その他令和8年4月13日
犯罪被害者等基本計画の変更について(第5次犯罪被害者等基本計画の公表)
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第5次犯罪被害者等基本計画
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犯罪被害者等基本計画の変更について(第5次犯罪被害者等基本計画の公表)
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告 示 第 1 号
官 示 事 内
犯罪被害者等基本計画の変更について
政府は、犯罪被害者等基本法(平成16年法律第161号)第8条第1項の規定に基づき、犯罪被害者等基本計画(令和3年3月30日閣議決定)の全部を変更することを、去る令和8年3月17日に閣議決定した。
以下、その全文を同法第8条第5項の規定により準用される同条第4項の規定に基づき、公表する。
令和8年4月13日
内閣総理大臣 高市 早苗
第5次犯罪被害者等基本計画
はじめに
我が国の犯罪被害者等のための施策(以下「犯罪被害者等施策」という。)は、平成16年12月の犯罪被害者等基本法(平成16年法律第161号。以下「基本法」という。)の制定により新たな一歩を踏み出した。
基本法の制定以前にも、昭和55年に制定された犯罪被害者等給付金支給法(昭和55年法律第36号。現在の法律名は犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(以下「犯給法」という。)である。)による犯罪被害給付制度、平成8年に制定された被害者対策要綱に基づく警察における総合的な被害者対策、平成11年から検察庁で実施されている被害者等通知制度、平成12年に制定されたいわゆる犯罪被害者保護二法による刑事手続における犯罪被害者の保護等、各省庁において、それぞれ、犯罪被害者等施策が進められ、一定の成果を上げてきた。しかしながら、これらの取組は政府全体としての取組ではなく、社会の理解も十分とは言い難かった。
そのような中、「犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ、その権利利益の保護が図られる社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出さなければならない」として、「犯罪被害者等のための施策の基本理念を明らかにしてその方向を示し、国、地方公共団体及びその他の関係機関並びに民間の団体等の連携の下、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進するため」(基本法前文)、基本法は制定された。
基本法の制定以後は、基本法に基づき、犯罪被害者等施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、「犯罪被害者等基本計画」(平成17年12月27日閣議決定。以下「第1次基本計画」という。)、「第2次犯罪被害者等基本計画」(平成23年3月25日閣議決定)、「第3次犯罪被害者等基本計画」(平成28年4月1日閣議決定)及び「第4次犯罪被害者等基本計画」(令和3年3月30日閣議決定。以下「第4次基本計画」という。)が策定され、これらの計画の下で、政府全体として犯罪被害者等施策を講じてきた。
第4次基本計画の計画期間中には、例えば、犯罪被害者等給付金の引上げ、犯罪被害者等支援弁護士制度の創設、捜査段階から判決後の段階に至るまで一貫した犯罪被害者等の個人特定事項の保護を可能とする刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)の改正、犯罪被害者等の心情等を考慮した加害者処遇の仕組みの制度化等がなされたほか、地方公共団体においても、犯罪被害者等支援を目的とした条例等が全ての都道府県で制定されるに至った。
また、令和5年6月には、「犯罪被害者等施策の一層の推進について」(令和5年6月6日犯罪被害者等施策推進会議決定。以下「令和5年推進会議決定」という。)が決定された。令和5年推進会議決定においては、国における司令塔機能の強化を図ることとされ、同年10月からは、国家公安委員会及びこれを補佐する警察庁において、犯罪被害者等施策の推進に関して行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整を行うこととなった。さらに、地方における途切れない支援の提供体制の強化を図ることとされ、ワンストップサービスの実現に向けた取組が開始された。このように、国と地方において、施策の立案と支援の提供の両面を統一的に推進する体制が整えられつつある。
今般、第4次基本計画の計画期間が令和8年3月末で終了することから、犯罪被害者等の権利利益の保護が一層図られる社会の実現を目指し、以上に述べたこれまでの取組を踏まえ、犯罪被害者等施策をより一層推進すべく、本計画を策定することとする。
I 第5次基本計画の策定方針及び計画期間
1 第5次基本計画の策定方針
「第5次犯罪被害者等基本計画」(以下「第5次基本計画」という。)の策定に当たっては、令和6年7月から同年8月まで、犯罪被害者等やその支援に携わる者をはじめ、広く国民から第4次基本計画の見直しに関する意見・要望を募集するとともに、犯罪被害者団体及び犯罪被害者等の援助を行う民間の団体から個別に意見・要望を聴取したところ、95名・60団体から合計で約400項目の意見・要望が寄せられた。そして、当該意見・要望を踏まえ、第5次基本計画の策定に向けて重点的に検討すべき論点を抽出し、第4次基本計画に盛り込まれている施策の一層の充実も含め、第5次基本計画に盛り込むべき施策について議論を重ねた。
なお、第5次基本計画における「犯罪被害者等」とは、基本法第2条第2項に規定する定義のとおり、犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族をいい、加害者の別、害を被ることとなった犯罪等の種別、故意犯・過失犯の別、事件の起訴・不起訴及び解決・未解決の別、犯罪被害者等の国籍の別、犯罪等の被害を受けた場所等による限定は一切付されていない。当然ながら、個々の施策の対象となる者については、施策ごとに適切に設定されるべきものである。
2 計画期間
第5次基本計画に盛り込まれた施策については、その進捗状況、犯罪被害者等を取り巻く環境の変化等を踏まえ、一定の期間で適切に見直しを行う必要があることから、計画期間は、令和8年4月1日から令和13年3月31日までの5か年とする。
II 基本方針
第5次基本計画においても、第1次基本計画から第4次基本計画までと同様、基本法第3条の基本理念を踏まえ、犯罪被害者等が直面している困難な状況を打開し、その権利利益の保護を図るという目的を達成するため、個々の施策の策定・実施に関し、次の4つの基本方針を定めることとする。
[4つの基本方針]
① 尊厳にふさわしい処遇を権利として保障すること
基本法第3条第1項は、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」と規定している。
犯罪被害者等は我々の隣人である。また、社会に生きる誰もが犯罪等の被害に遭い、犯罪被害者等になり得る立場にある。したがって、犯罪被害者等施策は、例外的な存在としての犯罪被害者等に対する一方的な恩恵的措置ではなく、社会のかけがえのない一員として当然に保障されるべき犯罪被害者等の権利利益の保護を図るためのものであり、犯罪被害者等が、その尊厳が尊重され、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有していることを視点に据え実施されなければならない。
② 個々の事情に応じて適切に行われること
基本法第3条第2項は、「犯罪被害者等のための施策は、被害の状況及び原因、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜられるものとする。」と規定している。
犯罪被害者等施策は、犯罪被害者等が直面している困難な状況を打開し、その権利利益の保護を図るために実施されるものであることから、犯罪被害者等の具体的事情を正確に把握し、その変化にも十分留意しながら、個々の事情に応じて適切に実施されなければならない。
また、自ら被害を訴えることが困難なため被害が潜在化しやすい犯罪被害者等や、自分が直接の犯罪被害者ではないものの、兄弟姉妹が被害に遭ったこと等により心身に悪影響を受けるおそれがあることも等のニーズを正確に把握し、適切に実施されなければならない。
③ 途切れることなく行われること
基本法第3条第3項は、「犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が、被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう、講ぜられるものとする。」と規定している。
犯罪被害者等施策は、犯罪被害者等が現に直面する困難な状況を打開することに加え、犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるようになることを見据えて実施されるべきであり、そのためには、犯罪被害者等支援を目的とした制度以外の制度や民間の取組等も十分活用し、犯罪被害者等の生活再建を支援するという中長期的な視点が必要である。その上で、犯罪被害者等施策は、全ての犯罪被害者等が必要な時に必要な場所で適切に支援を受けることができるよう、途切れることなく実施されなければならない。
④ 国民の総意を形成しながら展開されること
基本法第6条は、「国民は、犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏を害することのないよう十分配慮するとともに、国及び地方公共団体が実施する犯罪被害者等のための施策に協力するよう努めなければならない。」と規定している。
犯罪被害者等施策は、犯罪被害者等が、その名誉又は生活の平穏を害されることなく共に地域で生きていくことができるようにするため、犯罪被害者等施策に協力するという国民の総意を形成する観点から、国民の信頼が損なわれることのないよう適切に実施されなければならない。
Ⅲ 重点課題及び具体的施策
| 重点課題第1 | 損害回復・経済的支援等への取組 |
第1 現状認識と具体的施策の方向性
1 現状認識
犯罪被害者等は、犯罪等により、生命を奪われ、家族を失い、傷害を負わされ、財産を奪われるといった様々な被害を受けるほか、高額な医療費の負担や収入の途絶等により経済的に困窮することが少なくない。また、自宅が事件現場となった、加害者から逃れる必要があるなどの理由から住居を移す必要が生じることがあるほか、犯罪等による被害そのものによる影響、当該影響等についての雇用主の無理解、それらに起因する職場での孤立感等の理由から雇用関係の維持に困難を来すことも少なくない。
もとより、犯罪等により生じた被害について、第一義的責任を負うのは加害者である(基本法前文)ものの、加害者に支払う意思や資力がないなどの理由から加害者の損害賠償責任が果たされず、被害の回復につながらないといった指摘や、加害者への賠償の請求等に当たって心理面を含む様々な負担もあるとの指摘が、犯罪被害者等からなされている。また、犯罪被害者等は、再び平穏な生活を営む(基本法第3条第3項)ために、金銭も含めた様々な早期の支援等が必要な状況にある。
上記のような状況に対しては、犯罪被害給付制度が創設され、基本法の成立後の4次にわたる
犯罪被害者等基本計画(以下「基本計画」という。)等に基づき、同制度の拡充、日本司法支援セ
ンター(以下「法テラス」という。)による法的支援の充実、刑の執行段階等と保護観察における
犯罪被害者等への謝罪や被害弁償を履行するための措置に対する指導等、様々な施策が講じら
れてきたが、犯罪被害者等からは、今なお困難な状況が解消されていないことやその解消のため
に講じるべき施策について、様々な要望・意見が寄せられている。
このような中、第5次基本計画における取組を検討するに当たり、第1次基本計画以降の施策
の考え方を振り返ると、次の2つのアプローチにより施策が講じられてきたところである。
1つ目は、犯罪等により生じた損害について第一義的責任を負うのは加害者であることから、
まずは、犯罪被害者等が民事上の損害賠償請求等を行うに当たっての負担を軽減するとともに、
加害者に対して、損害賠償の履行を促していくことである。犯罪被害者等に対する支援への国民
の理解を得る上でも、第一義的責任を負う加害者による賠償をいかに履行させるかという点を考
えることは重要となる。
2つ目は、再び平穏な生活を営んでいく上で犯罪被害者等が直面する様々な困難を解消してい
くため、国による犯罪被害者等給付金や地方公共団体による見舞金等の支給や各種費用の公費負
担等の犯罪被害者等のための支援制度のほか、犯罪被害者等であるか否かにかかわらず利用でき
る社会保障等の制度を活用していくことである。第一義的責任を負うのは加害者とはいえ、資力
の乏しい加害者が多いこと、そもそも加害者が検挙されない場合もあること等の現状を踏まえる
と、被害回復のためには、これらの経済的支援等の取組は欠かすことができない¹。
損害回復・経済的支援等に関する犯罪被害者等のニーズは、個々の生活の状況等に応じて多岐
にわたる中、第1次基本計画の策定から第4次基本計画までの約20年にわたる施策は、これら損
害回復及び経済的支援の両面からアプローチを行い、犯罪被害者等のニーズを的確に把握・分析
し、これに対応し得るよう、既存の制度の運用を強化するとともに、新たな制度についても検討
を重ね、その導入及び見直しを進めてきた。
第5次基本計画においても同様の取組を進めるとともに、これまで講じられてきた施策や犯罪
被害者等が利活用可能な様々な制度等があることを踏まえて、改めて、損害回復や経済的支援等
の観点から犯罪被害者等が置かれた状況や支援についての実態を把握し、各施策を体系立ててい
く必要がある。
また、こうした取組を積み重ねることにより、犯罪被害者等から要望のある制度等について、
その必要性や射程がより明確になる。これまでも議論が重ねられきたいわゆる「立替払」等の
容易に解決し難い制度的な課題に対しても、前記の2つのアプローチによる施策を講じつつ、そ
の状況や過去の議論によって明らかとなった課題を踏まえながら、今後も検討を続けていく。
2 具体的施策の方向性
(1) 犯罪被害者等の損害回復
ア 犯罪被害者等の負担軽減
(ア) 弁護士等による法的支援
犯罪被害者等が、加害者に対して損害賠償を請求するには、裁判手続の追行等を行わな
ければならないが、法的知見が必要となるほか、経済的・心理的・手続的負担がある。そ
のため、犯罪被害者等の相談に応じ、必要な情報の提供等を行うことや損害賠償の請求に
ついての援助等を行うことが求められている。
この点、法テラスにおいては、法制度や適切な相談窓口に関する情報の提供を行ってき
たほか、民事法律扶助として、犯罪被害者等を含む経済的に余裕のない方に対し、弁護士
等による無料法律相談や、民事裁判等手続に必要な弁護士費用等の立替え等の援助を行っ
てきた。これらの取組に加え、令和8年からは、犯罪被害者等支援弁護士制度が開始され、
精神的・身体的被害や経済的困窮によって、刑事手続への適切な関与や被害を回復・軽減
する法的対応等を行うことができない犯罪被害者等が早期の段階から弁護士による包括的
かつ継続的な援助を受けられることとなった。この新たな制度を円滑に運用することを含
め、引き続き、法テラスによる法的支援を適切に行う。
(イ) 損害賠償の履行確保に資する各種制度の活用等
損害賠償の履行確保のためには、債務名義を取得する必要がある。この点、簡便な債務
名義の取得の方法として、平成12年には刑事和解制度(犯罪被害者等の権利利益の保護を
図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成12年法律第75号)第19条)が、平
成20年には刑事手続の成果を利用した損害賠償命令制度(同法第24条)が、それぞれ施行
された。
また、債務名義を取得するだけで、実際の損害賠償につながるわけではない。この点、
加害者を含めた債務者の財産を調査する方法として、令和元年の民事執行法(昭和54年法
律第4号)及び民法(明治29年法律第89号)の改正(令和2年4月1日施行)により、民
事執行法に関しては債務者以外の第三者からの情報取得手続(民事執行法第205条から第
207条まで)が新設されるとともに、財産開示手続が見直され(民事執行法第197条及び第
213条)、民法に関しては財産開示手続に加えて第三者からの情報取得手続についても時効
の完成猶予及び更新の効果が与えられることとなった(民法第148条第1項第4号及び第
2項)。
このように、損害賠償の履行確保のための諸制度は着実に整備が重ねられてきており、
これは犯罪被害者等の損害賠償の履行確保にも資するものである。そこで、まずは、支援
を必要とする犯罪被害者等がこれらの制度を利用できるよう、制度に関する情報提供を充
実させていく。
その上で、犯罪被害者等からは、犯罪被害を原因とする損害賠償請求権についても、養
育費と同様²に、履行確保に向けて実体法・手続法上の特別な取扱いを求める要望があり、
また、債権の時効期間の延長・廃止についての要望も寄せられていることを踏まえつつ、
具体的施策に掲げたとおりの実施可能な取組から進めていく。
さらに、犯罪被害給付制度において、国はその給付額の限度において犯罪被害者等が有
する損害賠償請求権を取得することとされている(犯給法第8条第2項)。この点、国が
その債権管理を適切に行うことはもとより、可能な限り、犯罪被害者等にも配慮した取組
を行うことが、結果として犯罪被害者等の損害回復に資するものとなる。
加えて、交通事故³における保険金の支払は、損害賠償の支払と同様の機能を有すると
ころ、引き続き、その支払の適正化等を図る。
イ 加害者による損害賠償の履行の促進
被害について第一義的責任を負う加害者において、自発的にその責任を履行していくこと
が求められる。
この点、下記(ア)及び(イ)のとおり、刑事施設等及び保護観察所において、加害者からの履行
の促進に資するプログラムが実施されていることに加え、これに資する制度が整備されてき
ている。その中には、新しく整備されたものも多いことから、まずは、これらの取組等を着
実に実施していくとともに、刑の執行段階等及び保護観察における加害者による損害賠償の
履行の状況や課題についても把握していく。
あわせて、刑事施設等の職員は、加害者への指導等の場面を通じて犯罪被害者等の被害回
復に向けた重要な役割を担っていることを常に念頭に置きながら、これらの取組等を適切に
実施する必要がある。
(ア) 刑事施設等における履行促進に資する取組等
刑事施設においては、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成17年法律
第50号。以下「刑事収容施設法」という。)第103条第2項に基づく特別改善指導の1つと
して、必要な者に対し、「被害者の視点を取り入れた教育」の受講を義務付けており、具体
的には、本科プログラムの項目として「謝罪及び被害弁償についての責任の自覚」及び「具
体的な謝罪及び被害弁償の方法」を定めるとともに、継続プログラムの目標として加害者
に「謝罪や被害弁償に向けた具体的な行動を考えさせる」ことを定めている。
少年院においても、少年院法(平成26年法律第58号)第24条第2項に基づく特定生活指導の1つとして、犯罪又は刑罰法令に触れる行為により害を被った者及びその家族又は遺族の心情を理解しようとする意識が低い在院者に対して、犯罪被害者等の現状や心情を認識するとともに、犯罪被害者等に対する謝罪の気持ちを持ち、誠意を持って対応していくこと等を目的とした「被害者の視点を取り入れた教育」が行われている。
また、令和4年の刑事収容施設法及び少年院法の改正(令和5年12月1日施行)において、犯罪被害者等の心情等の考慮に係る規定が整備され、心情等の聴取・伝達制度が設けられた(刑事収容施設法第85条第3項及び第103条第4項、少年院法第23条の2第2項及び第24条第5項)。
さらに、刑事施設では、受刑者が作業報奨金を損害賠償に充当することが可能である旨の周知がなされている。
(イ) 保護観察所における履行促進に資する取組等
保護観察所においては、第1次基本計画を受け、平成19年から、一定の重大な罪を犯した保護観察対象者に対して「しょく罪指導プログラム」を実施している。令和4年には、同プログラムを改訂し、その内容を充実させるとともに、実施対象を拡大して実施しており、犯罪被害者等に対する謝罪及び被害弁償に関する対応の状況や考えについて整理させるなどしている。
また、令和4年の更生保護法(平成19年法律第88号)の改正(令和5年12月1日施行)により、同法の規定によりとる措置は、犯罪被害者等の被害に関する心情や置かれている状況等を十分に考慮して行うこととされた(同法第3条)。
その具体的な措置についても、令和4年の同法の改正により、従前可能であった犯罪被害者等の心情等を保護観察対象者に伝達する場合に限らず、社会内で行う処遇に生かすため当該心情等を聴取する仕組みが設けられたほか(同法第65条第1項)、保護観察対象者に対する指導監督の方法として、犯罪被害者等の被害の回復又は軽減に誠実に努めるよう、必要な指示等の措置をとることが加えられるとともに(同法第57条第1項第5号)、被害を回復し又は軽減するためにとった行動の状況を示す事実について、保護観察官又は保護司に申告し又は当該事実に関する資料を提出することが、保護観察における遵守事項の類型に加えられた(同法第50条第1項第2号ハ)。
(2) 犯罪被害者等への経済的支援等
前記(1)のアプローチによる犯罪被害者等の損害回復には、なお課題が存在している現状に照らせば、経済的支援等の充実を図ることも重要である。この点、金銭給付による支援として、犯罪被害者等給付金による給付があるほか、治療費等の公費負担や社会保障による公的給付等、犯罪被害者等のニーズに応じた個別的給付も犯罪被害者等の損害回復に資するものとなる。
また、基本法は、住宅や雇用の観点からも犯罪被害者等に対する支援を求めており、これらは直接的な経済的支援ではないが、間接的に犯罪被害者等の生活基盤を支えるという意味において経済的支援となる。
ア 経済的負担の軽減
(ア) 犯罪被害給付制度等
国が主体となる経済的支援制度については、直接給付の制度として犯罪被害給付制度がある。この制度は、被害の早期軽減・支援を目的(犯給法第1条)に、重大な犯罪被害を負った犯罪被害者等に対して一般財源から一時金を支給するものである。その給付要件については、他の公的給付等との均衡も考慮しながら、累次の改正により拡充がなされてきた上、「犯罪被害給付制度の抜本的強化に関する有識者検討会」の提言を踏まえた制度改正により、給付水準が抜本的に強化された。その結果、他の公的給付制度と同水準の給付が可能になっている。
一方で、犯罪被害者等からは、かねてより、前記第1の根底にあるニーズを埋め合わせるだけの抜本的な給付はなし得ないのか、あるいは、他の公的給付等との均衡を超えた給付はなし得ないのかという趣旨の要望があるが、これらについては、加害者に第一義的責任がある中での国の役割、他の公的給付等との均衡やその財源等に関わる容易に解決し難い検討課題が残っており、複数の有識者会議等を経たが、現状、一致した結論を得るに至っていない。
これとは別に、犯罪被害者等からは、犯罪被害給付制度に関し、①重傷病給付金について金銭による事後給付ではなく、病院の窓口負担がない形での給付とすること、②性犯罪被害者に関する給付を充実させること、③離婚後の父母が第1順位遺族となる場合の受給者の順位を見直すこと、④重傷病給付金の支給要件を拡大すること、⑤重傷病給付金の支給期間を延長することといった、個別の要望がある。これら要望の背景にある犯罪被害者等のニーズに向き合い、その負担が少しでも軽減されることを目指して、具体的施策に掲げたとおりの実施可能な取組から進めていく。
このほか、平成28年に議員立法(国外犯罪被害弔慰金等の支給に関する法律(平成28年法律第73号))により成立した国外犯罪被害弔慰金等支給制度についても、在外公館(大使館、総領事館等)等において制度の対象者へ説明を行うほか、支給額の引上げの要望に対しては、犯罪被害給付制度とは質的に異なる面もあるところ、今後の議論に資するべく、諸外国における類似制度の調査を行う。
(イ) 地方公共団体等による各種支援制度
地方公共団体が主体となる経済的支援制度については、現時点で全ての地方公共団体で導入されてはいないものの、直接給付の制度として見舞金等の制度がある。
ほかにも、医療費(特に性犯罪に係るもの)、カウンセリング費用、司法解剖後の遺体搬送費等に関し、各都道府県警察等が公費負担制度を運用している。
このような地方公共団体等が主体の取組についても、制度の内容等を調査しつつ、地方の実情に応じながらも、地域間格差を埋める努力を行う。
(ウ) 既存の社会保障等の制度
犯罪被害者等に特化した制度以外にも、生活困窮者への支援、子育て支援等、様々な切り口で、犯罪被害者等であるか否かにかかわらず、条件を満たせば利用できる社会保障等の制度があることから、条件を満たす犯罪被害者等がこれらを利用できるよう施策を講じる。特に、医療・生活・教育・納税の各分野について犯罪被害者等に配慮した制度運用の在り方が各制度所管省庁から既に示されており、適切に制度運用を行っていくことが、引き続き重要である。
イ 居住の安定
犯罪被害者等は、自宅やその近隣が被害現場となること等により、従前の住居に居住することが困難となった場合、それ自体が犯罪の被害として損害賠償の対象ともなり得るほか、一時避難場所の借上げやハウスクリーニングの費用を公費により負担するなどの経済的支援があるが、基本法は、金銭給付以外の支援として、居住の安定のために必要な施策を講ずることとしている(基本法第16条)。
とりわけ、公営住宅の優先入居等や、性暴力被害者等に対する自立支援について、具体的施策に掲げたとおり、犯罪被害者等の個別のニーズに応じつつ、地方公共団体において行われている各種住宅支援に係る人的・物的資源を最大限活用し、犯罪被害者等に寄り添った対応を行う。
ウ 雇用の安定
犯罪被害者等は、捜査機関からの出頭要請、裁判傍聴、証人出廷、刑事訴訟法上の被害者参加等のほか、行政窓口や民間等における各種手続等のため、自身の仕事に支障が生じるだけでなく、心身の不調等により就労を継続することができなくなるなど、雇用に関する様々な不利益を被る場合がある。これらの不利益に関し、基本法は、金銭給付以外の支援として、雇用の安定のために必要な施策を講ずることとしている(基本法第17条)。
雇用の安定に係る施策としては、事業主等の理解を増進するための取組や、個別労働紛争解決制度の周知等が行われているが、犯罪被害者等からは、とりわけ、休暇取得についての強い要望がある。
この点、民間企業においては、各企業の就業規則において休暇制度が定められているところ、犯罪被害者等の被害回復のための休暇制度について、令和6年度における認知率は9.6パーセント、導入率は0.9パーセントにとどまっており、更なる周知と導入促進が必要である。
一方で、犯罪被害者等が休暇を必要とするニーズは、心身の不調からの回復、捜査機関への協力、裁判への関与、行政窓口での各種手続等といったように、多様であることから、具体的施策に掲げたとおり、まずはそのニーズを十分に把握した上で、実効的な取組・制度を検討・実施する。
また、民間企業における犯罪被害者等のための休暇制度の導入を促進していくためには、国の行政機関における取組も重要となる。国家公務員の休暇制度については、常勤職員の休暇の種類うち、犯罪被害者等のニーズに関係し得るものとして、病気休暇及び特別休暇(官公署出頭)が挙げられる。特別休暇(官公署出頭)については、証人出廷が必要とされた場合(刑事訴訟法第143条等)や捜査機関からの出頭要請の場合(同法第223条第1項)に利用することができるものの、刑事訴訟法上の被害者参加(同法第316条の33)を行った場合等については検討が必要となる。
第2 具体的施策
[1・2共通] 損害回復・経済的支援等への取組に関する実態把握の実施
関係府省庁が連携し、犯罪被害者等のニーズに立脚した施策の企画・立案を行うため、過去4次にわたる基本計画等に基づき講じられた損害回復・経済的支援等への取組について、犯罪被害者等の利用状況等に関する実態把握を行う。【警察庁、関係府省庁】(1-1)
1 犯罪被害者等の損害回復に関する施策
(1) 犯罪被害者等の負担軽減に関する施策
ア 民事法律扶助制度及び犯罪被害者等支援弁護士制度の活用による負担軽減
法テラスにおいて、民事法律扶助制度及び犯罪被害者等支援弁護士制度を的確に運用することにより、犯罪被害者等の弁護士費用及び損害賠償請求費用の負担軽減を図る。【法務省】(1-2)
イ 損害賠償請求制度等に関する情報提供の充実
(ア) 損害賠償命令制度を含む損害賠償請求制度といった犯罪被害者等が犯罪によって生じた損害への賠償等について民事上の請求を行う手続等、犯罪被害者等の保護・支援のための制度の概要を紹介した冊子・パンフレット等について内容の一層の充実を図るとともに、当該制度の存在が広く犯罪被害者等に周知されるよう取組を進める。【警察庁、法務省】(1-3)
(イ) 平成29年の民法改正により財産開示手続等が時効の更新事由として明記されたことで、犯罪被害者等が加害者に対して有する損害賠償請求権の時効の更新の負担が軽減されたこと及び令和元年の民事執行法改正により金融機関等の第三者からの債務者財産の情報取得手続が新設されたことで、債務者財産の開示制度の実効性が向上したことについて、冊子・パンフレット等により周知する。【法務省】(1-4)
ウ 刑事和解等の制度の周知徹底
刑事和解、公判記録の閲覧・謄写、不起訴記録の弾力的開示等の制度について、引き続き適正な運用に向け周知徹底を図る。【法務省】(1-5)
エ 犯罪被害者等給付金の支給に伴い取得する債権の管理の過程における犯罪被害者等への配慮
犯罪被害者等給付金の支給に伴い国が加害者に対して取得する債権に関し、法令にのっとった管理を行う中で、犯罪被害者等の心情や損害賠償の受取に最大限配慮する取組について、実例に即して不断に検討し、実施する。【警察庁】(1-6)
オ 保険金支払の適正化等
(ア) 一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構における調停、国土交通省による保険会社に対する立入検査、国土交通大臣による適正な支払を行うことの指示等により、自賠責保険金の支払の適正化を図る。【国土交通省】(1-7)
(イ) 犯罪被害者等に直接保険金等が支払われる場合も含め、契約に基づく保険金等の支払が適切に行われるよう、「保険会社向けの総合的な監督指針」(平成17年8月12日策定)等に基づき、各保険会社における保険金等支払管理態勢について検証し、保険会社側に問題があると認められる場合には、適切に対応する。また、保険金の支払対象となり得る犯罪被害者等が、民事訴訟の場等において、損害保険会社社員や代理人弁護士から、配慮に欠けた言葉を投げ掛けられること等による二次的被害が生じないよう、保険会社側に問題があると認められる場合には、適切に対応する。【金融庁】(1-8)
(ウ) 公益財団法人日弁連交通事故相談センターにおける弁護士による自賠責保険に係る自動車事故の損害賠償の支払に関する無料の法律相談・示談のあっせん等により、適切な損害賠償が受けられるよう支援を行う。【国土交通省】(1-9)
(エ) ひき逃げや無保険車等の事故による犯罪被害者等に対しては、政府保障事業において、加害者に代わって直接その損害を塡補することにより、適切な支援を行う。【国土交通省】(1-10)
カ 被害金の振込先口座の凍結依頼の確実な実施等
犯罪被害者等からの届出や相談内容も踏まえて、警察において被害金の振込先口座に関して金融機関に対する迅速な凍結依頼を確実に実施するなど、被害の拡大防止及び被害の回復に努める。【警察庁、金融庁】(1-11)
キ 暴力団犯罪による被害の回復の支援
暴力団犯罪による被害の回復に向け、犯罪被害者等に対する助言や交渉場所等の提供等の援助、損害賠償訴訟の提起に際しての暴力団情報の提供や保護対策等の訴訟支援等が適切に実施されるよう、都道府県暴力追放運動推進センターや弁護士会の民事介入暴力対策委員会等との連携強化を含め、都道府県警察を指導する。【警察庁】(1-12)
(2) 加害者による損害賠償の履行の促進に関する施策
ア 矯正処遇における加害者の損害賠償責任の履行促進
受刑者の被害弁償の履行状況等について調査を行い、実態を把握した上で、犯罪被害者等の被害に関する心情、犯罪被害者等の置かれている状況、個々の犯罪被害者等から聴取した心情等を受刑者に理解させるとともに、履行に当たっての実際上の課題が明らかとなった受刑者に対し、実情に沿った助言や指導を実施するとともに、賠償計画の作成を含め損害賠償の履行の促進に向けた働き掛けに努める。また、受刑者に対し、受刑中の者が作業報奨金を犯罪被害者等に対する損害賠償に充当することが法令上可能である旨を引き続き周知するとともに、より効果的な働き掛けの方法について検討する。【法務省】(1-13)
イ 保護観察処遇における加害者の損害賠償責任の履行促進
事案に応じ、具体的な賠償計画を立て、犯罪被害者等に対して慰謝の措置を講ずることを生活行動指針として設定し、これに即して行動するよう、保護観察対象者に対し適切に指導を行う。それに加えて、被害弁償の履行状況等について調査を行った上で、履行に当たっての実際上の課題を明らかにし、保護観察中だけでなく、保護観察終了後も見据えた継続的な被害弁償の履行に向け、実情に沿った助言及び指導の実施に努める。【法務省】(1-14)
ウ 犯罪被害者等への損害賠償の状況についての調査の実施
関係府省庁等と連携し、犯罪被害者等が損害賠償を受けることができない状況について実態を把握するため、その適切な調査方法、調査項目等を検討した上で、当該調査を実施する。【警察庁】(1-15)
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