告示令和6年12月18日
地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律に基づく基本的事項等の告示
号外p.15 - p.20
号外p.15-p.20
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地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律に基づく基本的事項等の告示
令和6年12月18日|p.15-20
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第二 地域生物多様性増進活動の促進のための施策に関する基本的事項
一 地域生物多様性の促進に関する基本的な施策
二 各主体の役割
第三 増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の作成に関する基本的事項
一 増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の作成に当たっての基本的な考え方
二 増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の内容
1 活動の内容及び実施時期
2 活動の区域
3 活動の目標
4 活動の実施体制
5 計画期間
6 連携地域生物多様性増進活動の促進のために必要な事項(※連携増進活動実施計画のみ)
三 特例措置に関する手続及び他法令・計画等との調整等
四 増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の認定に関する基準
1 法第9条第3項第1号(第11条第8項において準用する場合も含む。)に関する基準
2 法第9条第3項第2号(第11条第8項において準用する場合も含む。)に関する基準
五 増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の認定後の手続
1 認定を受けた増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の実施状況についての報告
2 認定を受けた増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の変更等
第四 農林漁業に係る生産活動との調和その他の地域生物多様性増進活動の促進に際し配慮すべき事項
一 農林漁業に係る生産活動との調和
二 社会資本整備との調和
三 自然環境の保全に関する方針との調和及び気候変動対策との調和
第五 地域生物多様性増進活動の促進に関する重要事項
一 生物多様性維持協定
二 連携増進活動協議会
三 地域生物多様性増進活動支援センター
四 生物多様性の見える化
五 地域生物多様性増進活動の更なる促進のための仕組み
1 活動への資金等の支援
2 活動への助言・伴走支援
3 普及啓発・人材育成
第一 地域生物多様性増進活動の促進の意義に関する事項
一 法制定の背景
「生物多様性及び生態系サービスの総合評価2021」(Japan Biodiversity Outlook3)によると、我が国の生物多様性は、過去50年間損失し続けているとされている。このような状況の中、我が国では、2022年12月に開催された「生物多様性条約第15回締約国会議」において採択された世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を踏まえ、2023年3月に生物多様性国家戦略を改定し、2030年までに「自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させる」という、いわゆる「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の実現を掲げた。
我が国は、農林漁業など人々の様々な働きかけを通じて形成されてきた里地、里山、里海、企業緑地、都市の緑地等の身近な自然を含め、多様な自然環境を有している。そのため、我が国におけるネイチャーポジティブの実現に向けては、原生的な自然環境の保全に加えて、身近な自然など二次的な自然環境も含めて保全を進めていく必要があり、国主体の取組に加えて、地方公共団体、企業、団体及び個人(以下「地方公共団体・民間等」という。)による活動を促進することが重要である。環境省においては、令和5年度から、地方公共団体・民間等の活動によって生物
多様性の保全が図られている区域を国が認定する「自然共生サイト」制度を運用し、令和5年度に184か所を認定するなど、一定の成果を上げてきた。一方で、ネイチャーポジティブの実現に向けては、自然共生サイトのような生物多様性が豊かな場所を維持していくことに加えて、生物多様性が損失している場所において生物多様性の回復や創出を図ることも重要である。また、企業経営においても、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)等の自然関連の情報開示の流れもあいまって、近年、生物多様性や自然資本の重要性がますます高まっている。「昆明・モントリオール生物多様性枠組」においても、事業者(ビジネス)及び金融機関に対し、生物多様性関係の情報開示等を求めること(ターゲット15)とされている。このような状況の中で、地方公共団体・民間等の効果的な活動をより促進するためには、活動の信頼性・適切性を統一的に評価・担保し、活動の価値を明確化することが重要である。
以上の背景を踏まえ、令和6年4月、第213回国会において「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律」(令和6年法律第18号。以下「法」という。)が制定された。
二 地域生物多様性増進活動の促進の意義
1 地域生物多様性増進活動
「地域生物多様性増進活動」とは、里地、里山その他の人の活動により形成された生態系の維持又は回復、生態系の重要な構成要素である在来生物の生息地又は生育地の保護又は整備、生態系に被害を及ぼす外来生物の防除及び鳥獣の管理その他の地域における生物多様性の増進のための活動をいう(法第2条第3項)。同活動には、生物多様性の増進にも資する農林漁業や緑地の保全・創出のほか、自然とのふれあいなど環境教育の体験活動等も含まれている。
「生物多様性の増進」とは、生物多様性を維持し、回復し、又は創出することをいう(法第2条第2項)。
「生物多様性の維持」とは、既に良好な生物多様性が存在する場を維持することをいい、「生物多様性の回復」とは、過去に生物多様性が豊かであったが、その多様性が損失した場又は損失が進行している場において、その多様性を回復することをいい、「生物多様性の創出」とは、現在、生物多様性を欠いている場において、その地域に在来の動植物が生息・生育することができるような自然環境等を整備することにより、生物多様性を創出することをいう。
また、「連携地域生物多様性増進活動」とは、地域生物多様性増進活動のうち、地域の自然的社会的条件に応じ、市町村と地域における多様な主体が有機的に連携して行うものをいう(法第2条第4項)。これは、市町村と地域における多様な主体が、市町村の取りまとめによって、各々の能力や立場に応じた適切な役割分担を行い、相互に密に連絡・協力しながら、地域の自然的社会的条件を踏まえた共通の目標の下で連携地域生物多様性増進活動として一体的に活動を実施することで、効果的かつ確実に生物の多様性の増進を図ることができるものである。
2 地域生物多様性増進活動の促進の意義
我々の生活は生物多様性を基盤としており、将来にわたって生物多様性の恵沢を享受できる「自然と共生する社会」を実現するためにも、地域において豊かな生物多様性を確保することが必要である。そのために、地域生物多様性増進活動が果たす意義は次のとおりである。
(1) 生態系ネットワークの構築
里地、里山、里海、企業緑地、都市の緑地等の身近な自然は、生態系の構成要素として、また、国民の自然への接点として、重要な役割を有している。こうした場所での活動も含めて、地域生物多様性増進活動を促進することは、生物多様性に貢献する場所の量的・質的な確保や連結性の向上に資することとなり、生態系ネットワークの構築につながる。その際、自然公園や都市公園など、まとまった自然環境が確保されている場所は、生態系ネットワークの中核になり得る。また、このような自然環境に加え、陸域とのつながりの重要性の観点から、沿岸域(藻場・干潟等)における活動も重要である。
さらに、生態系ネットワークが構築されることは、気候変動等の影響に対する生態系の強きょうじん靱性を高めることにも寄与し、気候変動適応策としても重要な方策の一つとなる。
(2) 活動の質・継続性の向上
国民運動として都市内含めて全国各地で規模の大小に関わらず地域生物多様性増進活動が実施されることは、国民にとって身近な自然との接点となり、生物多様性について関心・理解を深める入り口になることが期待され、ネイチャーポジティブの実現に向けた機運の醸成につながるとともに、地域生物多様性増進活動への参画を促すことに寄与する。
保護地域内外を問わず、地域生物多様性増進活動を促進し、また、希少種保護、外来生物・鳥獣被害対策等と連携することは、地域生物多様性増進活動の質や継続性の向上につながる。また、持続可能な農林漁業や観光業など自然資本に立脚した産業との連携を図り、継続的に自然の恵みを享受しながら土地等を利用することも地域生物多様性増進活動の継続性につながる。
さらに、地域生物多様性増進活動を行う者(以下「活動実施者」という。)や活動を支援する者自体が注目され、また、その活動等が適切に評価されることで、活動実施者等の評価の向上、ESG投資等の判断における適切な評価、成果指標としての活用や既存の活動の再評価等にもつながり、そのことが地域生物多様性増進活動の継続性や質の向上に寄与する。
(3) 多面的な機能の発揮と自然を活用した解決策(NbS)の推進
地域生物多様性増進活動を通じて、炭素貯留、災害に対する生態系の強靭性の向上、文化の伝承、心身の健康の増進など、自然資本による多面的な機能が発揮されることで、自然を活用した解決策(NbS)の推進にもつながる。
(4) 地域の活性化
地域生物多様性増進活動は、地域の様々な主体との連携・協働をもたらし、地域コミュニティの形成につながるほか、活動の実施区域において生産された農林水産物の販売や地域の自然資本を活かした観光の推進など、生物多様性の増進を通じた地域の活性化に寄与する。さらに、地域資源を持続的に活用して環境・経済・社会を統合的に向上させていく事業を生み出し続けることで、地域課題を解決し続ける「自立した地域」をつくるとともに、それぞれの地域の個性を活かして地域同士が支え合うネットワークを形成する「自立・分散型社会」の実現を目指す地域循環共生圏の構築にもつながる。また、生物多様性を活かした体験活動等の環境教育を含めた形で活動を実施することで、地域における生物多様性の価値の共有や、伝承、活動の担い手の育成等にもつながる。
第二 地域生物多様性増進活動の促進のための施策に関する基本的事項
一 地域生物多様性増進活動の促進に関する基本的な施策
地域生物多様性増進活動は、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」のターゲット3である30by30目標(2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全する目標)の達成にも寄与する。30by30目標の達成には、保護地域の拡張及び管理の質の向上に加えて、OECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する場所)の設定・管理を進めることが必要である。そのため、法において、生物多様性を維持する活動として認定を受けた場合は、当該実施区域について、保護地域との重複を除き、OECMとして国際的なデータベースへ登録する。一方で、法において生物多様性を回復・創出する活動として認定を受けた場合は、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」のターゲット2である生態系の回復目標(2030年までに、劣化した生態系の30%以上の地域を効果的な回復下に置く目標)の達成にも寄与する。その上で、認定後における回復・創出活動の継続の結果、生物多様性の状態が豊かになり、生物多様性を維持する活動として認定を受けた時点で、保護地域との重複を除き、OECMとして国際データベースに登録する。なお、認定を受けた増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の実施区域を「自然共生サイト」と呼称する。
二 各主体の役割
国においては、ネイチャーポジティブの実現及び30by30目標の達成に向け、我が国の生物多様性の状況を把握し、生物多様性の増進に関する施策を総合的に策定・推進する。具体的には、生物多様性の状況の調査、全国各地の生物多様性の状況等を可視化し国民に分かりやすく伝える
システムの構築、活動の成果を把握するための簡便なモニタリング手法の開発等の施策を講じる。また、地域生物多様性増進活動は、多様な主体によって多くの活動が国民運動的に全国各地で実施されることが重要であることから、国の制度・事業の活用とともに、増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の作成の支援、地方公共団体・民間等の資金・人的資源等が地域生物多様性増進活動に集まる仕組みの構築、生物多様性に関する知見を有する有識者とのマッチングや人材育成の促進等の地域生物多様性増進活動が継続されるよう必要な支援を行う。さらに、本制度の認定の効果を高めるため、地球温暖化の防止を図るための施策、気候変動適応に関する施策、循環型社会の形成に関する施策、防災に関する施策、水循環に関する施策等の関連する施策との連携を図るとともに、企業、団体及び個人の生物多様性に対する理解や関心を高めるため、広報活動を通じた情報の発信や環境教育の推進等を行い、また国際的にも我が国の取組が評価されるよう発信していく。
地方公共団体においては、その地域の自然的社会的条件に応じた取組を進めることが期待される。地方公共団体が主体となり実施区域の状況に応じた地域生物多様性増進活動を行うだけでなく、その実施区域における地域生物多様性増進活動の効果的な促進を図るため、法第28条で定める地域生物多様性増進活動支援センターの設置に努め、関係者間の連携や協力のあっせん等を行うとともに、都道府県や市町村それぞれの立場から行っている関連施策の情報提供等を行う。特に市町村は、地域で活動する者に一番近い存在であることから、地域生物多様性増進活動を円滑かつ効果的な活動とするため、地域の多様な主体との連携・調整を図ること、地域の多様な主体の意見等を取りまとめ連携増進活動実施計画を作成すること、同計画を作成しようとする場合には法第13条で定める連携増進活動協議会を組織すること、長期安定的な活動のための生物多様性維持協定を締結すること等が期待される。
また、都道府県及び市町村は、生物多様性基本法(平成20年法律第58号)に基づき、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的な計画である「生物多様性地域戦略」を策定するよう努めることとされている。法第11条第7項においても、「生物多様性地域戦略」を策定している市町村は、連携増進活動実施計画と当該戦略の調和を保つよう努めることとしている。これらを調和させることで、地域全体における活動の位置付けがより明確になり、関連する施策や他地域との連携が強化されることが期待される。
事業者等(事業者、国民若しくはこれらの者の組織する民間の団体)には、地域生物多様性増進活動を自ら実施すること、活動実施者を支援すること、専門的知識や経験を基にした助言を行うこと、活動実施者に土地の所有者等として協力すること等の役割が想定され、地域固有の生物多様性への理解を深めつつ活動を行うことや、地域固有の生業を通じた経験と理解を活かして持続可能な農林漁業や観光業の一環として活動を行うこと等が期待される。また、特に特定非営利活動法人等の民間の団体(以下「NPO・NGO等」という。)は、生物多様性の保全に関する知見やノウハウ、人的ネットワークを有していることから、市民参加型のモニタリングや環境教育、個人の参加を受け入れるためのプログラムの提供や連携体制づくりを進めていく際の核となり、地域の活動を幅広く支援すること等が期待される。また、企業等においては、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)等の国際的な動きを意識するなど、本業として継続的に取り組む工夫をしながら事業活動の内容に即した地域生物多様性増進活動を実施することや、活動実施者を支援することが期待される。
第三 増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の作成に関する基本的事項
一 増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の作成に当たっての基本的な考え方
増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画は、特定の場所における生物多様性を増進させるために、地域生物多様性増進活動又は連携地域生物多様性増進活動(以下本基本方針第三において「活動」という。)の内容、実施時期、実施区域、目標、実施体制、計画期間等を具体的に記載するものである。増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の認定を申請しようとする者は、次に掲げる基本的な考え方を取り入れながら各活動実施計画を作成する必要がある。
第一に、各活動実施計画の作成に当たっては、その地域に適した活動を行うため、実施区域の生態系のタイプや生物多様性の状況、土地等の利用状況・変遷や地域全体の目標等について事前に情報収集や調査等を行うことが重要である。このような事前情報や科学的な知見も踏まえて、適切な各活動実施計画を立案することは、地域の生物多様性に支障を及ぼすような行為を気付かずに行ってしまうことや、対外的には生物多様性に配慮しているように見せかけているが、実際には効果がない、又は生物多様性を損失させることを避けるためにも重要である。
第二に、各活動実施計画の作成においては、国や地方公共団体、地域生物多様性増進活動支援センター等が提供する情報を積極的に活用し、関係する多様な主体や専門家、自然に関する知識や経験を有する地域住民等と連携することで、活動の幅を広げ、より地域の自然的社会的条件に応じた適切な各活動実施計画を立案することができる。
特に、連携増進活動実施計画の作成に当たっては、市町村が組織することができる連携増進活動協議会を活用することで、円滑な作成や実施に係る連絡調整を行うことが可能となる。
なお、連携増進活動実施計画については、連携地域生物多様性増進活動を行おうとする者が、素案を作成した上で、市町村に対して当該計画の作成を提案することができる(法第11条第4項)。この仕組みを活用することで、活動に関心の高い民間の発意による実効的な計画となり、より積極的な活動へとつながることが期待される。提案を受けた市町村は、地域の自然的社会的条件を踏まえ、この提案に係る連携増進活動実施計画の作成の必要性について十分な検討を行い、連携増進活動実施計画を作成する必要があると判断した際には、提案者と連携を図りつつ当該計画の作成を進めることが重要である。一方、当該計画を作成する必要がないと判断した際には、その旨及び理由を提案者に通知するよう努めなければならない(法第11条第5項)。
第三に、実施体制の確保や活動の円滑かつ確実な実施のため、関係者との十分な事前調整が重要である。具体的には、申請者は、申請者と土地の所有者等が異なる場合は土地の所有者等の同意を得ること、また、実施区域が公物等の管理区域と重複する場合は公物等の管理者の確認や同意を得ることが重要である。さらに、法で規定している特例以外で、活動に必要な許認可がある場合は、同許認可の手続を行うことが必要である点も留意する。なお、同活動の見直しに伴って各活動実施計画を変更する場合は、認定を申請する場合と同様に必要な関係者の確認や同意等を得ることが重要である。
活動に農林漁業に関する内容が含まれている場合には、農林漁業への予期せぬ影響が生じることや関係者との調整不足を防ぐため、実施区域の地方公共団体等に事前に活動について相談を行うことが原則必要である。その際、本基本方針第四「農林漁業に係る生産活動との調和その他の地域生物多様性増進活動の促進に際し配慮すべき事項」に留意する。
地方公共団体が各活動実施計画を作成する場合においては、活動の円滑かつ確実な実施のため、それぞれの行政内部の関連部局と事前調整・連携を行った上で作成することが必要である。特に当該地方公共団体が権限者である特例を申請する場合は、該当する特例に係る根拠法律の担当への確認・同意を得た上で申請する。
第四に、各活動実施計画は、活動実施に伴って生じる課題や状況の変化に合わせ、目標に向けてより適切な活動へと見直していくことが重要である。そのため、活動の成果を把握するためのモニタリングを行うことが重要である。モニタリング結果等を踏まえ、各活動実施計画を点検・評価し、必要に応じて各活動実施計画の内容を見直すなど、順応的な管理を行うことで、目標に向かって、より適した活動の実施が可能となる。モニタリングの実施に当たっては、活動主体の実施体制に応じて、簡便なモニタリング手法など持続可能な手法で行うことも重要である。なお、各活動実施計画の変更や中止の際は、法第10条又は第12条に規定する手続が必要である。
二 増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の内容
増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画には、以下の事項を記載しなければならない。
1 活動の内容及び実施時期
・活動の内容及び実施時期については、活動ごとに、誰が、いつ、どこで、どのような活動を行うかを具体的に記載する。特に、複数の活動が行われる場合は、それぞれの活動の主体や役割分担が分かるように記載する。
・活動の内容を、設定した目標を起点として、生物多様性を増進するために今後必要となる活動を記載する。
・活動の成果を把握するためのモニタリングの方法や内容を記載する。
(法の特例を申請する場合)
・実施区域の自然環境の状況や図面等、各法律に基づく許可や届出等の際に必要とされる事項に準じたものを記載する必要がある。
(連携増進活動実施計画の場合)
・連携増進活動実施計画に、市町村と連携して連携地域生物多様性増進活動を行う者(以下「連携活動実施者」という。)の活動内容を記載する場合は、当該連携活動実施者の同意を得ること。
2 活動の区域
・実施区域は、具体的な活動を行う範囲のみとし、地理的に明確な範囲を設定する。
・周辺の状況や、地域の自然的社会的条件を踏まえて、可能な限り、生態系としてのまとまりに応じた実施区域を設定することが望ましい。
・広域な生態系ネットワークや多様な主体の連携の観点から必要がある場合は、複数の市町村にまたがる実施区域を設定することが望ましい。
3 活動の目標
・土地利用の変遷や周辺の状況、実施区域の生態系のタイプ、状態及び課題を踏まえて、生物多様性の増進に資する目標を設定する。
・目標を立てる際は、科学的知見も活用しながら、適切に目標を設定することが重要である。また、地域の生物多様性は、それぞれの地域の自然的社会的条件を背景として長い年月をかけて形づくられてきたものであり、地域の生物多様性が形づくられてきた背景を尊重するという視点に立ちつつ、目標を設定することが望ましい。
・各活動実施計画全体の大きな目標を設定した上で、任意で実施区域の特徴に応じて目標の追加や、より詳細な目標を設定することができる。
・目標は、定量的であることが望ましいが、実施区域の特徴に応じて、定性的な目標とすることも可能である。ただし、その場合においても、目標に向けた進捗状況を把握できるよう、測定可能な指標を検討することが重要である。
(生物多様性を維持する活動の場合)
・各活動実施計画の申請時点で実施区域が有している生物多様性の価値を維持し続けることが大きな目標となる。さらに、生物多様性の価値をより向上させていく目標も望ましい。
(生物多様性を回復又は創出する活動の場合)
・実施区域の特徴を踏まえて生物多様性の価値を有する場となるよう、生物多様性を回復又は創出することが大きな目標となる。
4 活動の実施体制
・活動をどのような体制で行うかを記載する。活動実施者だけではなく、土地の所有者等の関係者も含めた、活動に関する役割分担が分かるように記載する。
・実施体制については、活動が確実かつ継続的に実施できる体制である必要がある。
5 計画期間
・活動の内容や実施区域の生態系のタイプに応じて、目標を達成するために適切な計画期間を設定する。
・生物多様性の確保のためには活動の継続が重要であり、かつ、順応的な管理の視点も踏まえ、5年を目途に計画期間を定めることが望ましい。なお、長期安定的に活動を続けることができる体制が整っているなど活動を確実に遂行することができる場合は、より長期の計画期間を設定することが考えられる。特に、生物多様性維持協定を締結する場合は、長期の計画期間とすることが望ましい。
・土地の所有者等との間で貸借契約がなされている場合など土地の利用期間が決まっている場合は、活動の計画期間は、貸借契約(土地の所有者等の同意を得た上での更新・延長見込みも含む)と整合させるなど、齟齬が生じないようにする。
6 連携地域生物多様性増進活動の促進のために必要な事項(※連携増進活動実施計画のみ)
・連携増進活動実施計画を作成する場合は、連携地域生物多様性増進活動の促進のために必要な事項を記載する。
・市町村等が、連携活動実施者が行う連携地域生物多様性増進活動を有機的に連携させるために実施する取組の内容や、連携増進活動協議会の組織や地域生物多様性増進活動支援センターの設置を行った場合はそれに関する内容等を記載することが想定される。
・同計画には、複数の関係者が存在するため、その関係者間における情報共有の方法等の活動の促進に伴って必要となる事項を記載する。
三 特例措置に関する手続及び他法令・計画等との調整等
地域生物多様性増進活動及び連携地域生物多様性増進活動の円滑な実施を図るため、増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画に基づく活動については、自然公園法(昭和32年法律第161号)、自然環境保全法(昭和47年法律第85号)、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号)、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成14年法律第88号)、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成16年法律第78号)、森林法(昭和26年法律第249号)及び都市緑地法(昭和48年法律第72号)の許可や届出等の一部を不要とするといった特例が設けられている。例えば、国立公園等の保護地域等においては木竹の伐採や工作物の設置を行う場合の行為規制や届出義務が設けられているため、本来、これらの活動の際に各法律に従って個別に手続を取る必要があるが、法の特例を使うことで、各活動実施計画に含まれる許可等を要する行為について一括で審査等が処理されるため、別途自然公園法等に基づく手続を経ることが不要となる。
特例を申請する場合においては、通常の各活動実施計画の申請の際に要する申請書類のほかに、追加で特例に係る具体的な行為に関する書類を添付することが求められるため、別途定める取扱要領に従い、適切な書類を提出する。
また、特例の適用については、各個別法の法益の観点から、各種法令等で定められている許可基準等に則って判断されるため、特例を申請する区域、実施時期、内容等は適切に設定する。
各活動実施計画に基づく地域生物多様性増進活動又は連携地域生物多様性増進活動に、特例措置の対象となっていない法令の規制行為等が含まれる場合は、当該行為をしようとする者は、認定申請前までに、各法令の規定に基づく個別の許認可等の手続を開始しなければならない。また、特例措置の対象となる行為を行う地域生物多様性増進活動又は連携地域生物多様性増進活動について、特例が適用された場合であっても、各活動実施計画に記載した区域、実施時期、内容等と異なる行為を行った場合は、各個別法に基づく処分の対象となる可能性がある。
また、増進活動実施計画の認定を申請しようとする者(その市町村の区域内における増進活動実施計画を作成する市町村及び当該市町村と共同して増進活動実施計画を作成する者を除く。)が森林法の特例の適用を受けようとする場合は、増進活動実施計画の認定申請に際して、森林法に基づく地域森林計画の対象となっている民有林の区域における立木の伐採に係る事項が含まれる活動内容について、同法第10条の8第1項に規定する事項(森林の所在場所、伐採面積、伐採方法等)を記載した書類を添付する。この際、当該伐採に係る活動の実施期間については、市町村森林整備計画の期間を超えないよう適切に設定すること。なお、特例により、同項に規定する伐採及び伐採後の造林の届出書の提出は不要となるが、同条第2項に規定する伐採及び伐採後の造林の状況報告は必要となるため、留意すること。
四 増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の認定に関する基準
増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の認定に関する基準は、それぞれ法第9条及び第11条に規定されている。特に具体的な判断基準は次のとおりとする。(変更の認定も同様の基準である。)
1 法第9条第3項第1号(第11条第8項において準用する場合を含む。)に関する基準
基本方針に照らして適切なものであり、かつ、当該地域生物多様性増進活動又は当該連携地域生物多様性増進活動を確実に遂行するために適切なものであること。特に、以下の点が明確であること。
(1) 活動の区域
・活動を実施するために明確かつ適切な範囲が設定されていること。
(生物多様性を維持する活動の場合)
・実施区域の全部又は一部が次のいずれかの価値を有するものであると認められること。
① 豊かな生物多様性を育む場としての価値
② 希少な動植物の生息地又は生育地としての価値
③ 生態系の連結性その他の生物多様性に関する重要な機能としての価値
(2) 活動の実施体制
・実施体制は、当該活動が確実かつ継続的に実施できるものであると見込まれること。
(3) 計画期間
・目標を達成するために適切な計画期間が設定されていること。
(4) 連携地域生物多様性増進活動の促進のために必要な事項(※連携増進活動実施計画のみ)
・連携地域生物多様性増進活動の実施に当たり必要な関係者と連携するものであると見込まれること。
2 法第9条第3項第2号(第11条第8項において準用する場合を含む。)に関する基準
当該地域生物多様性増進活動又は当該連携地域生物多様性増進活動が各活動実施計画に記載する区域における生物の多様性の維持又は回復若しくは創出に資するものであること。特に、以下の点が明確であること。
(1) 活動の内容及び実施時期
・活動の内容が、実施区域の生物多様性の維持又は回復若しくは創出に相当程度寄与するものであると認められること。
・活動を実施するために適切な実施時期が設定されていること。
・活動が公物等の管理その他の法令に基づく取組との調和が保たれていること。
・特例を申請する場合には、その対象及び内容が明確であること。
・特例を申請する場合には、その内容が特例に係る各個別法の基準を満たすこと。
(2) 活動の目標
・土地利用の変遷、周辺地域の状況、実施区域の現況及び課題を踏まえ、具体的かつ生物多様性の増進への寄与の観点から適切で、実現可能な目標が設定されていること。
五 増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の認定後の手続
1 認定を受けた増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の実施状況についての報告
認定を受けた各活動実施計画については、その実施状況について、本基本方針第五の四のとおり、国が整備する活動状況等を「見える化」する仕組みにおいて共有することで、誰からも分かるようにすることが重要であり、認定を受けた者及び認定を受けた連携増進活動実施計画に基づく連携増進活動実施者は、定期的に情報共有を行うものとする。
特に、OECMとして国際データベースに登録した区域における活動については、活動の実施状況の情報共有により、地方公共団体・民間等による生物多様性の維持が図られている区域であり続けていることが確認することができ、透明性が確保される。
なお、法第34条の規定により、主務大臣は、認定を受けた各活動実施計画の実施状況について報告を求めることができ、報告が行われない又は虚偽の報告がなされた場合は、法第37条の規定による罰則が適用される。
2 認定を受けた増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画の変更等
各活動実施計画の認定を受けた後に、各活動実施計画に沿った活動を実施することが困難となった場合、土地の所有者等や公物等の管理者の同意が得られなくなった場合や各活動実施計画の変更を求められた場合等には、各活動実施計画の変更等の手続を取ること。
各活動実施計画の変更等の手続については、法第10条又は法第12条の規定による。
各活動実施計画の変更については、軽微な変更の場合は届出を、そうでない場合は変更の認定の申請をする必要がある。活動を中止した場合や認定を受けた各活動実施計画に従って行うことができなくなった場合は、認定を受けた者は、その旨を主務大臣に通知しなければならない。当該通知を受けた主務大臣は当該計画の認定を取り消す。軽微な変更を含め、各活動実施計画の変更の際も、土地の所有者等や公物等の管理者への事前の確認を行うことが重要である。
また、各活動実施計画が認定基準を満たさなくなった場合は、主務大臣は、当該認定を取り消すことができる。
第四 農林漁業に係る生産活動との調和その他の地域生物多様性増進活動の促進に際し配慮すべき事項
一 農林漁業に係る生産活動との調和
農林漁業は、地域の豊かな生物多様性を基盤として、生態系やそれを構成する様々な生物からの恵みを受けながら生産活動を行うものである。また、生物多様性と農林漁業は相互に密接に関わっており、生物多様性に配慮した持続的な農林漁業の営みにより、森林や農地等の適切な維持・管理等が行われ、地域の豊かな生物多様性が育まれる。農業の生産現場では、農村地域の水田や水路、ため池等の水辺環境等による有機的なネットワークを通じて、地域における多様な生態系が形成される。森林計画制度の下での森林の整備・保全は、人工林における持続的な林業生産活動も含めて、森林の有する多面的機能を総合的かつ高度に発揮させるものであり、面的な管理により生態系の連結性の確保につながる。漁業も自然の生態系に依存・立脚し、その一部である水産資源を採捕し、又は養殖することにより成り立っている産業である。
このため、農林漁業に由来する環境への負荷を低減し、生物多様性に配慮した持続的な農林漁業を行うことにより、農林漁業に係る生産活動と生物多様性の増進とを両立させ、相乗効果が発揮されるよう、良好な関わり合いを保つことが重要である。
実施区域内における農林漁業の実施に当たっては、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律(令和4年法律第37号。以下「みどりの食料システム法」という。)に基づき都道府県等が定める環境負荷低減事業活動の促進に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)と調和を図ることが重要である。あわせて、活動実施者が農林漁業者である場合は、法の認定と併せてみどりの食料システム法に基づく環境負荷低減事業活動実施計画の認定の取得を目指すことが推奨される。さらに、当該活動について、都道府県等が基本計画において定める特定区域において、集団又は相当規模で行われることにより地域における環境負荷の低減を図るものである場合は、みどりの食料システム法に基づく特定環境負荷低減事業実施計画の認定の取得を検討することが推奨される。
また、森林法に基づく地域森林計画の対象となっている民有林を実施区域に含む増進活動実施計画及び連携増進活動実施計画は、市町村森林整備計画に適合したものとするこ とが重要である。各活動実施計画が一体的なまとまりのある森林を対象としている場合は、資源を持続的に利用する等、森林の有する多面的機能を確保し、当該活動を円滑に実施する観点から、同法に基づく森林経営計画を併せて作成することが推奨される。
あわせて、活動の実施に当たっては、林野庁が策定した「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」(令和6年3月林野庁公表)も参考に取り組むことが望ましい。
実施区域に漁業が行われている区域を含む場合には、各活動実施計画の策定及び同計画に基づく活動の実施に当たって、生物多様性の保全と漁業の振興との調和を図ることが重要である。
実施区域に農林漁業が行われている区域が含まれる場合には、上記を踏まえ、関係者と十分な調整を行った上で、活動を行うことが重要である。このため、増進活動実施計画の作成に当たっては、区域に応じ、事前に当該農林漁業が行われている区域の地方公共団体や農業委員会等と相談し、農林漁業に関する土地利用調整との整合及び活動に必要となる他法令上の許認可の見込みを確認するよう努めるとともに、関連施策、特に農業経営基盤強化促進法(昭和55年法律第65号)第19条に基づき、地域の話合いにより地域農業の将来の在り方等を定めた地域計画等と調和を保つよう努める。
なお、実施区域内で環境負荷の低減に取り組んで生産された農産物等を販売する際には、「農産物の環境負荷低減に関する評価・表示ガイドライン」(令和6年3月農林水産省公表)に基づく等級ラベル表示など、環境負荷低減の取組に係る情報を伝達することにより、持続的な農林漁業と生物多様性の増進への国民の理解醸成を図ることが望ましい。
二 社会資本整備との調和
社会資本整備との関係で、地域生物多様性増進活動を実施するに当たっては、地球温暖化の防止を図るための施策、気候変動適応に関する施策、循環型社会の形成に関する施策、防災に関する施策、水循環に関する施策その他の関連する施策との連携を図って進めることが重要である。
実施区域が公物等の管理区域と重複する場合は、それらの公物等の管理者の確認や同意を得るなどして、また、特例以外で活動に必要な許認可がある場合は当該許認可を得て、相互に連携・調整を図ることで、地域生物多様性増進活動と社会資本整備との調和を図る。
具体的には、実施区域が、公物等の管理区域(河川区域、砂防関係区域、海岸保全区域、一般公共海岸区域、漁港区域、漁業権区域(共同漁業権、区画漁業権及び定置漁業権区域)、保護水面及び港湾関係区域(港湾区域、港湾隣接地域、臨港地区、港湾法(昭和25年法律第218号)第2条第6項の規定により国土交通大臣の認定した港湾施設の区域及び開発保全航路)、道路区域、都市公園区域、治山事業施行地等)と重複する場合には、公物等の管理者への事前の確認や同意を得ることが重要であり、特例以外で活動に必要な許認可がある場合は当該許認可の手続を行う必要がある。また、公物等の管理において、現行及び具体化した将来の整備計画等がある場合は、活動を確実に遂行することができない場合があると考えられることから、整備計画等の有無とその内容について公物等の管理者に確認する。さらに、整備計画等の変更があった場合には、必要に応じて各活動実施計画の変更等の手続をとる。公物等の管理者への確認や同意などを得ようとする場合には、各公物等の管理者の問合せ窓口や地方公共団体のWEBサイトに掲載されている管理者に関する情報等に従って該当の公物等の管理者へ連絡する。なお、実施区域が、公物等の管理区域や現行及び具体化した将来の整備計画等と重複している場合は、公物等の管理者からの確認や同意などの際に、公共施設の管理等に当たって必要な対応を求められる場合があることに留意する。
三 自然環境の保全に関する方針との調和及び気候変動対策との調和
自然公園法等により規定されている保護地域や世界遺産条約やラムサール条約等に基づく自然環境の保全上重要な地域における地域生物多様性増進活動の実施に当たっては、相乗効果を更に高めるため、当該地域における保全の方針・計画等との調和を図ることが重要である。また、各活動実施計画を作成する際には、各地域を管轄する地方環境事務所等の関係者と事前に相談を行うことが望ましい。
また、生物多様性を回復・創出する活動の場合、自然再生推進法(平成14年法律第148号)との連携が重要である。自然再生の取組には、広範囲かつ多様な主体で連携して行うことが効果的なものと、地域住民等が主体となり身近な自然を再生する「小さな自然再生」があり、併せて全国各地で展開されることにより、広域的な生物多様性の増進につながることが期待できる。前者については、多様な主体の参加・連携により、科学的根拠に基づき、長期的な視点で順応的に取り組むことが重要であるため、自然再生推進法に基づく自然再生協議会を設立し、自然再生全体構想及び自然再生事業実施計画を踏まえて取り組むことが望ましい。一方で、「小さな自然再生」は、小規模だが誰でも始められるものであり、全国各地に活動が広がっていくことが望ましい。このため、「小さな自然再生」を含む各活動実施計画が、生物多様性を回復・創出する活動として法に基づく認定を受けることで、更なる取組の促進につながると期待できる。
地域生物多様性増進活動は、気候変動対策とも密接に関係しており、森林や沿岸生態系を始めとする自然生態系の気候変動緩和策(吸収源対策)や遊水地等による雨水貯留・浸透機能の確保など気候変動適応策とのシナジーがある活動の促進を図ることが重要である。一方、気候変動緩和策としての再生可能エネルギーに関する設備の設置や気候変動適応策としての人工構造物の設置等は、適切なゾーニングの設定やトレードオフの回避・最小化が必要な側面もあるため、生物多様性の保全と気候変動対策が両立するよう、互いに調和を図ることが重要である。
第五 地域生物多様性増進活動の促進に関する重要事項
一 生物多様性維持協定
連携増進活動実施計画を作成して認定を受けた市町村は、長期安定的な連携地域生物多様性増進活動の実施のために、当該計画において連携して活動を行っている者、当該計画の実施区域(海域を除き、生物の多様性が維持されている区域に限る。)内の土地又は木竹の所有者又は使用及び収益を目的とする権利(臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。)を有する者(本基本方針において「土地の所有者等」と総称する。)と生物多様性維持協定を締結することができる。
協定の締結に当たっては、協定区域内の土地の所有者等の全員の合意を得なければならない。また、協定を締結した後に土地の所有者等となった者に対しても効力が発生するため、協定締結の際には、協定の内容について関係者と十分に調整を行う必要がある。
協定を締結することで、土地の所有者等との関係上、その協定の期間内は継続的な活動が担保されるため、より長期的な視点での積極的な活動が可能となり、より効果的な生物多様性の維持につながる。
二 連携増進活動協議会
連携増進活動協議会は、連携増進活動実施計画を作成しようとする市町村、連携増進活動実施計画に記載しようとする連携活動実施者、地域生物多様性増進活動支援センター、関係住民、学識経験者、関係行政機関その他の市町村が必要と認める者で構成される。連携増進活動協議会を組織しようとする際に、特に、専門的な知識を有する者や地域の関係住民、NPO・NGO等、活動の実施区域の土地の所有者等、関係行政機関等の参画を求めることで、科学的知見に基づく活動の実施や活動の円滑な実施へつながる。なお、協議会を新たに設立することは一般的に多大な労力を要する場合が多いことから、地域の負担を軽減するためにも、既存の協議会や枠組みを連携増進活動協議会として活用することも望ましい。
連携増進活動協議会では、連携増進活動実施計画の作成に関する協議や、連携増進活動実施計画の実施に係る連絡調整を行うことが想定され、当該協議会の構成員は、当該協議会における協議の結果を尊重しなければならない。
また、連携増進活動協議会は、組織の構成や会議の開催方法等必要な事項を規約等に定めた上、活動の実施状況の変化等に応じて、柔軟に対応できる運営方法を定めることが重要である。連携増進活動協議会の公正性・透明性を確保するため、希少な野生動植物の保護や個人情報の保護等の観点から問題のある場合を除き、会議や用いる資料を公開することが望ましい。
三 地域生物多様性増進活動支援センター
地域生物多様性増進活動支援センターは、地方公共団体が単独で又は共同して設置することができる、関係者間における連携や協力のあっせん、必要な情報の収集、整理、分析及び提供並びに助言を行う拠点である。
具体的には、活動を行おうとする者等からの相談に応じて、地域の生物多様性に専門性を有する大学や研究機関の研究者、類似した活動を実施している者等の紹介や、活動が行われることを希望する土地の所有者等や活動に対して協力をしようとする企業等とのマッチング、地域における動植物の生息データや活動事例等の情報の収集、整理、分析及び提供を実施する。また、活動の円滑な実施のため、地域住民から活動に対する理解を深めるための方法、地方公共団体が実施する生物多様性に関する施策との連携等に関する助言を行う。
地域生物多様性増進活動支援センターとしての機能を担う体制は、関係者間の連携・協力のあっせんを行っているNPO・NGO等との連携や既存の組織に地域生物多様性増進活動支援センターとしての機能も付加するなど、既存の組織を活用することも可能である。
四 生物多様性の見える化
地方公共団体・民間等による活動等が適切に評価されることや、地方公共団体・民間等による活動に対して人的・資金的な支援等が集まるためにも、活動の継続性や活動の効果を「見える化」することも重要である。そのため、国は、認定された地方公共団体・民間等による活動状況を一元的に把握できる機能も具備した、保全活動の把握から保全活動効果の評価までの取組を「見える化」できる仕組みを構築する。なお、モニタリングデータが蓄積されていくことによって、地方公共団体・民間等による個々の活動場所が、モニタリングスポットとしての機能を有することも期待できる。
また、我が国全体でどのような場所の保全が効果的かを示し、国及び地方公共団体がその場所の重要性を認識し、保全活動が行われるよう促進していくためにも、生物多様性の現状や、保全のニーズがある場所、保全上効果的な場所や生態系の回復が必要な場所を見える化し、生態系の質的な変化を含めて評価・把握する手法の構築を図る。
五 地域生物多様性増進活動の更なる促進のための仕組み
1 活動への資金等の支援
地域生物多様性増進活動の更なる促進のためには、より多くの民間資金や人的資源が、生物多様性の増進のための活動の質の維持・向上に活用されることが重要である。国においては、自らが土地を有しない場合においてもネイチャーポジティブに貢献できる仕組みの一つとして、活動への支援を行ったことを証明できる制度を構築する。その際に、TNFDへの対応等に活用できるよう設計し、活動への支援が評価される制度とすることで、人的・資金的支援の強化が期待される。さらに、企業版ふるさと納税の活用や、自然環境の保全を目的としたものだけでなく、土地利用・管理や地域活動の促進等に関連する関係省庁や地方公共団体の公的資金も活用できるようよる連携を強化する。
2 活動への助言・伴走支援
また、地域生物多様性増進活動を継続し質を担保するに当たっては、国、地方公共団体、専門家等による助言・伴走支援や、各活動主体による個別の取組を連携させ、生態系ネットワークの形成や人的なネットワークを通じたノウハウの共有等を進めることが重要である。その際に、本基本方針第五の三のとおり地域生物多様性増進活動支援センターに加えて、NPO・NGO等の民間による中間支援を担う組織との連携も効果的である。
国においては、活動実施者等が適切な環境調査やモニタリング等を行うための助言を受けることができるように、活動実施者等と専門家等を仲介するマッチング制度を構築する。
なお、市町村が中心となって活動を実施する際、様々な関係者との調整や連携増進活動実施計画の立案・実施が必要であるが、国や都道府県、地域生物多様性増進活動支援センター、専門家、NPO・NGO等による助言・伴走支援はこれらに有効であることから、市町村も積極的にその仕組みを活用することが望ましい。
3 普及啓発・人材育成
全国各地に活動を広げ、国民運動として一人一人の参画を促していくためにも、地方公共団体、地域住民、消費者、企業、NPO・NGO等の多様な主体に対して法の認知や理解の向上を図ることが重要である。そのため、国は、WEBでの発信や既存イベントでの発信、セミナー等の広報活動のほか、関係者間の連携・協力のあっせんを担う地域生物多様性増進活動支援センターやNPO・NGO等の民間による中間支援組織とも連携して、法の内容や認定された各活動実施計画の周知を図ることに努める。加えて、日本における取組が国際的にも理解・評価されるよう、国は、制度の概要や特徴、具体的な活動等について海外に向けて積極的に発信し、理解促進に努める。なお、地域において国際交流等がある場合には、地域からも地域生物多様性増進活動に関する積極的な発信が期待される。
また、活動実施者及び活動を支援する者を増やしていくためにも、人材育成が重要である。そのため、国は、地域生物多様性増進活動支援センターやNPO・NGO等の民間による中間支援組織、研究・教育機関等とも連携し、また、環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律(平成15年法律第130号)の基本理念を踏まえつつ、活動実施者及び活動を支援する者の人材育成を推進するよう努める。
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