その他令和7年3月14日

自然再生の推進に関する基本的方向

掲載日
令和7年3月14日
号種
号外
原文ページ
p.101
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自然再生の推進に関する基本的方向

令和7年3月14日|p.101

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(借12號 10番 101
1自然再生の推進に関する基本的方向
(1)わが国の自然環境を取り巻く状況
自然環境は、生物多様性と自然の物質循環を基礎とし、生態系が微妙な均衡を保つことによっ
て成り立っています。そして、自然環境は、気候変動の緩和や適応、水・大気・土壌の環境保全、
野生生物の生息環境としての役割などの機能を有しており、現在及び将来の人間の生存に欠かす
ことのできない基盤となっています。また、自然環境は、社会、経済、科学、教育、文化、芸術、
ンクリエーション、防災・減災、健康など様々な観点から人間にとって有用な価値を有していま
す。
しかし、これまで人間が行ってきた自然の再生産能力を超えた自然資源の過度な利用などの行
為(オーバーユース)により、自然環境の悪化が進んできました。さらに、本格的な少子高齢化・
人口減少社会を迎え、環境保全の取理や里山等の二次的自然の管理にも影響を与えています。そ
の結果、生物多様性は減少し、人間の生存基盤である有限な自然環境が損なわれ、生態系は衰弱
しつつあります。
わが国は、その地史や気候等を背景として、多様で豊かな自然環境を有しており、私たちは様々
な恩恵を享受しています。一方、私たちは、地震、台風、豪雨などによる自然災害への備えを怠
ることはできません。
戦後、高度経済成長期を経て自然災害に対する安全性や物質的な生活水準は向上してきました
が、大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会経済活動の増大に伴い、自然環境に大きな負荷を与
えてきました。この中で急激な工業化とそれに伴う開発により、農地や林地の都市的土地利用へ
の転換や沿岸域の埋立てなどの土地利用の変化が進んだ結果、国土の自然の質が低下し、多くの
野生生物の生息・生育地が減少してきました。
また、薪炭材や落葉の利用、採草などの人為の働きかけによって二次的な自然環境が維持され
てきた里地里山等においても、エネルギー源の化石燃料へのシフト、生活・生産様式の変化に伴
う生物由来の資源の利用の低下、適疎化・高齢化の進行など、社会経済状況の変化が進みました。
その結果、人為の働きかけが縮小撤退し、国内の資源が通少使用(アンダーユース)の状態になっ
たこと等により、ニホンジカ、イノシシ、クマ類等の鳥獣の生息域の拡大や生息数の増加がみら
れ、生態系や農林水産業、人の生活環境への被害が深刻化しています。こうした変化は、不適切
な化学農薬・化学肥料の使用、経済性・効率性を優先した基盤整備が進行したこととあいまって、
人と自然の相互作用により形成されてきた特有の生態系の質を劣化させてきました。加えて、国
境を越えた人や物の流れの増大などに伴う、外来種の意図的・非意図的な導入が、地域固有の生
物相や生態系に対して大きな脅威を与えています。
このように、直接間接を問わず、様々な人間活動、人為の影響等によって、自然海岸や干湿、
湿原などが減少しているほか、人工林や二次林の管理不足、荒廃農地の拡大等により、わが国の
生態系の質の劣化が進んでおり、多くの野生生物の生息・生育環境の悪化や個体数の減少がみら
れ、メダカに代表される身近な野生生物の絶滅のおそれが高まるなど、わが国の自然環境は大き
く変化しています。
これらに加えて、温室効果ガスの人為的な増加によって、気候変動による生態系への深刻な影
響が懸念されています。わが国においても、気候変動による生物の分布の変化や生態系への影響
が報告されており、今後もその影響は拡大すると予測されています。
こうした自然環境の悪化などに対し、令和4年12月にカナダで開催された生数多様性条約第15
回締的国会議第二部において、生物多様性に関する新たな世界目標(昆明・モントリオール生物
多様性枠組)が採択され、2030年までのミッションとして、「自然を回復軌道に乗せるために生物
多様性の損失を止め、反転させるための緊急の行動をとる」といういわゆるネイチャーポジティ
ブが掲げられました。また、その達成に向けた23個のグローバルターゲットが設定され、その中
には、「劣化した生態系の少なくとも30%の地域を効果的な回復下におく」という自然再生と関係
の深いものも含まれています。この昆明・モントリオール生物多様性枠組の達成に向けたわが国
のコードマップとして、生物多様性基本法(平成20年6月植行)に基づき、令和5年3月に生
物多様性国家戦略2023-2030が閣議決定されました。同戦略では、昆明・モントリオール生物
多様性枠組を踏まえ、2030年までに達成すべき目標として、ネイチャーポジティブ(自然再興)
を実現することが掲げられています。特に自然再生に関しては、劣化した生態系の30%以上の再
生を進めること等が行動目標の一つとして位置付けられています。令和6年4月には、地方公共
団体・民間等による、生物多様性を維持・回復・創出する活動の促進のため「地域における生物
の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律(以下「地域性物多様性増進法」という。)」
が制定されました。
また、令和6年5月には「第六次環境基本計画」が閣議決定されました。同計画では、環境保
全を通じた、現在及び将来の国民一人一人の「ウェルビーイング/高い生活の質」を最上位の目
的に掲げ、環境収容力を守り環境の質を上げることによって経済社会が成長・発展できる循環共
生型社会の構築を目指すこととしています。そして、ストックとしての自然資本の維持・回復・
充実を図ることが、新たな成長」の基盤になるとしています。企業経営においても,ESG投資
の拡大や自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)等の流れや取組の浸透の動きもあい
まって、生物多様性や自然資本の重要性が高まっています。
自然再生の実施に際しては、これらを基本として取り組んでいく必要があります。
(2)自然再生の視点
現在、自然と共生する社会の実現と地球環境の保全が重要な課題となっています。人間も生態
系の一部であり、自然の恵みを享受することで初めて暮らしていくことができ、また、私たちが
地域ごとに有している食文化、工芸、郷土芸能などの多様な文化は、各地の豊かな自然環境に根
ざしたものといえます。このような認識に立って、自然環境の価値を再認識し、長い歴史の中で
育まれた地域固有の動植物や生態系その他の自然環境について、生態系の保全や生物種の保護の
ための取組を推進すべきことはもちろん、過去に損なわれた自然環境を積極的に取り戻す自然再
生によって地域の自然環境を蘇らせ、自然の恵みを享受できる地域社会を創りあげていくこと
が必要となっています。
日本の国土は、南北に長く、モンスーン地帯に位置することなどから、豊かな生物相を有する
とともに、変化に富んだ美しい自然を有しています。同時に、狭い国土面積に稠密な人口を抱
え、その地形、地質、気象などの条件から自然災害を受けやすいという特性があるほか、土地利
用の転換圧力が強い都市地域,農林水産業等を通じ二次的な自然を維持形成してきた農山漁村地
域など、地域によって、自然を取り巻く状況に大きな違いがあります。海域についても、黒潮、
親淵などの海流と南北に長く連なる列島があいまって、多様な環境が形成されています。特に沿
岸域には長く複雑な海岸線や砂浜、磯、干潟、藻場、サンゴ葉など多様な生態系がみられ、陸域
と同様に豊かな生物相を有しています。その一方で、沿岸に人口や産業が集中したことから、浅
海域や内湾を中心に埋立てや汚濁負荷の流入などの影響を受けてきました。このため、わが国で
の自然再生を考える際には、地域の自然環境の特性や社会経済活動等、地域における自然を取り
巻く状況をよく踏まえるとともに、これらの社会経済活動等と地域における自然再生とが相互に
十分な連携を保って進められることが必要です。
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自然再生の推進に関する基本的方向 - 第101頁
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