令和七年九月二十四日西林水産大臣小泉澄次郎
食品等の持続的な供給を実現するための食品等事業者による事業活動の促進に関する基本的な
方針
我が国で生産される農林水産物の65%は食品産業による製造・加工を経て消費者に流通するなど、
食品産業は、農林漁業者と一般消費者とをつなぐ重要な役割を果たしており、食料・農業・農村基本
法(平成11年法律第106号)においても、農業者や消費者と並び、食品産業は、食料システムの主た
る構成員として明確に位置付けられている。
食品等の持続的な供給を実現するための食品等事業者による事業活動の促進及び食品等の取引の適
正化に関する法律(平成3年法律第59号。以下「法」という。)は、食品等事業者による食品等の持続
的な供給の実現に向けた事業活動の促進と食品等の取引の適正化のための措置を講じることで、食料
システムの関係者により、食品等の価格形成において食品等の持続的な供給に要する合理的な費用が
考慮されるようにするとともに、食品等事業者の生産性の向上と付加価値の向上を図ることで、食品
等の持続的な供給を実現しようとするものである。
現在、我が国の食品等事業者は、世界の食料の需給及び貿易が不安定な状況となっている中で、原
材料の安定調達が大きな課題となっていること、我が国の労働人口の減少・高齢化により、人手不足
が深刻化していること、気候変動、生物多様性の損失等食料システムをとりまく環境が変化する中で、
環境負荷の低減への対応が求められていること等、大きな変化に直面している。
こうした課題に対処し、生産性の向上と付加価値の向上を図っていくとともに、食品等事業者がこ
うした課題に対処する意義について消費者が正しく理解し、購買行動や価値観の変容につなげていく
ことが食品等の持続的な供給を実現する上で必要であり、法では食品等事業者による事業活動に関す
る計画認定制度を措置し、食品等事業者によるこうした取組を促進していくこととしている。
食品等事業者によるこうした取組の促進に当たっては、常に食品等のサブライチェーン全体の最適
化を目指すことが重要であり、個別の事業者の取組が重要であるのは言うまでもないが、それが部分
最適に陥るのではなく、各事業者の「協調」によるサブライチェーン全体を通じた取組を促進させる
ことが重要である。あわせて、若い世代を中心に新たな人材が活躍しやすい環境を整備することも重
要である。
食品等の持続的な供給を実現するための食品等事業者による事業活動の促進に関する基本的な方針
(以下「基本方針」という。)は、このような認識の下に、食品等の持続的な供給を実現するための食
品等事業者による事業活動の促進を図るため、必要な事項を定めるものである。
第1安定取引関係確立事業活動等の促進に関する事項
(1安定取引関係確立事業活動等の促進の意義及び目標
(1)安定取引関係確立事業活動等の促進の意義
①安定取引関係確立事業活動
食品等の持続的な供給を実現する上では,食品等事業者がその原材料である農林水産物を
安定的に調達できるようにすることが必要不可欠である。
一方、世界における人口の増加、気候変動等により世界の食料の需給及び貿易が不安定な
状況となっている中で、食品等事業者はその調達体制の見直しを行わなければ,これまでど
おり原材料となる農林水産物やその取り扱う生鮮食料品等を安定的に調達することが困難に
なることも予想される.
このため、食品等事業者においては、これまでのように自らは原材料となる農林水産物の
生産には直接関与せずに中間流通業者を通じて原材料を調達する体制から,自らも積極的に
農林漁業生産に関与することで必要な原材料を安定的に調達する体制への移行が求められ、
農林漁業者との安定的な取引関係の確立を図ることが重要となっている。
農林漁業者との安定的な取引関係の確立を図るためには、食品等事業者の協力により、農
林漁業者が安定的に原材料を生産できる環境を整備することが重要であり,食品等事業者が,
契約による農林漁業者との安定的な取引関係の構築,農林漁業者に対する人的支援及び物的
支援、安定的な取引関係の強化や協業を進めるための地域の農林漁業者への出資、食品等事
業者自らの農林漁業への参入等に取り組むことが有効となる。
このような観点から、これらの取組を含む、安定取引関係確立事業活動を促進することに
より、食品等事業者による原材料の安定調達を図り、食品等の持続的な供給の実現を目指す
ものとする。
②流通合理化事業活動
食品等の持続的な供給を実現する上では、食品等事業者が省力化やサブライチェーン全体
での効率化を図るとともに、新たな需要の開拓や付加価値の向上を図ることが重要である。
人口減少・高齢化による人手不足が深刻化する中で、食品産業は労働集約型の産業であり
人的労働力に大きく依存している。多品目かつ品質管理が重要な食品等を高頻度で流通させ
る手間がある一方で、業務の標準化・デジタル化が進んでおらず、各社の運用に手作業での
対応が多く残存しているため、現状、他産業と比較して労働生産性が低くなっている。こう
した課題は個別の事業者の政組によって改善されることもある一方、例えば商品情報の標準
化、発着連携による荷役の軽減など複数の食品等事業者が関わる課題の場合、サブライチェー
ン全体で取り組むことが必要となる。
このため、食品等事業者においては、限られた人的労働力の中で食品等の持続的な供給を
実現するため、生産性が低く非効率となっている業務を見直し、食品等事業者による省力化
投資や食品等の流通の最適化、これらをサブライチェーン全体で協調して行うための標準
化・デジタル化を推進することで流通の効率化を図ることが重要となっている。
これを推進するためには、自動化技術の活用や、少ない労力で効果を出す仕組みの導入等
が重要であり、省力化に向けた設備・システム等の導入、食品等の物流の効率化、個別の事
業者を超えた関係者の協調による省力化の機器等の開発・普及、個別の事業者を超えたサプ
ライチェーン全体での標準化の推進等に取り組むことが有効である。
加えて、国内における人口が減少傾向にある中でも食品産業が発展し続けるためには、消
費者から選ばれて購買される商品を継続的に製造・流通・販売しなければならない。消費量
を増やす観点からは、成長する世界の食市場や、国内での高齢者世帯、共働き世帯の増加等
を踏まえ、新たな需要を開拓していくことが重要である。また、食品等の持続的な供給に要
する費用を考慮した価格形成を進める中で消費者から購買され続けるためには、例えば高度
な品質管理設備の導入などを通じて、消費者が納得する付加価値の高い商品の提供を行って
いくことが不可欠である。
こうした新たな需要の開拓と付加価値の向上を図るためには、食品等事業者が新たな食品
等の開発、品質管理又は衛生管理の高度化、海外展開等に取り組むことが有効となる。
このような観点から、これらの取組を含む、流通合理化事業活動を促進することにより、
食品等事業者の業務の省力化やサプライチェーン全体での効率化、新たな需要の開拓と付加
価値向上を図り、食品等の持続的な供給を目指すものとする。