その他令和7年3月14日

自然再生事業における生物多様性保全とSDGs・気候変動対策の取組

掲載日
令和7年3月14日
号種
号外
原文ページ
p.107
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自然再生事業における生物多様性保全とSDGs・気候変動対策の取組

令和7年3月14日|p.107

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(合)
10100日
持続的な食料システムの構築を目指すこととしています。また、「農林水産省生物多様性戦略(今
和5年3月改定)では、自然資本の持続可能な利用を確保しつつ生物多様性を保全する取組を
持続的に行うとしています。
このことを踏まえ、自然再生事業に関連して、関係者の合意を得ながら、化学農薬や化学肥
料の低減等による環境に配慮した農業生産活動、生態系ネットワークの保全に配慮した水田や
水路,ため池等の持続的な維持管理活動や基盤整備の実施、森林計画制度の下での森林の整備・
保全や生物多様性に配慮した森林施業の実施、漁場環境の再生状況に応じた漁具の選定や漁期
の設定など、地域の環境と調和のとれた取組を推進することが重要です。これらの地域では、
長年にわたる人の営みと自然の相互作用によって特有の生態系や文化が形成されてきたことを
踏まえ、農林漁業者を始めとする地域の知見を尊重し、生物多様性の維持にとって重要な伝統
的維持管理の手法を活用しながら自然再生を進めるとともに、自然資本の循環利用や生きもの
をブランドに活用した農林水産物の販売、エコツーリズムなど自然資本を生かした観光の促進
などにより、地域の産業や社会経済活動と自然再生を関連付け、地域社会の活性化につなげる
ことにより、持続可能な取組としていくことが重要です。また、自然資本を活用した所得と雇
月機会を確保し、農山漁村が育む自然の恵みを生かし環境と経済をともに循環・向上させると
いった観点も重要です。
さらに、ビジネスにおける生物多様性への関心が高まっており、企業や金融機関が連携して
自然再生を進めることの意義はより大きなものとなっています。自然再生の実施者にとっては、
資材や労力、技術、資金の面で支援を受けることにつながり、企業にとっては、社会貢献活動
の効果的な情報発信や社員等への福利厚生に加え、当然関連財務情報開示等を通じた企業価値
向上、生産活動で生じた副産物や廃棄物などのリサイクルやエネルギー利用による気候変動対
策への貢献、事業と関連する土地利用を把握することによるリスクマネジメントなど、様々な
可能性があります。加えて、金融機関においては、企業の伴走支援を通じてテステナビリティ
経営を後押しすることが期待されています。このように、自然再生の実施者と企業、金融機関
に利益をもたらし得るため、関係者が積極的な情報交換を行い、連携を図ることが重要です。
ウSDGs達成に向けた取組
平成27年9月の国連総会において採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で
は、「持続可能な開発目標(SDGs)」として17のゴールと169のターゲットが提示されており、
17のゴールにはエネルギー、持続可能な消費と生産、気候変動、生物多様性等、多くの環境関
連の目標が含まれました。SDGsは、複数の課題を統合的に解決することを目指すことや、1
つの行動によって複数の側面における利益を生み出すマルチベネフィットを目指すことといっ
た特徴を持っています。
SDGaの実現は地域の課題解決にも直結することから、自然再生の実施に当たっては、地域
循環共生層構築の視点等と併せて、SDGsのゴール等を活用することにより、関係者間で目標
に向けた共通言語を持ち、当事者意識を持って取り組むことができることから、地域の課題解
決を一層促進することが期待されます。また、企業がSDGsへの取組を推進していることも踏
まえ、自然再生においてSDGsのゴール等を取り入れることにより、企業との連機を図ってい
くことも重要です。
エ気候変動対策の取組
気候変動は生物多様性の損失をもたらす主要な要因の一つであり、気温上昇による地域の構
成種の変化や生息地の縮小などを引き起こしています。このため,生態系の保全・再生を通じ
た気候変動緩和策及び適応策に貢献する取組の強化とともに、生物多様性に配慮した再生可能
エネルギーの導入を進めることで、生物多様性保全と気候変動対策のシナジー(相乗効果)を
高めつつ、トレードオフを回避していく必要があります。
このため、自然再生の実施に当たっては、多くの炭素を樹木や土壌に固定している森林の適
正な管理、泥炭や土壌に炭素を貯蔵している温原、草原等の適正な保全、海洋生態系に取り込
まれた炭素を貯留している藻場等のブルーカーボン生態系の保全・再生・創出、また、森林整
備、二次草原における採草などの生態系の適切な管理によって生じる草木質系バイオマスの利
用や、温室効果ガスの排出を低減した工法の採用等を通じて、カーボンネガティブなど気候変
動対策に貢献していくことが必要です。
また、適応策の更なる充実・強化を図るため、気候変動適応法に基づく[気候変動適応計画]
が令和3年10月に閣議決定されました(令和5年5月一部変更)。これに基づき、気候変動に
よる生態系や種の分布等の変化について長期にわたる継続的なモニタリングを実施するととも
に、気候変動に対する順応性の高い健全な生態系の保全や多面的機能の維持・発揮が期待され
る生能系ネットワークの形成の推進を図っていくことが重要です。自然再生の推進に当たって
も、「自然を活用した解決策(NbS)」として、自然環境が有する多様な機能を活用するグリー
ンインフラやブルーインフラ、生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)、生態系を活用
した適応策(EbA)等の考え方に基づき、地域の実情に応じた内容を検討・実施することが
重要です。
さらに、風力・太陽光等の再生可能エネルギーの導入に当たり、生物の生息地や保全上重要
な地域への悪影響を回避するための調整などが課題となっています。再生可能エネルギーの導
入は自然環境と共生するものであることが大前提であり、自然環境の保全・再生に支障をきた
す形での導入を防ぎつつ、自然の機能も活かした緩和・適応策も最大限導入し、地域と共生す
る形での対策の推進が必要です。
オ自然災害の経験を踏まえた自然再生
東日本大震災や熊本地震、能登半島地震のほか、近年頻発する大雨等による自然災害の発生
により、豊かな恵みをもたらす自然は、時として大きな脅威となって災害をもたらすものであ
り、私たちはそうした両面性を持つ自然と共に生きていることを、改めて意謝させられました。
私たち日本人は、自然と対立するのではなく、自然に対する畏敬の念を持ち、自然に順応し自
然と共生する知恵や自然観を培ってきたことを踏まえ、自然再生の取組を進めることが重要で
す。
災害の発生により、動植物の生息・生育環境等は壊滅的な被害を受けることもありますが、
災害によって生物的な遺産がすべて失われるわけではなく、生き残った動植物個体や植物の栄
養体、埋土種子などが生態系の回復に大きく貢献するなど、かく乱が生態系の維持に重要な役
割を果たしている場合もあります。このため、自然再生事業の実施に当たっては、自然の回復
力を評価できるよう、動植肉だけでなく、土壌や水環境などについてもモニタリングを実施し、
その回復状況や地域の復興状況・意向を踏まえて、自然再生の手法や体制を検討していくこと
が重要です。その際には、被災地における人口減少に伴う動物の行動圏の変化などの長期的な
影響に着目することも重要です。
また、生態系は、津波等の災害が発生した際に、地域を災害から守り、被害を軽減・緩衝す
る効果を有しています。今後、気候変動による気象災害の激甚化や頻発化、異常な高温、海面
上昇等の影響の拡大が予測されていることなどの科学的知見も踏まえ、国土強制化の観点から、
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自然再生事業における生物多様性保全とSDGs・気候変動対策の取組 - 第107頁
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