その他令和8年6月23日

森林・林業・木材基本計画策定以降の情勢変化等と対応方向

掲載日
令和8年6月23日
号種
号外
原文ページ
p.25 - p.26
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森林・林業・木材基本計画策定以降の情勢変化等と対応方向

令和8年6月23日|p.25-26|原文を見る

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(第16】第46)第47月9 月22
オ原木の安定供給に関しては、燃料材需要の増大等に対応して供給量が増加するとともに、
製材工場における直送率法は約5割に達し、原木流通の効率化が進展した。一方で、急激な
需給変動の際には、林業経営体の生産性の低さや労働力不足、製材工場等の供給力不足やス
トック機能の脆弱性等の供給体制の課題に加え、木材需給に係る情報が川上・川中・川下の
関係者間で十分に共有されないことにより、弾力的な木材供給が困難な状況も見られた。ま
た、再造林や素材生産から木材加工、消費に至るまでの木材に係るコスト構造(以下「木材
に係るコスト構造」という。)等に関する関係者間の理解の順成も十分でなく、現状のままで
は国産材の供給拡大や付加価値向上の機会を逸するおそれがある。
注工場が調達した原木のうち、木材流通業者を経由せず、素材生産業者等から直接入荷し
たものの割合をいう。
力木材産業の競争力強化に関しては、製材業の出荷額が令和2年の63百億円から令和5年に
は78百億円に、合板・単板製造業の出荷額が同じく35百億円から40百億円に増加するなど、
木材産業の市場規模は拡大しているものの,製材・合単板工場の生産性は前基本計画の期間
中に頭打ちとなっている。国際競争力の強化に向けた木材の安定供給の観点からは、木材加
工流通施設の生産性の更なる向上と機能強化が急務である。また,品質性能の確かな木材製
品を供給するためには、木材製品における日本農林規格(以下「JAS」という。)の認証取
得が重要である。しかし、構造用製材の格付率が令和6年において3割にとどまっているよ
うに、特に製材分野で認証が進んでいない。さらに、大径材の増加への対応や内装材等の付
加価値の高い製品の供給等が不十分である。
キ木材利用の促進に関しては,都市の木造化推進法に基づく建築物木材利用促進協定の締結
数が、220件となった(令和7年12月時点)。また、直交集成板(以下「CLT」という。)や
木質耐火部材等の開発や普及により、公共建築物の木造率が上昇するとともに、民間の非住
宅分野でも、店舗等の低層かつ比較的小規模な建築物を中心に、企業による木材利用の取組
が拡大した。一方、中高層の木造建築物については、徐々に増加しているものの、なお一部
にとどまり、国民が日常的に目にするような状況にはなっていない。また、低層住宅では柱
材等を中心に国産材の利用が拡大したが、国内新築住宅市場の縮小を見据えると、横架材等
の国産材比率が低い部材における利用促進が課題である。
木材等の輸出促進に関しては、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」(令和2年12月農林
水産業・地域の活力創造本部決定)に基づき、輸出産地育成に向けたセミナーの開催、輸出
先国の規格・基準やニーズに対応した性能検証等の取組を行った結果、輸出額が令和2年の
357億円から令和7年には596億円まで増加した。また、令和7年5月には同戦略を見直して
対策の強化を図った。一方で、原木が輸出額の約5割を占めており、付加価値の高い木材製
品等の輸出拡大が課題である。
木質バイオマスの利用に関しては、木質バイオマス発電所の増加等により、燃料材の国産
材利用量が令和2年の9百万m2から令和6年には12百万m2まで増加し、製紙等向けパルプ・
チップ用材と併せて、国産材需要を下支えする役割を果たした。一方、地域によっては、発
電事業者間や既存需要者との間での原木需要の競合や森林資源の持続的利用に対する懸念が
生じている。
新たな動きとして、環境に配慮した企業経営等を求める社会的気運やウェルビーイングへ
の関心が高まっている。しかし、森林整備や木材利用等を通じた環境貢献を客観的に評価す
る手法は十分に普及しておらず、また、木の良さや利用の意義、森林の価値等が消費者に十
分に理解されていないため、建築物等に木材を利用する動機付けが不足している。
(3)前基本計画策定以降の情勢変化等
我が国は、地球温暖化に伴う気候変動、生物多様性の損失など地球規模の大きな変化や、不
透明な国際情勢、急速な少子高齢化等にも対応しながら、各般の施策を進めていくことが求め
られており、 次のとおりである。
ア令和2年以降の温室効果ガス削減等に関する国際的な枠組みであるパリ協定の下、「地球温
暖化対策計画(令和7年2月閣議決定)において、GXの推進等を通じた[2050年ネット・
ゼロ」の実現に向けた、新たな温室効果ガス削減目標が掲げられた。また、生物多様性の保
全に関しては、昆明・モントリオール生物多様性枠組が令和4年に生物多様性条約第15回締
約国会議(COP15)第二部で採択されたことを受け、我が国では令和5年3月に「生物多
様性国家戦略2023-2030」を閣議決定し、令和12年までに「ネイチャーポジティブ」を実現
することとされた。これらを背景として、環境に配慮した企業経営等への意識が高まる中、
二酸化炭素の吸収源であると同時に、豊かな生物多様性を支える重要な構成要素である森林
への期待や、再生可能で二酸化炭素の排出削減・貯蔵にも資する資材としての木材への関心
が高まっている。折しも、地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)に
基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(以下「SHK制度」という。)が変更され、
同法の特定事業所排出者が報告等を義務付けられている自らの温室効果ガス排出量の算定に
おいて、森林経営活動や木材製品の利用による炭素蓄積変化量を利用することが可能になっ
たほか、建築物のライフサイクルカーポン(以下「LCCO2」という。」の評価法に関する制
度の導入が検討されるなど、森林や木材の環境貢献の見える化に資する動きが進展している。
注建築物の資材製造・施工から解体に至るまでの全体を通じた二酸化炭素等の排出量を定
量的に計算し、評価することをいう。
イ令和2年以降の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により木材需要全体が低迷し、その
後、いわゆるウッドショックが発生するなど、国産材のサブライチェーン全体で急激な需給
変動に対応する必要に迫られた。こうした複合的な外部要因を背景に、経済安全保障の観点
からも国産材への期待が高まっており、建築用材等に占める国産材の割合が過半となってい
る。
ウ森林・林業・木材産業分野において、これまで、リモートセンシング注やICTの活用
林業機械の遠隔操作・自動運転技術の開発、改質リグニンやセルロースナノファイバー(以
下「CNF」という。)を始めとする多様な木質系新素材の開発や実装、細胞増殖による苗木
生産技術の開発等が進展している。さらに、AIについては急速な技術進歩が起きており、
森林・林業・木材産業分野においても効率性や利便性を大きく向上させること等が期待され
ている。
注衛星、航空機、ドローン等を用い離れたところから、観測対象のデータを取得する技術
をいう。
エテレワーク環境の整備が全国的に進展し、場所にとらわれない柔軟な働き方が広がるなど、
農山漁村地域が居住地として見直される環境が整いつつある。このような状況も踏まえて、
「地方みらい共創戦略」(令和7年5月農林水産省地方みらい共創研究会策定)においては、
森林・山村分野について、森林の有する多面的機能に価値を見出し、地域の賑わいや所得と
雇用を創出する「森業」を推進することとされた。
オ気候変動等に伴い激甚な山地災害等が相次いでいる。令和6年には、1月の能登半島地震
により亀裂が生じていた山地において、9月に奥能登豪雨が発生したこと等により山腹が崩
壊し、人家や道路に土砂や流木が流出するなど、複合的な要因による甚大な被害がもたらさ
れた。令和7年には、記録的な少雨の影響もあり、冬から春にかけて大規模な林野火災が各
地で発生した。なかでも、2月に岩手県大船渡市で発生した林野火災は、過去60年で最大の
ものとなった。また、クマの分布が人間の生活圏周辺まで拡大し、特に、令和7年には死者
数が過去最多となるなど人身被害が多く発生した。
2森林及び林業をめぐる情勢変化等を踏まえた対応方向
(1)森林・林業・木材産業の好循環による「森の国・木の街」の実現
環境に配慮した企業経営等を求める社会的気運の高まりを好機と捉え、森林や木材の環境貢
散の見える化を通じて木材の利用拡大と幅広い需要の創出を図る。また、それに対応した林業・
木材産業の体質強化と、林業従事者の所得及び立木価格の向上が重要であることから、木材加
97(51..1.19.1.31.21.21.21
工流通施設の戦略的な整備、スマート林業の推進、森林の集積・集約化の推進等に取り組み、
造林から木材利用までの各段階で付加価値を生み出し、関係者が相互理解の下、正の連鎖でつ
ながる強靱なサブライチェーンの構築を図る。これにより、森業等による山村地域の発展と併
せて、森林資源の循環利用と付加価値の創出を推進し、林業・木材産業の成長を持続可能なも
のとしていく。
同時に、気候変動等がもたらす複合的な要因による山地災害や大規模な林野火災等の危機を
予防・管理するため、森林整備・治山対策を強化するとともに,水源涵養機能等の多面的機能
の発揮に向けた多様で健全な森林づくりを進め、国民生活の安全・安心を根底から支えていく。
これらにより森林・林業・木材産業の好循環を生み出すことは、林業・木材産業が内包する
持続性を高めながら成長・発展させる「グリーン成長」の理念を発展的に引き継ぐものである。
その具体像となる「森の国・木の街」の実現に向け、関係者が将来に希望を持って新たな取組
に挑戦できるよう、民間活力の積極的な活用を図りつつ。施策を集中し、機動的な実施を図る
ことにより、森林・林業・木材産業の次の百年の礎を築いていく。
(2)林業・木材産業の成長の実現
ア木材の利用拡大と幅広い需要の創出
都市の木造化推進法に基づく建築物木材利用促進協定、「森の国・木の街」づくり宣言、新
たな部材の開発等により、非住宅・中高層建築物への木材利用が徐々に広がっている。この
動きを主流化するため、SHK制度や建築物のLCCO2の評価等を活用し、木材は他の資材
と比べ製造時のエネルギー消費が少なく、炭素貯蔵効果の長期発揮が期待できるといった。
様々な価値の見える化を進める。また、IAS構造材準1等を活用した建築手法やCLTの
普及等により、更なる需要を創出するとともに、多様な主体の参画により、地域ぐるみの木
造化を促進する。低層住宅についても、国産材比率の低い横架材等を中心に、国産材の利用
拡大に資する新部材の開発や設計手法の確立等を加速する。あわせて、今後の市場規模の拡
大が見込まれ、成長分野として期待されるリフォームについて、増改築や耐震化、内装工事
における木材の需要を着実に捉えてその利用を促進する。その際、木材が心身等に与える効
果に関するデータや科学的根拠を整理し発信するとともに、大径材や広葉樹材を活用した内
装材等の付加価値の高い製品の開発や普及を推進していく。加えて、土木分野等への木材利
用を推進する。
我が国の木造建築は地震や火災に強く、その技術は世界に誇る高水準にあり、安全・安心
な生活・職場空間の創出に資するものである。こうした我が国の技術を生かした製品の海外
における認知度の向上やブランド化を図り、新規市場の開拓に向けた市場調査や、輸出先の
国や地域の市場のニーズに対応した木材加工施設の整備等により、CLTやツーバイフォー
工法用部材注2等の木材製品の輸出拡大等を図る。
また、余すことのない木材利用を目指し、木材のカスケード利用や未利用材の活用を進め
つつ,将来にわたる木質バイオマスの安定的な需要先確保に向け,木質系新素材の更なる開
発や実装、木質バイオマスの熱利用や熱電併給を促進していく。
さらに、企業等の行動変容にもつながる消費者の理解醸成に向け、木の良さや利用の意義、
森林の価値等を学ぶ木育等を促進していく。
注1構造材のうちJASによる格付けがなされたものをいう。
注2枠組壁工法(ツーバイフォー工法)に用いる部材のことをいう。
イ需要に応じた国産材の供給力強化
横架材等の国産材比率の低い部材等の安定供給に向け、木材加工流通施設の生産力強化や
省力化を加速するとともに、製材工場、合板・LVL洋工場等(以下「製材・合板工場等」
という。)の間の連携やストック機能の強化を図る。その際、建築分野への木材利用の促進に
必要なJAS構造材等の品質性能の確かな製品の安定的かつ効率的な供給体制を戦略的に整
備する。また、木材の付加価値の向上に向け、今後出材の増加が見込まれる大径材に対応し
て単価の高い板材等を効率的に生産することのできる施設の整備や、効果的な木取りの手法
の普及等を推進する。地場の中小製材・合板工場等については、地域の関係者との連携等を
通じ、地域のニーズに対応した付加価値の高い木材製品の持続的な供給体制の構築を推進し
ていく。
注単板積層材(Laminated Veneer Lumber)のことをいう。
ウスマート林業技術の実装等による持続的な林業の確立
林業の労働安全の確保と生産性の更なる向上、原木の安定供給体制の構築に向け、効率的
な作業システムの導入を進めるとともに、AIを始めとするデジタル技術の活用により従来
の業務手順や商慣習の変革を図る林業DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進。
林業機械の遠隔操作・自動運転技術等といったスマート林業技術の開発や実装、特定苗木の
導入等に取り組む。
また、技能検定制度等を活用した能力評価の導入によるキャリアに応じた昇給の実現や、
個人事業者等を含めた関係者の労働安全の確保に向けた意識改革の徹底等により,林業従事
者の所得の向上と労働環境の更なる改善を促進していく。
さらに、森林の集積・集約化を進めつつ、長期にわたる持続的な経営を担う多様な林業経
営体の育成及び確保に向け、新規参入を促進するとともに、当該経営に必要となる権原の集
積や経営基盤及び経営力の強化を図っていく。
エ森業等の推進による山村地域の自立的かつ持続的発展
山村地域には山や森林と深く結びついた貴重な伝統文化や習俗等が受け継がれている。ま
た、山村地域は、森林の有する多面的機能の発揮を支える林業従事者の生活基盤としても重
要な地域である。こうした山村地域について、人口減少と少子高齢化が進行する中、自立的
かつ持続的な発展を図るためには、森林資源を最大限に活用して集落を維持していくことが
不可欠である。
その際、森林の保健・レクリエーション機能や美しい景観に関心を持つ都市部の住民、森
林整備等を通じた環境貢献を検討している企業等を対象として交流を拡大するなど、木材等
生産機能にとどまらない森林の価値を活用して移住・定住の促進や所得の確保を図ることが
重要である。このため、林業・木材産業の成長・発展と同時に、従来から進めている森林サー
ビス産業を中心とした森林の総合的な活用の取組に加え、森林由来I-クレジットの活用等
を通じて、人と森林との関係を深化させ、山村地域の所得の向上や豊かな森林づくりにつな
げる森業を推進していく。
オゾーニングと森林の集積・集約化の加速
森林の有する多面的機能の発揮に向け、期待する機能に応じた区域の設定(以下「ゾーニ
ング」という。)を確実に実施するとともに,森林経営計画制度等に基づく森林の適正な整備
及び保全の取組を推進していく。
現況が人工林のうち、林地生産力が比較的高く車道(開設が見込まれるものを含む。)や集
落からの距離が近いといった自然的・社会的条件が良い林業適地については、将来にわたり
森林資源の循環利用を進めることとし、林地保全や生物多様性保全等が図られた適正な伐採
と再造林の確保を図る。その際、林業生産活動の基盤となる路網の重点的な整備を推進する
とともに、リモートセンシングやAIを活用した境界明確化や情報の透明化等を推進する。
さらに、令和7年に改正した森林経営管理法の最大限の活用等を図り、個々の森林境界にと
らわれない手法の普及も推進しつつ、長期にわたる持続的な経営を担う林業経営体への森林
の集積・集約化を加速する。
林業適地以外の人工林については、侵入広葉樹を活用した針広混交林化等により天然林へ
の移行を図る。天然林のうち、里山林のような利活用等により機能の維持増進を図るものに
ついては、多面的機能の維持増進を図るため、適切な整備による利活用等を行うとともに、
それ以外の天然林については、保全管理を図る。その際、順応的管理(アダブティブマネジ
メント)注の考え方に基づき区分を問わず生物多様性の保全に配慮した森林づくりを推進す
る。
注将来の状況が必ずしも当初の予測どおりとならないことをあらかじめ管理体系に組み込
み、継続的に監視を行いながらその結果に合わせて対応を変える管理手法をいう。
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