その他令和6年7月12日

人事行政諮問会議中間報告(公務員人事管理の現状と課題)

掲載日
令和6年7月12日
号種
号外
原文ページ
p.25
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人事行政諮問会議中間報告(公務員人事管理の現状と課題)

令和6年7月12日|p.25

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I 公務員人事管理の現状と課題
1 危機に直面する国家公務員の人材確保
公務の使命は、国民の安全と生活を守り、さらに、国家を一層発展させ、世界に誇れる社会を築き上げることである。そのため、公務には、国際情勢や社会経済情勢が激変する中でも、組織の運営力や経営管理能力を一層高め、国民全体に対して、世界最高水準の行政サービスを提供し、活力ある社会を築くことが求められている。国家公務員法(昭和22年法律第120号)も、国家公務員たる職員がその職務の遂行に当たり最大の能率を発揮するよう、民主的に任用されること等を定めることを通して、国民に対して、公務の民主的かつ能率的な運営を保障することを目的としている。その目的を実現するためには、国家行政を担う公務組織の各層において優秀な人材を誘致し、育成し、それぞれの職員が最大の能率を発揮して職務を遂行できる環境を整備し、もって組織のパフォーマンスを向上させていく必要がある。
一方、国家公務員の人材確保は危機に直面している。近年、国家公務員の志望者数は顕著な減少傾向にある。この間、人材確保において競合する民間企業等においては、働きやすい職場環境の整備や成長支援の拡充などの若年層を中心としたニーズに沿った組織パフォーマンスの向上に資する取組が積極的に進められてきた。公務がそうした動きから遅れているとの評価もあり、志望者数の母集団となり得る22歳人口については、近年大きな変動なく推移している一方、直近、2023年度の国家公務員採用試験の申込者数は、現行の試験制度となった2019年度と比較して総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)で6,724人(約27%)、一般職試験(大卒程度試験)で13,325人(約34%)減少した。国家公務員志望者数の減少は、国家公務員という職業があたかも魅力のでないかのような認識が社会に広がっていることの表れであり、今後、国家行政を担うことが期待される優秀な人材が国家公務員として働くことを更に忌避するといった悪循環が生じるおそれがある。
また、若年層職員の離職は増加傾向にあり、総合職試験採用職員について見ると、採用後10年未満の退職者数は、近年、毎年100人を超える状況となっている。特に、実務の中核を担う20歳台後半から30歳台の職員が退職することは、公務組織のパフォーマンスの低下につながる懸念がある。このように、採用試験からの採用者を部内育成するだけでは円滑に業務を遂行することが困難になっていることから、民間企業等からの経験者の採用を増やしている実態があり、現に、民間企業等から採用された職員の割合は、2021年度の採用者のうち19%を占め、増加傾向にある。ただし、現状、公務においては、民間企業等からの採用に関する各府省人事当局の知見や採用を行う体制が必ずしも十分でないこともあり、依然として即戦力となる人材の確保に苦戦している。
国家公務員志望者数の減少や公務を離れる者が増える現下の状況が続けば、公務を支える人材が質と量の両面で不足することになる。その結果、公務組織のパフォーマンスの向上はおろか、従前と同様のパフォーマンスの発揮すら困難になり、国民の安全な生活に支障を来し、さらには、国家の衰退につながりかねないことを強く懸念する。
以下では、まず、公務の人材確保が危機的な状況に至った要因について分析するとともに、公務が認識すべき課題を抽出する。
2 人材確保の危機に直面している現状の要因
(1) 生産年齢人口の減少に伴う構造的な人手不足
我が国の生産年齢人口は、1995年の8,716万人をピークに減少しており、2050年には5,540万人(2020年から約26%減)に減少すると見込まれている。また、有効求人倍率は、リーマンショックの影響を受けた2009年度以降、景気の回復基調とともに上昇傾向となり、2022年度はバブル期を超える水準となっている。本年4月に日本銀行が公表した全国企業短期経済観測調査(短観)では、全規模全産業の雇用人員判断DIがマイナス36と1991年11月調査以来の不足超過となっており、現在、官民を問わず人手不足感は高い状況にある。過去においては、景気が冷え込み民間企業等の採用が落ち込むとその反動で国家公務員志望者数が増加するという傾向が見られた。しかし、現在のような売り手優位の労働市場環境はもはや構造的に不可逆であると考えられ、今後、民間企業等との間での人材獲得競争が更に激化することが見込まれる。
(2) 国家公務員の勤務環境・処遇面での魅力の低下
社会経済の変化や複雑化により一層高まる行政需要に対し、公務が限られたマンパワーによる対応を求められる中で、特に本府省職員を中心に、長時間労働の改善が課題となっている。超過勤務の上限を超えた職員の状況については、いわゆる過労死ラインとも呼ばれる水準である「1月100時間未満」の上限を少なくとも1回以上超えた職員が2022年度は約5,500人であった。その要因として、職員自身にとって予見可能性が低く、コントロールしづらい業務が挙げられている。さらに、必ずしもやりがいと結びつかない場合もある長時間労働が常態化しているといった勤務環境がメディアやSNS等で頻繁に取り上げられている。
一方で、公務の外に目を向けると、価値観が多様化する中にあって、働く個々人の違いを認め、多様な人材をいかし、その能力を最大限に発揮できる勤務環境の整備が進んでいる。2018年には、時間外労働の上限規制の導入などが盛り込まれた働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号))が成立し、以降、民間企業等における平均残業時間は短縮傾向にある。加えて、一部の民間企業等では、勤務地域限定正社員という転勤がない正社員の区分を創設したり、働く場所の柔軟性を飛躍的に高めるフルリモート勤務での就業を認めたりする例もあるなど、Well-beingへの関心の高まりなどもあいまって、働き方改革が大きく推進されている。
公務においても、超過勤務の上限規制や勤務間のインターバル確保を通じた長時間労働是正に向けた取組や、フレックスタイム制やテレワークの推進など柔軟な働き方を可能とする仕組みを導入しているが、行政サービスを切れ目なく国民に提供するためには、長時間労働もやむを得ないとする職場風土や職員意識の改革などの取組がより一層求められる。
また、給与面の課題もある。国家公務員の給与水準は、国家公務員法に定める情勢適応の原則の下、現在、企業規模50人以上の民間企業の給与水準との均衡を考慮して定めている。最近は大企業等において初任給を含む給与の大幅な引上げが行われており、特に総合職試験からの採用において競合する企業の給与と比べると、かなり見劣りするものとなっている。
(3) 国家公務員の不祥事を契機とする公務への不信感の高まりなどの影響
近年、幹部公務員の不祥事が政治との関係で国会やマスコミ等で多く取り上げられたことなどもあり、社会全体の国家公務員に対する不信感が高まり、多くの若年層にとっても、国家公務員という職業、特に、各府省の所管業務に関わる専門性を基盤とする政策のプロフェッショナル集団たる霞が関が、かつてに比べ、魅力的な就職先として認識されなくなっていることに繋がっている可能性がある。
さらに、政治主導の浸透により行政における政治への応答性が過度に重視され、各府省が政策の立案や決定のイニシアチブを取れていないのではないかと見られていることも、国家公務員という職業、特に、各府省の所管業務に関わる専門性を基盤とする政策のプロフェッショナル集団たる霞が関が、かつてに比べ、魅力的な就職先として認識されなくなっていることに繋がっている可能性がある。
(4) 若年層のキャリア意識の変化と公的分野における企業活動のプレゼンスの拡大
特に若年層において、自身のキャリア形成の在り方に関する意識の変化が見られる。長らく日本企業においては、大企業を中心として、長期雇用を前提とした年功を重視した人事管理が行われてきた。また、その多くの場合において、人事部門が一元的な人事管理を担うことが通例であった。例えば人事異動においては、従業員本人の希望よりも組織の意向を優先し、ゼネラリスト育成の観点から、定期的な人事ローテーションがなされることも少なくなかった。
しかしながら、現在の若年層は、就職活動をする段階から将来的な転職を選択肢として現実的に考えており、就職先の選択時には、自身の市場価値向上の観点から仕事を通じて成長できる環境があるか、という視点を重視する傾向がある。民間企業等においては、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値の向上につなげるため、教育研修の充実など人への投資の推進、能力ある人材の早期抜擢、主体的なキャリア形成を後押しする社内公募制度の導入などにより、そうした期待に応えようとする取組も見受けられる。
また、かつては公共的な仕事を志望する場合、公務員はその代表的な職業であったが、近年、企業の社会的責任の見える化や、ビジネスの中で社会課題の解決を推進する取組の進展もあり、民間企業等の経済活動でも社会貢献ができるようになっている。より身近な問題を現場で解決するソーシャルビジネスや、国や地方公共団体といった公的分野にも携わるコンサルティング業界の市場規模も増大傾向にあり、国家公務員や地方公務員をキャリアとして選択しなくても、民間企業等の活動を通じて公共的な仕事に関わりやすくなってきている。
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人事行政諮問会議中間報告(公務員人事管理の現状と課題) - 第25頁
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