告示令和6年7月1日

国土交通省告示第九百八十二号(小笠原諸島振興開発基本方針の公表)

掲載日
令和6年7月1日
号種
号外
原文ページ
p.49 - p.51
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抽出要点

小笠原諸島の振興開発の意義、方向及び基本的な事項

抽出された基本情報
発行機関国土交通省
省庁国土交通省
件名小笠原諸島の振興開発の意義、方向及び基本的な事項

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国土交通省告示第九百八十二号(小笠原諸島振興開発基本方針の公表)

令和6年7月1日|p.49-51

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○国土交通省告示第九百八十二号
小笠原諸島振興開発特別措置法(昭和四十四年法律第七十九号)第五条第一項の規定に基づき、小 笠原諸島振興開発基本方針を定めたので、同条第五項の規定に基づき公表する。 令和六年七月一日 国土交通大臣 斉藤 鉄夫 小笠原諸島振興開発基本方針(令和6年5月8日国土交通大臣決定)
1 序文
小笠原諸島は、東京本土から南に約1,000km離れた太平洋上に位置する父島列島及び母島列島を 中心に、我が国最南端の沖ノ鳥島及び最東端の南鳥島を含めて多くの島々で構成されている。 同諸島には、昭和19年当時、約7千7百人の住民が生活していたが、強制疎開により、軍属を残 して約7千人の住民が本土に引き揚げることとなった。終戦後は米軍の直接統治下に置かれ、日本 人住民の帰島は、23年間の空白を経て昭和43年6月の日本復帰後に認められた。本土から隔絶した 外海に位置し、住民が戦後すぐには帰島できなかったこと等による不利益やそれに起因する課題を 克服するため、復帰以来、国の特別な措置に加え、関係地方公共団体や小笠原諸島の住民の不断の 努力により、諸施策が着実に実施され、これまで相応の成果を上げてきたところである。 しかしながら、今日においても、片道約24時間を要するなど本土へのアクセスの困難さが住民生 活の利便性向上の妨げとなっており、また、復帰後に整備した公共施設の老朽化が進んでいるほか、 保健・医療、福祉をはじめ、生活面などで本土との格差が残されており、定住環境が十分に整備さ れたとは言い難い状況にある。また、強制疎開に端を発し、復帰以来の課題となっている帰島促進 等にも引き続き取り組む必要がある。加えて、台風の常襲により度々被害が発生しており、風水害 や南海トラフ巨大地震等に対する備えも喫緊の課題である。 一方で、太平洋上に散在する国境離島である小笠原諸島は、我が国の排他的経済水域の約3割と いう広大な海域を確保し、我が国の領域の保全、海上交通の安全確保、海洋資源の開発・利用等、 安全上・経済上の重要な役割を担っている。周辺海域の海上保安体制を強化するため、令和3年に は巡視船「みかづき」が配備されたところである。日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増 す中、小笠原諸島が担う国家的役割はますます大きくなっており、移住・定住の促進をはじめとす る地域社会の維持に資する取組の重要性が高まっている。 このような背景を踏まえ、小笠原諸島振興開発特別措置法(以下「法」という。)が改正され、法 の目的に持続可能な地域社会の構築に向けた「移住の促進」が追加され、引き続き振興開発計画に 基づく事業に対して国庫補助率のかさ上げを行うなど、特別の措置を講ずることとされたところで ある。 本基本方針は、法第5条に基づき、令和6年度を初年度とする5箇年を目途として、国が考える 小笠原諸島の振興開発の意義及び方向を示すとともに、東京都による振興開発計画の策定にあたっ て指針となるべき基本的事項について定めたものである。 小笠原村においては、本基本方針の趣旨を十分踏まえて、住民の意見を反映させるための必要な 措置を講ずることにより、住民、関係団体等多様な主体の参画の下で振興開発計画の案を作成する ことが期待される。また、東京都においては、本基本方針に基づき、小笠原村の案をできる限り反 映させつつ、小笠原諸島の振興開発施策を具体的に記載するものとして振興開発計画を策定すること が期待される。
Ⅱ 小笠原諸島の振興開発の意義及び方向
1 振興開発の意義
小笠原諸島は、我が国の排他的経済水域の約3割を確保している地域であり、水産資源やコバルト、レアアースなどの鉱物資源等の開発可能性を有している。加えて、同諸島周辺海域は、国籍を問わず付近を航行する船舶も多く、台風の発生時や、船内で急病人が発生した場合に、これらの船舶が同諸島に避難、寄港することもあるなど、太平洋における要衝として、世界的にも重要な地域である。
この地域で住民が暮らし、実際に諸活動を営んでいることが、同諸島を我が国の領土として国内外に周知するとともに、密入国・密輸を防止すること等にも寄与するものであり、我が国の安全の確保や排他的経済水域等の保全、周辺海域の航海と漁業従事者の安全、自然環境の保全・再生や文化の継承等の役割を果たしていくこととなる。
さらに、我が国では、脱炭素社会やデジタル田園都市国家構想の実現が重要政策となる中、これを小笠原諸島の条件不利性を克服する好機と捉え、地域の特性に応じた再生可能エネルギーの利用等による循環型社会の構築や、デジタル技術の活用等に積極的に取り組み、成果を挙げることが期待されている。
このため、小笠原諸島の振興開発により、その自立的発展、住民の生活の安定及び福祉の向上並びに移住・定住の促進を図っていくことが重要である。
2 振興開発の方向
本基本方針及び東京都が定める振興開発計画に基づく各般の施策や事業は、次のような方向を基本として取り組むものとする。
なお、諸施策の実施にあたっては、小笠原諸島の特性を活かしてその魅力の増進を図るとともに、関係者の協働と知見の集約を図り施策の効果を一層高めることを旨としなければならない。
また、他地域との交流や島外からの投資が、地域と共生し、真に小笠原諸島の活力につながるものとなるよう留意するよう。
(1) 生活環境の整備・産業の振興による移住・定住の促進
小笠原諸島の人口は増加傾向にあったが、直近は横ばいになっており、全国と比べて若い世代の比率は高いものの、復帰55年を経て、高齢化も進んでいる。このため、高齢化の進展も踏まえた保健・医療や福祉の充実、若い世代の移住・定住の促進に向けた住宅確保、妊産婦への支援、学校施設等の計画的な老朽化対策を行う。さらに、災害時における住民や観光客の孤立防止に必要な避難路等の防災施設の整備を含めた社会資本の整備及び維持管理を進める。
また、伝統的な基幹産業である農業や漁業、現在の主要産業であり裾野の広い観光産業を軸に、小笠原諸島の強みや地域資源を活かした産業振興を図り、移住希望者の雇用機会を確保する。
こうした取組により、移住・定住を促進するとともに、帰島を希望する旧島民の受入れに対応する。
(2) 小笠原諸島内外の交通アクセスの整備
小笠原諸島は、人口集積地からの時間的距離が世界的に見ても極めて隔絶した外海離島であり、住民や来島者の同諸島への唯一の交通手段である定期船「おがさわら丸」は片道約24時間を要する。約1週間に1便の同定期船及び父島と母島を結ぶ「ははじまる」は、人の往来はもとより、生鮮食料品をはじめとする物資の輸送等、住民の生活の安定や産業振興に欠かせない。その安定的な運航を確保するため港湾施設の整備に計画的かつ継続的に取り組み、あわせて、道路等の整備による島内交通の利便性の向上を図る。
また、村民の悲願である航空路の開設に関しては、災害や傷病等の緊急時の安全・安心を確保し、住民生活の安定を図るためにも、地元の意見や自然環境との調和に十分配慮しつつ、必要な取組を進める。
(3) 自然環境の保全・再生
小笠原諸島は、島の成立以来一度も大陸と陸続きになったことのない海洋島であり、世界的にも貴重でかけがえのない自然の宝庫であることから、昭和47年に国立公園に指定され、平成23年には世界自然遺産にも登録されている。このような世界で唯一の価値を有する自然環境を保全・再生及び継承し、生物多様性の増進に資するために、外来種対策や開発における適切な環境配慮等、自然と調和・共生する取組を進める。特に、住民が居住し観光客が来島する父島・母島において、住民や来島者に対する教育・普及啓発活動の充実に取り組むなど、小笠原らしい貴重な自然環境の継承を図る。
また、世界自然遺産としての知名度を活かし、小笠原諸島における自然との調和・共生の取組を内外に発信する。
Ⅲ 小笠原諸島の振興開発を図るための基本的な事項
小笠原諸島の振興開発を図るための各分野における基本的な事項は、以下のとおりである。振興開発のための個々の事業の実施にあたっては、あらゆる国の支援措置等を有効活用しつつ、東京都、小笠原村、民間事業者等の各事業主体間及び事業間の連携を更に強化し、ソフト・ハードの両面から効率的・効果的な施策展開に努めるものとする。
その際、東京都が策定した都有施設等総合管理方針及び小笠原村が策定した公共施設等総合管理計画などを踏まえ、予防保全による既存施設の長寿命化・耐震化や計画的な更新等を図る。また、小笠原村には、産業振興促進計画認定制度を効果的に活用することが期待される。
1 土地の利用に関する基本的な事項
振興開発施策の実施にあたっては、自然環境との調和を図りつつ、また、防災上の観点も取り入れて、移住・定住環境の整備や農業経営等に必要な土地を確保することが必要である。小笠原諸島において土地は極めて貴重な資源であることから、土地の利用等に関する島別の対処方針を定める必要があり、各種振興開発施策を実施する父島・母島については、用途及び地域を明示した土地利用計画図を作成し、公示する。また、地籍調査を推進し土地の所有状況を明確にするとともに、農地情報整理台帳等の活用により土地取引を活性化させるなど、土地資源の有効活用を図る。
特に、喫緊の課題である住宅不足の解消を図る上で、その最大の要因である住宅用地の不足への対応が必要であり、現状を踏まえつつ土地利用計画を見直す。
2 交通通信の確保に関する基本的な事項
(1) 交通の確保
東京本土から南に約1,000km離れた外海に位置する小笠原諸島にとって、住民生活の利便性の向上、産業の振興等を図るためには、交通利便性の確保が重要である。
現在唯一の交通手段である航路は、住民や来島者の往来、生活物資や産品の運搬等、住民の生活の安定や産業の振興に欠かせないものであり、その安定的な運航を確保するため、港湾施設の整備等に計画的かつ継続的に取り組むとともに、代替船の確保に向けた必要な調整を行い、あわせて、道路等の整備による島内交通の利便性の向上を図る。
また、国民生活・経済に甚大な影響を与える感染症が発生した場合等の物資の確保に係る対応について検討を行う。
航空路の開設にあたっては、世界自然遺産に登録された貴重な自然環境への影響を考慮して整備を進めるべきであり、災害や傷病等の緊急時の安全・安心を確保し、住民生活の安定を図るためにも、地元の意見に十分配慮しつつ、費用対効果、運航採算性等の課題についても調査・検討し、関係者間の円滑な合意形成を図る必要がある。国は東京都と小笠原村との連携を強化し、情報の共有に努め、技術面での助言を行うなど必要となる取組に努める。
3 産業の振興開発に関する基本的な事項
産業の振興については、小笠原諸島の強みや地域資源を活かし、現在の主要産業であり、裾野 の広い産業である観光業を軸に、農林水産業や商工業など産業全体の活性化を図る。
特に、狭隘な農地で効率的な経営が求められる農業については、生産基盤を整備するとともに、 亜熱帯性の気候に適した農作物を安定的に生産してブランド化を図り、付加価値を高める。漁業 については、漁獲物を新鮮な状態で消費者に届けることが付加価値向上の鍵を握ることから、販 路・流通経路の改善や技術開発、戦略的な高付加価値化、漁港や共同利用施設等の整備等を行う。
また、台風の常襲地帯に位置し、南海トラフ巨大地震による津波被害も想定されていることを 踏まえ、災害に強い農林水産基盤の整備を推進するとともに、国民生活・経済に甚大な影響を与 える感染症が発生した場合における事業活動の継続についても適切な配慮に努める。
4 就業の促進に関する基本的な事項
小笠原諸島への移住・定住の促進に向けて、雇用機会の拡充、職業能力の開発を通じた就業の 促進は重要な課題である。
このため、営農研修施設等を活用した農業技術指導等により新規就農者に対する自立支援を行 うほか、船員厚生施設を活用した新規漁業就労者の確保・育成等に取り組む。また、就業者が適 切な所得を確保できるよう配慮しつつ、有効な就業支援策を講じていく。
5 住宅及び生活環境の整備に関する基本的な事項
小笠原諸島の住民の生活の安定及び福祉の向上、移住の促進のため、公共施設の老朽化対策と して、予防保全による長寿命化や計画的な更新等を着実・効率的に実施し、快適な生活環境の形 成に努める。
また、限られた土地を有効に活用し、質の高い住環境を確保する観点から、土地利用計画の見 直しにあわせて将来必要な住宅需要を勘案した上で住宅供給計画を作成するなど、総合的な視点 で住宅政策を展開することとし、住宅供給の現況について、毎年度、小笠原諸島振興開発審議会 に報告するものとする。
加えて、本土に比べて高い建築コストが住宅供給の障害となっていることから、新たな住宅供 給のあり方について、民間事業者等による住宅供給を含め対応策を幅広く検討するなど、関係機 関の連携の下、住宅確保に向けた取組を推進する。
6 保健衛生の向上に関する基本的な事項
移住・定住の促進を図る上で、住民の健康の維持は重要な課題であり、保健・医療、福祉の連 携による総合的な健康づくりや疾病の予防への取組を促進する。
7 福祉の増進に関する基本的な事項
高齢者の介護ニーズに的確に対応するため、介護サービスの充実を図るとともに、高齢者の社 会参加や健康づくりを促進し、高齢者福祉の充実を図る。あわせて、介護テクノロジーの導入に よる介護サービス従事者の負担軽減を図る。
また、保育施設の整備など子育て支援の各種サービスが体系的・効率的に提供できる体制の構 築による児童福祉の充実、障害者等が地域で安心して暮らせる基盤整備などによる障害福祉サー ビス等の適切な提供を図る。さらに、社会福祉活動の拠点となる社会福祉施設等の整備・充実に より、地域の活動と一体的に福祉サービスの提供を図る。
なお、他の地域との格差是正に向けて、介護サービス及び保育サービスを受けるための住民負 担の軽減について適切な配慮に努める。
8 医療の確保等に関する基本的な事項
小笠原村では、父島の小笠原村診療所及び母島の母島診療所が各島で唯一の複数の診療科目に 対応する医療機関であり、本土から極めて隔絶した同諸島の地理的な特殊事情から、必要な医師・ 看護師の確保等は重要な課題である。また、住民が安心して生活できる環境を整備し、移住・定 住を促進する上でも、医療環境の整備は極めて重要である。
このため、医療・福祉複合施設を活用し、地域の実情に合わせて一定の医療の確保を図るとと もに、オンライン診療をはじめとした遠隔医療等のDXを推進するとともに、本土を含めた医療 施設、保健衛生施設及び社会福祉施設の相互間の有機的な連携を図る。
また、村内で出産ができないという状況を踏まえ、妊婦が本土等において健康診査を受診し、 出産に必要な医療を受ける機会が確保できるよう、さらに、東京都による医療計画の策定にあたっ ては小笠原村において医師及び病床の確保等により必要な医療が確保されるよう適切な配慮に努 める。
なお、他の地域との格差是正に向けて、保健医療サービスを受けるための住民負担の軽減につ いて適切な配慮に努める。
9 自然環境の保全及び再生並びに公害の防止に関する基本的な事項
固有種をはじめとする希少な野生動植物の保護増殖、海岸漂着物等の処理、生態系に被害を及 ぼすおそれのある外来種の防除、世界自然遺産・国立公園の適正な管理等により、生物多様性を 増進し、顕著な普遍的価値を有する自然環境の保全・再生及び継承を図るとともに、住民や来島 者に対する教育・普及啓発活動の充実等を図る。各種事業の実施にあたっては、新たな外来種の 侵入又は拡散の防止を図りつつ、東京都が作成した景観計画や公共事業における環境配慮指針を 踏まえ、必要に応じ環境影響評価を行うこと等により、自然環境や景観との調和を図る。
また、公害については、水質汚濁等による自然環境等への悪影響の防止に努めるとともに、環 境への負荷を低減させる循環型社会を形成していくため、廃棄物の排出抑制やリサイクル等の適 正処理の促進を図る。
10 エネルギーの供給に関する基本的な事項
本土から遠く隔絶した外海離島である小笠原諸島の地理的条件を踏まえ、燃料輸送コスト、災 害時や燃料供給途絶時の危機管理等の観点から、自給可能な再生可能エネルギーを積極的に利用 することが重要である。
このため、再生可能エネルギー等を利用し、自立・分散型エネルギーシステムの構築等、民間 事業者を含めた地域主導によるエネルギーの安定供給、災害に強く環境負荷の小さい地域づくり を推進する。その際、自然環境に与える影響を十分に考慮し、小笠原諸島の特性に即したエネル ギー源を選択するとともに、住民の理解を得ながら計画的に施策を推進する。
また、小笠原諸島における石油製品の流通コストは、本土からの距離や流通経路等により本土 と比べて割高となっている。このため、ガソリン小売価格を実質的に引き下げるための支援等に より、石油製品の安定的かつ低廉な供給に努めることが望ましい。さらに、新規技術の活用等そ の他のエネルギー対策を推進することにより、エネルギーの利用に関する条件の他の地域との格 差の是正、住民の生活の利便性の向上、産業の振興等を図る。
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