節職員の転勤に関する現行の人事運用や制度の概要
1人事運用
各府省において、職員の人事管理・人事異動は、専門の別(事務系・技術系等)や採用機関の別
(本府省・地方機関)等を元にした人事グループ別に行われることが一般的である。このような人
事慣行を前提に、前記の転勤の目的や必要性に加え、新規学卒者の一括採用、長期勤続といった人
事運用の中で、各府省人事当局の権限により、多くの転勤は定期的な人事異動の一環として行われ
ているものと考えられる.
なお、国家公務員においては、民間企業の地域限定職のように転勤範囲を限定した人事グループ
として職員を採用する制度上の仕組みはない。一般職試験(大卒程度試験)行政及び教養区
分のように、国家公務員採用試験のうち一部には、関東、中部、近畿といった地域区分が設けられ
ているものがある。しかし、これらの地域区分はあくまでも採用時の勤務地域に係るものであって
採用後の人事異動における勤務地を限定するものではない。
2転勤に関する現行の制度概要
転勤に関連する現行の仕組みとしては、次のようなものがある。
(1)旅費(移転料等)
転勤に伴う引つ越し費用については、国家公務員等の旅費に関する法律(昭和25年法律第114
号)に基づき、転居の実態を勘案して財務省令で定める方法により算定される額を上限として実
費額が支給される。
なお、国費の適正な支出を図る観点から、転居にかかる費用であっても多くの民間企業におい
て支給を制限している経費など国費による支給が適当ではない経費(追加料金等)は対象外とさ
れ、経済性を担保するために複数の引つ越し業者による相見積りを取るなど旅費の支給に際して
は一定の手続を行うことが求められている。
(2)広域異動手当
広域的な異動(異動等前後の官署間の距離及び異動等の直前の住居と異動等の直後の官署との
間の距離が60km以上である場合等)を行った際に、異動等の日から3年間支給される。
官署間の距離区分に応じた支給割合となっており、距離区分が300km以上の場合には俸給等の
10%、距離区分が60km以上300km未満の場合には俸給等の5%が支給される。令和7年国家公務
員給与等実態調査によると、広域異動手当の受給者は3万3,553人(受給者割合は約13%)となっ
ている。なお、地域手当が支給される場合には、当該地域手当の支給割合を減じた割合となる。
(3)地域手当の異動保障
民間賃金の高い地域に勤務する職員に対して支給される地域手当(東京都特別区の場合には俸
給等の20%)を支給される職員が、支給割合の低い地域に異動した場合等に激変緩和措置として
支給される。
異動1年目は異動の日の前日に勤務していた地域等に係る支給割合(100%)、2年目は1年目
の80%、3年目は1年目の60%の地域手当が支給される。令和7年国家公務員給与等実態調査に
よると、地域手当の異動保障の受給者は3万5,243人(受給者割合は約14%)となっている。
(4)特地勤務手当等
離島その他の生活の著しく不便な地に所在する官署(特地官署)に勤務することとなった職員
に対して、最大で俸給等の25%が支給される。これに加え、特地官署等への異動等に伴って住居
を移転した職員には,3年間にわたって最大で俸給等の6%が支給される。令和7年国家公務員
給与等実態調査によると、特地勤務手当等の受給者は2,590人(受給者割合は約1%)となって
いる。
(5)単身赴任手当
官署を異にする異動等に伴い転居し、配偶者と別居し、単身で生活している職員に支給される。
職員の住居と配偶者等の住居との交通距離に応じて、月額3万円~10万円が支給される。令和7
年国家公務員給与等実態調査によると、単身赴任手当の受給者は1万7.198人(受給者割合は約
7%)となっている。
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