その他令和8年3月23日

最高裁判所判決意見(被保佐人の欠格条項の違憲性及び立法不作為の違法性について)

掲載日
令和8年3月23日
号種
号外
原文ページ
p.185
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最高裁判所判決意見(被保佐人の欠格条項の違憲性及び立法不作為の違法性について)

令和8年3月23日|p.185|原文を見る

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オ 以上を総合考慮すると、遅くとも平成14年改正当時において、本件規定を存続させる必要性及び合理性は失われており、本件規定が重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることに関する立法府の判断は、その合理的裁量の範囲を逸脱するに至っていたと考える。 したがって、本件規定は、遅くとも平成14年改正当時には、憲法22条1項及び14条1項に違反するに至り、本件退職時点においても違憲であったというべきである。
2 本件立法不作為の違法性について
(1) 判断枠組み等
本件立法不作為が国家賠償法1条1項の規定の適用上違法と評価されるべきか否かの判断枠組みについては、私も、多数意見が引用する最高裁平成27年12月16日大法廷判決等の判断枠組みに基づいて検討することに異存はない。
しかし、多数意見は、本件退職時点において、本件規定が憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠ったということはできず、本件立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないと判断しており、この点については賛同できない。
(2) 違憲の明白性
ア 尾島裁判官の反対意見3(2)及び沖野裁判官の反対意見2(5)に示されているように、違憲であることの明白性は、個々のあるいは多数の国会議員の主観的認識ではなく、唯一の立法機関である国会を構成する国会議員が、憲法遵守義務を負う合理的立法者として、違憲の法律を是正するために、付与された権限を行使しなければならない客観的状況があったか否かという観点から判断される規範的なものと考えるべきである。そして、本件において違憲の明白性の判断をするに当たっては、本件規定により侵害される憲法上の権利の性質、本件規定によるその侵害の内容・程度、本件規定及び関連する他の法令(条約を含む。)の制定及び改正経緯、国会での議論等の状況、関連する学会、研究会等の研究報告や意見表明等を考慮して、本件規定の違憲性が明白であるといえるかを判断することができる。
イ 平成14年改正が国会において審議された際には、障害者に係る欠格事由の多くは憲法13条や14条、また国連の様々な宣言や障害者基本法の理念に反するという意見が出され、政府参考人も、同時点において精神病患者一般について適正な警備業務の実施が期待できないという考え方は持っておらず、個別具体的なケースに応じて能力を判断していくべきものとの立場を表明している。ところが、その国会において、「精神病者」に係る欠格条項の見直しの議論に関連して、本件規定について問題提起がされることはなかった。本件規定が、平成14年改正時に検討対象とされなかったのは、平成11年決定が、障害者を表す身体又は精神の障害を理由とした欠格条項を見直しの対象としていたため、「被保佐人」であることを理由とした欠格条項は見直しの対象とされていなかったというだけでなく、被保佐人が障害者であることに加えて公的機関により判断能力が著しく不十分と判定された者であり一定の資格や職業には不適格であるとの社会的な認識が影響していたのではないかと考えられる。このような社会的な認識の誤りが指摘されるのは、後述する平成22年7月公表の成年後見制度研究会の研究報告を待たねばならなかった。同報告には、「成年後見の類型は、主として財産の処分等に必要な判断能力に照らして決められるのであるから、成年後見等が開始したとしても、その余の能力が直ちに欠如しているとはいえない。」との指摘がある(同報告書第2章第4の1(2)ア)。したがって、私は、平成14年改正の当時、本件規定は違憲となっていたものの、国会においてその違憲性が明白になっていたとはいい難いと考える。
ウ そこで、平成14年以降の障害者権利条約の署名及びその批准に向けた国内法の整備等の経緯、成年後見制度の利用の促進に関する法律の制定等の経緯(多数意見第1の3(2)及び(3))を検討した結果、私は、遅くとも平成23年7月の障害者基本法改正当時には、本件規定の違憲性が国会にとって明白になっていたといい得ると考える。
我が国は、平成19年9月に障害者権利条約に署名し、その批准に向けて、同条約の基本的な理念に沿った形で、国内法の整備及び国内制度改革を行った。そして、平成23年7月に、我が国の障害者施策に関する基本法となる障害者基本法を大幅
に改正した。この改正は、障害者権利条約の批准に先立ち、障害者権利条約が締約国に求める障害者の権利の実現や差別の禁止等の理念を取り込むもので、同改正により、障害者基本法は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、かかる施策の基本となる事項を定めること等により、かかる施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とすることが明示された(1条)。また、平成16年の障害者基本法改正により基本理念として追加された障害を理由とする差別禁止規定(3条)が、平成23年改正法では「差別の禁止」として独立した条項とされ、何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならないこと(4条1項)、社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって、前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならないこと(4条2項)が定められた。 このような障害者権利条約への対応と並行して、平成22年7月に公表された成年後見制度研究会による研究報告及び同年10月の成年後見法世界会議による横浜宣言において、成年被後見人等に係る欠格条項の問題点が指摘されていた(多数意見第1の3(3)ア及びイ)。
エ 以上の経緯を踏まえ、私は、平成11年整備法を可決する際に参議院法務委員会が平成11年附帯決議を行ったにもかかわらず、その後見直しが進展するどころか、成年被後見人等に係る欠格条項が増加していたという状況にあって、成年後見制度研究会の研究報告や成年後見法世界会議の横浜宣言により、成年被後見人等に係る欠格条項が、国会が検討すべき事項として再認識される機会を得たと考える。そして、我が国の障害者対策の基本法である障害者基本法が改正され、全ての国民が障害の有無にかかわらず等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるもの
であるとの理念を掲げ、障害を理由とする障害者に対する差別その他の権利利益の侵害行為を禁止するとともに、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならないことを国民に明示した平成23年7月頃までには、国会において、本件規定が障害者の職業選択の自由を過度に制限し、保佐の制度を利用した障害者に不合理な差別を行うものとして、その違憲性が明白となっていたというべきである。
オ なお、多数意見は、本件前身規定が設けられてから本件退職時点に至るまでに、裁判所において本件規定や本件前身規定の憲法適合性について判断がされたことがなかったこと、その他の成年被後見人等に係る欠格事由については、成年被後見人の選挙権に関する平成25年東京地裁判決があるものの、職業に関する成年被後見人等に係る欠格条項については、裁判所において違憲である旨の判断がされたことはなかったことを、国会にとって本件規定の違憲性が明白にならなかった事情の一つとして挙げている(多数意見第3の2(2)イ)。
もちろん、裁判所において違憲である旨の判断がされていれば、国会はそれらの内容を精査し、必要な是正措置をとるべきであるが、そのような判断がないとしても、それが違憲性の明白性を否定する積極的な事情になるとは思われない。訴えが提起されなければ、裁判所は判断もできないが、事案によっては、裁判という手段をとるのが困難な者もいる。警備員に就きたいと希望する知的・精神障害者は、本件規定が存在する以上、保佐制度の利用を断念するか警備員という職業を断念するかの二者択一を迫られることになる。本件のように、職を失うことにもかかわらず保佐制度を利用し、本件規定の違憲判断を得るために裁判に訴えるという選択肢は、個人の経済的・精神的負担の重さを考えると、容易にとり得るものではない。本件は、その意味で稀有の事例であって、先例となる裁判例がないのは事案に鑑みて当然のことである。それゆえに、本件の判断において、裁判例がないことを国会にとって本件規定の違憲性が明白にならなかったことの理由の一つとして挙げるのには躊躇を覚える。
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最高裁判所判決意見(被保佐人の欠格条項の違憲性及び立法不作為の違法性について) - 第185頁
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