その他令和6年9月18日

公安調査庁長官によるアレフに対する観察処分に関する報告書の不報告認定等について

号外p.5 - p.9

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公告概要

無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律第8条に基づく再発防止処分

発行機関公安調査庁

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公安調査庁長官によるアレフに対する観察処分に関する報告書の不報告認定等について

令和6年9月18日|p.5-9

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(6) 被請求団体の資産及び負債のうち政令で定めるもの(法第5条第3項第4号)の不報告
ア 預貯金についての不報告
被請求団体は、令和3年2月14日付け第85回「報告書」までは、「6 Alephの資産及び負債」、「①Alephの資産」、「②預貯金 Alephが所有する預貯金は以下のとおりである。」などとして、⑦ゆうちょ銀行に開設された「上田竜也」名義の通常貯金口座、⑧みずほ銀行日本橋支店に開設された「ALP 上田竜也」名義の普通預金口座、⑨三菱UFJ銀行日本橋支店に開設された「ALP 上田竜也」名義の普通預金口座、⑩新生銀行本店に開設された「上田竜也」名義の普通預金口座、⑪三菱UFJ銀行新宿中央支店に開設された「上田竜也」名義の普通預金口座、⑫埼玉りそな銀行越谷支店に開設された「アーレフ 上田竜也」名義の普通預金口座、⑬みずほ銀行草加支店に開設された「上田竜也」名義の普通預金口座、⑭三菱UFJ銀行草加支店に開設された「田端三園」名義の普通預金口座、⑮同銀行千住中央支店に開設された「FPA 上田竜也」名義の普通預金口座及び⑯みずほ銀行千住支店に開設された「FPA 上田竜也」名義の普通預金口座の合計10の口座(以下「本件10口座」という。)に係る預貯金について、預貯金の種類、金融機関名、残高及び口座名義人の氏名又は名称(以下「預貯金の種類等」と総称する。無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律施行令(平成11年政令第403号)第2条第1号ホ。)を記載していたが、令和3年11月11日付け第86回「報告書」及び同日付け第87回「報告書」においては、本件10口座のうち上記⑦、⑭及び⑯に係る預貯金の種類等のみを記載し、同月14日付け第88回「報告書」以降に提出された「報告書」においては、本件各報告書を含め、本件10口座に係る預貯金の種類等を記載していない。
しかし、①本件10口座に係る預貯金については、上記のとおり、「Alephの資産」、「Alephが所有する預貯金」として報告されていたこと、②令和6年6月に実施された北越谷施設に対する立入検査において、本件10口座のうち上記⑰を除く9口座に係る通帳及び本件10口座に係るキャッシュカードが保管されているのが確認されたこと、③本件10口座の口座名義人とされる「上田竜也」及び「田端三園」の両名はいずれも、本件各報告書において、被請求団体の経理担当者であり、かつ、出家構成員である旨記載されており、被請求団体においては、前記(5)イ(ウ)のとおり、出家構成員による資産所有が禁じられていることなどの事実関係に照らせば、本件報告対象期間中も、本件10口座に係る預貯金は、被請求団体の資産であったと認められる。
したがって、被請求団体は、報告すべき本件10口座に係る預貯金の種類等を報告しなかったと認められる。
イ ○ないし④の各収益事業に係る資産の不報告
被請求団体は、第73回報告書までは、「出家会員が会員を対象として営む事業体」として、①を記載するなどした上で、「6 団体の資産及び負債」、「[3]その他」、「①現金 出家会員が会員を対象として営む事業体の所有する現金の現在額は以下のとおりである。」などとして、現金額を記載するとともに、「預貯金 出家会員が会員を対象として営む事業体の所有する預貯金は以下のとおりである。」などとして、三菱東京UFJ銀行京都中央支店に開設された「VBシステム ニノ宮耕一」名義の普通預金口座について預貯金の種類等を記載していたが、本件各報告書にはこれらを記載していない。また、被請求団体は、第80回報告書までは、「出家会員が会員を対象として営む事業体」として、○ないし④の各収益事業(これらの前身を含む。)を記載するなどした上で、「6 団体の資産及び負債」、「[3]その他」、「①現金 出家会員が会員を対象として営む事業体の所有する現金の現在額は以下のとおりである。」などとして、現金額を記載するとともに、「②預貯金 出家会員が会員を対象として営む事業体の所有する預貯金は以下のとおりである。」などとして、複数の預貯金口座について預貯金の種類等を記載していたが、本件各報告書にはこれらを記載していない。
しかし、前記(5)イ記載のとおり、被請求団体は、本件報告対象期間中も継続して、○ないし④の各収益事業を営んでいたと認められる以上、○ないし④の各収益事業に係る資産は、被請求団体が実質的に管理・利用できるものであるから、被請求団体の資産として要報告事項に該当すると認められる(このことは、被請求団体自身が、④については第73回報告書まで、○ないし⑥については第80回報告書まで、継続的に各収益事業に係る現預貯金を報告し続けており、かつ、証拠上、④については第73回報告書提出以降、○ないし⑥については第80回報告書提出以降、各収益事業に係る資産の管理状況等に変化が生じたというような事情がうかがわれないことからも、裏付けられている。)。
そして、①被請求団体の活動の用に供されている各施設に対する立入検査において確認された○ないし④の各収益事業に係る出納記録上、○ないし④の各収益事業名義の資産総額が令和5年10月末時点で少なくとも約7億7000万円、令和6年1月末時点で少なくとも約7億円に上ると認められること、②少なくとも○ないし④の各収益事業については、本件報告対象期間中の出納記録が確認されていること、③上記「VBシステム ニノ宮耕一」名義の普通預金口座について、同期間中に入金があったことが確認されていることなどの事実関係に照らせば、同期間中、○ないし④の各収益事業に係る資産が皆無であったなどとは到底考えられず、○ないし④の各収益事業に係る現金及び預貯金等の資産が存在していたことは明らかといえる。
したがって、被請求団体は、報告すべき○ないし④の各収益事業に係る資産について報告しなかったと認められる。
(7) 小括
以上のとおり、被請求団体は、本件各報告において、①20歳未満の構成員の氏名及び住所、②一部在家構成員の氏名及び住所並びに③出家構成員の位階を報告せず(前記(2)及び(3))、④水口施設、⑤甲賀信楽施設及び⑥北越谷施設の一部の所在、地積(規模)及び用途を報告せず(前記(4))、⑦○ないし④の各収益事業の種類及び概要等、⑧本件10口座に係る預貯金の種類等並びに⑨○ないし④の各収益事業に係る資産を報告しなかった(前記(5)及び(6))と認められる(以下、これらの不報告を「本件一部不報告」と総称する。)。
3 被請求団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難であると認められること
(1) 法第8条第1項柱書き後段は、観察処分を受けている団体について、法第5条第3項の規定による報告がされなかったなどの場合であって、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難であると認められるときに、無差別大量殺人行為の再発を防止するため、当該団体の一定の活動を一時的に停止させる処分を行うことができることとしたものと解される。
そして、上記の「無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難である」とは、観察処分を受けている団体について、無差別大量殺人行為という観点から見た場合における危険な要素(人的要素、物的要素、資金的要素)の質的・量的程度を把握することが困難であることをいうものと解される(以下、「無差別大量殺人行為という観点から見た場合における危険な要素」を単に「危険な要素」という。)。
そして、危険な要素の質的・量的程度の把握が困難になっているか否かは、⑦不報告部分の具体的内容のほか、①不報告の程度(期間の長短、範囲の広狭など)、②「報告書」の他の記載事項や過去の「報告書」の記載事項に基づく把握可能性の有無、③任意調査及び立入検査による把握の可能性・容易性・迅速性などの事情を総合考慮して判断すべきと解される。
(2) ⑦不報告部分の具体的内容について
ア 法は、人的要素に係る危険な要素の質的・量的程度の把握のため、団体の構成員の氏名及び住所の報告を義務付け(法第5条第2項第1号及び第3項第1号)、物的要素に係る危険な要素の質的・量的程度の把握のため、団体の活動の用に供されている土地又は建物の所在、地積(規模)及び用途の報告を義務付け(同条第2項第2号及び第3号並びに第3項第2号及び第3号)、資金的要素に係る危険な要素の質的・量的程度の把握のため、団体の資産及び負債の報告を義務付けた(同条第2項第4号及び第3項第4号)ものと解される。
また、当委員会は、第7回期間更新決定及び第8回期間更新決定において、同条第3項第6号に基づき、本件観察処分対象団体について、人的要素に係る危険な要素の質的・量的程度の把握のため、出家構成員の位階の報告を義務付け、資金的要素に係る危険な要素の質的・量的程度の把握のため、本件観察処分対象団体の営む収益事業の種類及び概要等の報告を義務付けたものである。
そして、以下のとおり、本件一部不報告の具体的内容は、危険な要素(人的要素、物的要素、資金的要素)の質的・量的程度の把握を困難にするものと認められる。
イ すなわち、人的要素に係る危険な要素の質的・量的程度を把握するには、団体の財産的基盤を支え、かつ、団体の活動の主体となる構成員の全容を把握することが重要である。とりわけ、当該団体の構成員の中に無差別大量殺人行為に関連する属性を有している者がいる場合には無差別大量殺人行為に及ぶ危険に直結するから、そのような者がいるかどうかを把握する必要性が大きい。そして、そのためには、当該団体の全構成員を特定する必要があるが、20歳未満の構成員及び一部在家構成員の氏名及び住所の不報告により、全構成員を特定することができず、構成員の全容を把握することができないばかりか、未特定の構成員の中に、無差別大量殺人行為に関連する属性を有している者が存在するのか否かを把握することが困難になっている。
また、被請求団体は、位階制度による上命下服の組織体制を有していると認められるため、人的要素に係る危険な要素の質的・量的程度を把握するためには、全出家構成員の位階を特定してその構成を把握した上で、被請求団体の組織としての方向性を決定付け得る位階上位者がどの程度存在し、更にその中に、無差別大量殺人行為に関連する属性を有している者がどの程度存在するのかなどを把握する必要があるが、出家構成員の位階の不報告により、かかる把握が困難になっている。
ウ 次に、物的要素に係る危険な要素の質的・量的程度を把握するためには、当該団体の活動の用に供されている土地及び建物について、それらが例えば武器等の保管や製造に用いられるなど、無差別大量殺人行為に関連する用途に使われ、あるいは、使われようとしている状況がないかどうか等を把握する必要があるが、水口施設、甲賀信楽施設及び北越谷施設の一部の所在、地積(規模)及び用途の不報告により、かかる把握が困難になっている。
エ さらに、資金的要素に係る危険な要素の質的・量的程度を把握するためには、例えば武器の購入代金や毒物製造施設の建設等、無差別大量殺人行為に関連を有する事項に投資可能な現金や預貯金の総額を把握する必要があるほか、武器購入等の取引などに使用可能な預貯金口座の有無・口数を把握する必要がある。
また、被請求団体においては、複数の法人等を用いて収益事業を行うことで資産を形成している実態があるため、被請求団体がこれらの収益事業を利用して無差別大量殺人行為に関連する活動を行っていないかどうかといった点や、これらの収益事業に係る資産から無差別大量殺人行為に関連を有する事項にどの程度の資金を投入することが可能かといった点などを把握する観点から、これら収益事業の事業内容や資産状況等を把握する必要がある。
ところが、被請求団体が本件10口座に係る預貯金の種類等を報告せず、また、○ないし④の各収益事業の種類及び概要等やこれらに係る資産の不報告により、これらの把握が困難になっている。
オ このように、本件一部不報告の具体的内容は、人的要素、物的要素及び資金的要素に係る危険な要素の質的・量的程度の把握を困難にするものである。
(3) ⑦不報告の程度(期間の長短、範囲の広狭など)について
ア 本件一部不報告期間だけでも約6か月間という長期間に及ぶ上、被請求団体は、水口施設及び甲賀信楽施設については、これらの施設を住所とする出家構成員を継続的に有していながら、前者については平成20年11月15日付け第36回「報告書」以降、後者については平成28年5月14日付け第66回「報告書」以降、本件一部不報告に至るまで不報告を続けていた。
また、○ないし④の各収益事業の種類及び概要等やこれらに係る資産について見ると、実際には従前と同様、これらの収益事業を営み、これらに係る資産を有していたと認められるにもかかわらず、④については平成30年5月14日付け第74回「報告書」以降、○ないし③の各収益事業については令和2年2月15日付け第81回「報告書」(以下「第81回報告書」という。)以降、不報告を続けるなどしていたものであり、その不報告の期間は長期にわたっている。
イ さらに、被請求団体が提出した平成28年11月13日付け第68回「報告書」によれば、同年10月末時点では、被請求団体の全資産に占める収益事業に係る資産の割合が約13パーセント、それ以外の資産の割合が約87パーセントであったものが、被請求団体が2月報告書に「人格のない社団Alephの構成員全員の総有に属する現金の現在額」として記載した金額及び各施設に対する立入検査により確認された収益事業に係る資産を前提とすれば、令和6年1月末時点では、被請求団体の全資産に占める収益事業に係る資産の割合が約99パーセント、それ以外の資産の割合が約1パーセントとなっていることが認められる。これらの事情に照らせば、○ないし④の各収益事業に係る資産は被請求団体全体の資産のうち主要部分を占めるものと考えられる。
したがって、○ないし④の各収益事業の種類及び概要等やこれらに係る資産の不報告は、被請求団体の有する資産量や資産形成過程の主要部分を明らかにしないものであって、被請求団体の資金的要素に係る不報告の範囲は非常に広いといえ、また、被請求団体による不報告が長期にわたっていることも相まって、被請求団体の資産の全体像や被請求団体内部の資金の動きについての把握が困難になっているということができる。
(4) ⑦「報告書」の他の記載事項や過去の「報告書」の記載事項に基づく把握可能性の有無について
本件一部不報告に係る要報告事項については、基本的に本件各報告書の他の記載事項や過去の「報告書」の記載事項に基づきこれらを把握することは困難と考えられる。特に収益事業に関する事項については、前記2(5)イ(ウ)記載のとおり、④を除く各収益事業の本店所在地は本件各報告書の他の記載事項から把握可能であるものの、それ以外の収益事業の種類及び概要等を他の記載事項から把握することは困難であるし、収益事業について被請求団体から最後に「報告書」の提出があったのは、④については平成30年2月、○ないし③については令和元年11月であり、現在までに相当長期間のブランクが生じていることからすれば、過去の「報告書」の記載事項から、現在の各収益事業の種類及び概要等やこれらに係る資産を把握し、現在の資金的要素に係る危険な要素の質的・量的程度を推し量ることも困難である。
以上のとおり、特に各収益事業の種類及び概要等やこれらに係る資産を中心に要報告事項を「報告書」の記載事項等から把握することが困難である。
(5) ⑤任意調査及び立入検査による把握の可能性・容易性・迅速性について
ア 観察処分に付された団体の活動状況を明らかにするための方策としては、「報告書」による把握のほか、いわゆる任意調査(法第7条第1項)及び立入検査(同条第2項)がある。
もっとも、法は、本来、当該団体から法第5条第2項又は第3項の規定による報告がされ、その報告の内容により要報告事項を容易かつ迅速に把握することができることを前提にした上で、同報告により示される当該団体の活動状況を基に、その裏付けをとったり、これを端緒として更にその活動状況を明らかにしたりするための方策として、任意調査及び立入検査
の規定を置いていると解される。そうである以上、法の定める報告がされないために、本来は同報告によって容易かつ迅速に把握できるはずの要報告事項を把握できないという状態それ自体が、基本的に、法第8条第1項柱書き後段の規定する「無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難」な状態に当たるというべきである。
この点、被請求団体においては、構成員に対し、任意調査の拒否や立入検査における非協力的態度を奨励、指導している状況が見受けられる上、実際の立入検査においても、立ち会った構成員が公安調査官の質問に答えないなどの非協力的態度を取る事案が複数の施設において多発している。また、各施設に設置されたパソコン内にファイル消去ソフトウェアがインストールされていたことにより、パソコン内データの確認が十分に行えない事案も多発していると認められる。さらに、被請求団体においては、構成員に対して立入検査時に物件を隠匿するよう指示する書面が確認され、過去には実際に検査忌避(法第39条)事件が発生するなど、任意調査及び立入検査に対する被請求団体の非協力的態度は明らかといえる。
このような被請求団体の非協力的態度からすれば、被請求団体があえて不報告としている事項について、任意調査や立入検査に協力するなどということはおおよそ考えられず、これらによって、危険な要素の質的・量的程度の把握に必要有益な情報を迅速に入手することは困難といわざるを得ない。
イ さらに、本件一部不報告に係る要報告事項を具体的に見ても、以下のとおり、任意調査及び立入検査による把握は困難である。
(ア) 20歳未満の構成員及び一部在家構成員の氏名及び住所並びに出家構成員の位階を任意調査により把握するためには、被請求団体の構成員や出家構成員の位階をある程度網羅的に把握している人物らを特定し、当該人物らと面談して情報を入手する方法や、被請求団体の活動の用に供されている各施設への人の出入りを継続的に確認するとともにこれらの者に面談を行い、その人定や被請求団体における立場等を確認する方法が考えられるが、前者については、そもそもそのような人物を特定することが容易でないと考えられるし、後者についても、長時間にわたり、膨大な人手を要する方法であって、これにより20歳未満の構成員等を継続的に把握することが現実的でないことは明らかである。
また、20歳未満の構成員及び一部在家構成員の氏名及び住所並びに出家構成員の位階を立入検査により把握するためには、これらが記載された名簿類を確認する方法等が考えられるが、そのような名簿類がどこにどのような形で保管されているのかを把握できていなければ、そもそも発見すること自体容易ではないと考えられる上、これまでの立入検査で発見できた名簿類も、前記2(2)ア記載の名簿データのほかは、未記入のものや、イニシャル等のみが記入されたものであって、直ちに個人の特定につながらないものにとどまっており、結局、立入検査による把握の方法も困難である。
(イ) 次に、水口施設、甲賀信楽施設及び北越谷施設の一部について、その所在、地積(規模)及び用途を任意調査及び立入検査により把握する方法としては、実際にこれらの施設への立入検査を実施し、その現況を確認することが最も簡便かつ効果的ではある。
しかし、被請求団体が各施設の用途を変更することは容易であり、現にそれがされてきた事実が認められ、今後も、被請求団体が短期間のうちに用途変更を実行することが十分に考えられる。そのため、報告されていない施設の用途変更について、これを立入検査によって逐次把握することは容易ではない。
(ウ) また、資金的要素に関しても、本件10口座については、その預貯金の情報が判明済みであるから、金融機関への照会によりその預貯金の種類等を把握することは必ずしも困難ではないと考えられるが、以下のとおり、①ないし④の各収益事業の種類及び概要等やこれらに係る資産を把握することは困難である。
すなわち、収益事業に関しては、法人である①ないし④について商業登記関係書類を入手することで登記事項を確認することはできても、それだけではその実態把握には不十分である。
しかも、これまでに立入検査を実施しても収益事業に係る出納記録が発見できないこともあったと認められる上、発見できた出納記録上の現金残高と実際に確認された現金額が合致しないという事態も発生していることなどからすれば、立入検査により、収益事業に係る保有現金を網羅的に確認することや、資産状況などを正確に反映した帳簿関係書類等を確認することは困難である。
また、任意調査として、各収益事業の代表者や経理担当者等を特定の上、面談を実施し、各収益事業の事業内容や収支状況等についての供述を得るという方法も考えられるが、前記アのとおり、ただでさえ任意調査等に対し、被請求団体が非協力的態度を示している状況の下、被請求団体が本件各報告においてその一切を報告していない収益事業に関する事項について、各収益事業の代表者等の重要な地位にある者が、公安調査官による質問に応じて積極的に供述をするということは想定し難い。
ウ 以上、検討したように、本件一部不報告に係る要報告事項について、これらを任意調査及び立入検査により把握することは困難であると認められる。
(6) 本件収益事業書面による危険な要素の質的・量的程度の把握の困難性解消の有無について
被請求団体は、5月報告書の「5 当該期間中における人格のない社団Alephの活動に関する事項」の「(1) 人格のない社団Alephがした人格のない社団Alephの活動に関する意思決定の内容」に「追記して任意に報告する。」などとして、「公安調査庁が人格のない社団Alephと一体であると見なしていると思料される、人格のない社団Alephの取引先の法人等の10事業者」のうち「VBシステム以外の9事業者においては」、「①当該事業者に係る「事業の種類及び概要、事業所の名称及びその所在地、当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所」、②当該事業者に係る「現金の現在額」、「預貯金の種類、金融機関名、残高及び口座名義人の氏名又は名称」及び「貸付金」等」を記載した文書を作成し、「当該文書を公安調査官の調査に供する用意を継続していることを確認した。」などと記載している(2月報告書にも同旨の記載をしている。)。
そして、本件報告対象期間の始期である令和5年11月1日以降に実施された各施設に対する立入検査において、令和6年1月末日時点及び同年4月末日時点の①ないし④の各収益事業の概要等が記載された書面(以下「本件収益事業書面」という。)が一部確認されている。
もっとも、法が予定している観察処分の枠組みは、報告内容に虚偽があれば再発防止処分となり得るという制度的担保の下、3か月ごとに、容易かつ迅速に要報告事項を把握することができることを前提として、任意調査等でそれを確認するというものであり、本件収益事業書面は、被請求団体の責任において報告されたものではなく、内容の正確性について、上記のような制度的担保なくされたものにすぎないといえる。また、被請求団体は、第81回報告書以降、本件各報告書を含め、①ないし④の各収益事業の種類及び概要等並びに同収益事業に係る資産を報告しておらず、これによって、これら要報告事項について、3か月ごとの容易かつ迅速な把握及びそれを前提とした任意調査等による確認ができず、危険な要素の質的・量的程度について正確な把握ができなかったと認められ、このことは、本件収益事業書面が確認されたことによってでも解消されるものではない。
以上によれば、本件収益事業書面が確認されたことをもって、危険な要素の質的・量的程度の把握の困難性が解消されたとは認められない。
(7) 小括
以上のとおり、⑦本件一部不報告の具体的内容は、人的要素、物的要素及び資金的要素に係る危険な要素の質的・量的程度の把握を困難にするものであることに加え、⑦本件一部不報告は、長期間かつ広範囲にわたるものであってその程度が重いこと、⑦特に収益事業に関する事
4 証拠
以上の認定は、別添3「証拠書類等一覧表(公安調査庁提出)」記載の証拠書類等に基づき行っ た。
第5 被請求団体に対する再発防止処分
1 前記第4のとおり、法第5条第4項の処分(期間を更新された観察処分)を受けている団体で ある被請求団体について、同条第5項において準用する同条第3項の規定による報告がされず、 かつ、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難であると認められるから、 法第8条第1項柱書き後段の規定により、当委員会は、被請求団体に対し、6月を超えない期間 を定めて、同条第2項に掲げる処分の全部又は一部を行うことができる。
2 公安調査庁長官は、上記処分として、被請求団体に対し、①6月間、別紙物件目録記載1ない し16の土地、建物の使用を禁止する処分(法第8条第2項第2号)と、②6月間、金品その他の 財産上の利益の贈与を受けることを禁止する処分(同項第5号)を行うことを求めている。
(1) 被請求団体に対する従前の再発防止処分について
当委員会は、公安調査庁長官から、令和5年1月30日、同年7月14日及び令和6年2月1日、 被請求団体に対する再発防止処分をするよう求める旨の請求を受け、令和5年3月13日、同年 9月4日及び令和6年3月11日、法第8条第1項柱書き後段の規定に基づき、それぞれ、被請 求団体に対し、6月間、その所有又は管理する土地、建物の使用を禁止し、金品その他の財産 上の利益の贈与を受けることを禁止する旨を決定した(以下、令和5年3月13日の決定を「令 和5年3月決定」、同年9月4日の決定を「令和5年9月決定」、令和6年3月11日の決定を「令 和6年3月決定」という。)。令和5年3月決定は、同月20日に官報で公示され、その効力を生 じ、令和5年9月決定は、同月19日に官報で公示され、その効力を生じ、令和6年3月決定は、 同月19日に官報で公示され、その効力を生じた。
(2) 前記①(6月間、別紙物件目録記載1ないし16の土地、建物の使用を禁止する処分(法第8 条第2項第2号)を行うこと)について
ア ⊖ないし⊕の各収益事業の事業内容は前記第4の2(5)イ(エ)のとおりであるが、前掲証拠に よれば、別紙物件目録記載1ないし14及び16の土地、建物は、それらの事業のための施設(「道 場」及びその附帯施設、事業所たる作業場等所)として供されており、被請求団体が所有し 又は管理していると認められる。そうであるところ、⊖ないし⊕の各収益事業の種類及び概 要等やこれらに係る資産が報告されないことにより、資金的要素に係る危険な要素の質的・ 量的程度の把握が困難となっている。これらの施設の使用を禁止しなければ、⊖ないし⊕の 各収益事業に係る事業活動及び資産の変化を止めることができず、資金的要素に係る危険な 要素の質的・量的増大を防止することができない。また、20歳未満の構成員及び一部在家構 成員の氏名等の不報告により、未特定の構成員の中に、無差別大量殺人行為に関連する属性 を有している者が存在するか否かを把握することが困難となっており、これらの施設の使用 を禁止することは、このような属性を有している者が施設に参集するなどといった人的要素 に係る危険な要素の質的・量的増大を防止するためにも必要である。これらによれば、資金 的及び人的要素に係る危険な要素の質的・量的増大を防止して無差別大量殺人行為の再発を 防止するため、6月間、これらの土地、建物の使用を禁止する処分を行うことは相当である と認められる。
そして、従前の再発防止処分による土地、建物の使用禁止の効力が生じ、その期間が通算 1年6月に達しようとしている状況下において、今後、被請求団体が、不動産賃貸業等を目 的とする㉖又は㉗の各収益事業の名において、使用禁止とされている土地、建物に代替する
土地や建物を新規に取得して被請求団体の活動の用に供することとなれば、危険な要素の質 的・量的増大を防止して無差別大量殺人行為の再発を防止するという再発防止処分の目的を 達することが困難となる。そうすると、不動産賃貸業等を目的とする㉖及び㉗の各収益事業 の用に供されている施設、すなわち、別紙物件目録記載7の建物(通称「八潮大瀬施設」。 以下「八潮大瀬施設」という。)の一部(1階東側中央の部屋(区画))及び同目録記載8の建 物(通称「足立入谷施設」)の一部(4階北東側の北側から1番目の部屋)については、この ような観点からも、その使用を禁止する処分を行うことは相当であると認められる。
また、被請求団体については、従前の再発防止処分により、多数の構成員を集め得る「道 場」を有する建物のほとんどが使用禁止とされるとともに、いわゆる「布施」を受けること が禁止されている。そのような状況の下、被請求団体は、令和6年1月、「運営規則」を改正 し、「賛助会員」と称する制度を新たに設けた上で、「賛助会員」から「入会金」の名目で千円、 「会費」の名目で1か月当たり1万円から5万円の金銭を獲得することを始めた。また、同 年4月30日に実施された八潮大瀬施設に対する立入検査において、合計約70名の出家構成員 (従前の再発防止処分により建物の一部を使用禁止とされた施設の所在地を住所とする出家 構成員を含む。)が八潮大瀬施設に参集していることが確認されるとともに、同施設の「道場」 に設置されたいわゆる「布施箱」に、出家構成員の氏名が記載された現金20円入りの封筒の ほか、現金合計2476円が在中していることが確認された。
これらの事実に加え、現在、被請求団体が管理する施設中、八潮大瀬施設は、いまだ再発 防止処分による土地、建物の使用禁止がされておらず、かつ、多数の構成員を集め得る「道 場」を有していること、被請求団体は、これまで、同施設に出家又は在家の構成員を集めて 集中セミナーを開催し、とりわけ、在家構成員向けの集中セミナーは、短期間に多額の収入 が得られる被請求団体の資金源であったことも併せ考慮すれば、今後、被請求団体が、同施 設の「道場」に多数の構成員を集め、セミナーの参加料等の名目で収入を得る可能性があり、 そのような事態となれば、資金的要素に係る危険な要素が増大するおそれがあるのみならず、 20歳未満の構成員及び一部在家構成員の氏名及び住所の不報告が継続している状況におい て、未特定の構成員が同施設の「道場」に参集することにより、人的要素に係る危険な要素 が増大するおそれもあるといわざるを得ない。そのような状況を考慮すれば、同施設の「道 場」、すなわち、別紙物件目録記載7の建物の一部(1階北東角の部屋(区画)、2階北西角 の部屋、2階西側中央の部屋、2階東側の部屋及び3階北側の部屋)については、新たにそ の使用を禁止する処分を行うことが相当であると認められる。
加えて、北越谷施設のうち201号室等は、前記のとおり被請求団体の事務所等としてその 活動の用に供されていると認められるにもかかわらず、その所在、規模及び用途が報告され ていないのであるから、物的要素に係る危険な要素の質的・量的増大を防止して無差別大量 殺人行為の再発を防止するため、令和6年3月決定と同様、6月間、前掲証拠によって被請 求団体が所有し又は管理する建物と認められる201号室等のうち301号室、303号室、401号室 及び402号室(別紙物件目録記載15の建物)の使用を禁止する処分を行うことは相当である と認められる。
イ なお、当委員会は、被請求団体が、令和5年3月決定が効力を生じたにもかかわらず、そ の後も要報告事項の一部について報告しなかったこと、被請求団体の建物において、教学用 の書籍その他の団体の活動に用いられる多数の物品が、同決定以後、同決定においては使用 が禁止されなかった場所に備え置かれるようになっていることなどを踏まえ、再発防止処分 の実効性を確保し、無差別大量殺人行為の再発を防止するため、同決定において建物の一部 を使用禁止とした9施設について、令和5年9月決定では、その使用禁止の範囲を拡張する 必要性及び相当性を認めて、その旨判断した。
しかるに、かかる必要性及び相当性は、現在においてもなお認められる上、上記のとおり 使用禁止の範囲を拡張した令和5年9月決定が効力を生じたにもかかわらず、被請求団体が その後も、要報告事項の一部を報告しなかったことなどを踏まえると、同決定において建物
第6 結論
以上の次第で、被請求団体に対し、令和6年9月21日から起算して6月間、別紙物件目録記載1ないし16の土地、建物の使用を禁止し、金品その他の財産上の利益の贈与を受けることを禁止する処分を行うこととする。
よって、主文のとおり決定する。
令和6年9月2日
公安審査委員会委員長貝阿彌誠印
委員外井浩志印
委員遠藤みどり印
委員秋山信将印
委員鵜瀞惠子印
委員西村篤子印
委員小松夏樹印
1茨城県水戸市水府町1486番1及び1486番2の土地並びに同市水府町1486番地の2所在の建物(通称「水戸施設」)
2千葉県野田市下三ケ尾字古和清水455番39の土地及び同市下三ケ尾455番地39所在の建物(通称「野田施設」)
3埼玉県八潮市大瀬五丁目6番地3所在の建物1階のうち、北端から2番目の区画(通称「八潮伊勢野施設」)
4徳島県徳島市中島田町四丁目128番地の9所在の建物「後藤マンション」201号室及び202号室(通称「徳島施設」)
5北海道札幌市豊平区美園1条3丁目1番24号所在の建物(通称「札幌施設」)のうち、1階、2階及び3階(ただし、東角の部屋、東角の部屋の北側に隣接する部屋及び南角の部屋(台所(キッチンカウンター及びその北側)を除く部分)を除く。)
6北海道札幌市白石区本通13丁目北1番39号所在の建物(通称「札幌白石施設」)のうち、1階、2階(ただし、南東角の部屋の北側に隣接する部屋を除く。)、3階(ただし、南東角の部屋を除く。)及び4階(ただし、北西角の部屋、南西角の部屋及び南西角の部屋から東側へ3番目の部屋を除く。)
7埼玉県八潮市大字大瀬925番地1所在の建物(通称「八潮大瀬施設」)のうち、1階東側中央の部屋(区画)、1階北東角の部屋(区画)、2階北西角の部屋、2階西側中央の部屋、2階東側の部屋及び3階北側の部屋
8東京都足立区入谷九丁目27番3号所在の建物(通称「足立入谷施設」)のうち、4階北東側の北側から1番目の部屋
9東京都杉並区西荻北三丁目16番8号所在の建物「第六アサヒハイツ」(通称「西荻施設」)のうち、地下1階、1階、2階(ただし、201号室及び202号室(南東角の部屋を除く部分)を除く。)及び3階(ただし、302号室を除く。)
10神奈川県横浜市神奈川区新町4番地11所在の建物「神奈川新町高島ビル」(通称「横浜施設」)のうち、1階、2階(ただし、南東角の部屋を除く。)、3階及び4階(ただし、北東角の部屋及び北東角の部屋の西側に隣接する部屋を除く。)
11愛知県名古屋市中区千代田五丁目21番1号所在の建物「ケイアンドエスビル」1階東側、2階、3階及び4階(通称「名古屋施設」)のうち、1階東側、2階、3階(ただし、西側の部屋、西側の部屋から東側に3番目の部屋及び北東角の部屋の西側に隣接する部屋を除く。)及び4階(ただし、北東角の部屋を除く。)
12京都府京都市南区上鳥羽鍋ケ淵町507番地所在の建物(通称「京都施設」)のうち、地下1階、1階、2階及び3階(ただし、南西角の部屋、南西角の部屋の東側に隣接する南側の部屋及び南西角の部屋の東側に隣接する北側の部屋を除く。)
13大阪府大阪市生野区新今里三丁目10番13号所在の建物(通称「生野施設」)のうち、1階(ただし、南西角の部屋、南西角の部屋の東側に隣接する部屋、南西角の部屋から北側へ3番目の部屋、南西角の部屋から北側へ4番目の部屋及び北西角の部屋を除く。)及び2階
14福岡県福岡市博多区住吉五丁目3番1号所在の建物「三鈴ビル」401号室、402号室、601号室及び602号室(通称「福岡施設」)のうち、401号室、402号室及び602号室
15埼玉県越谷市北越谷一丁目20番6号所在の建物「さくらマンション」(通称「北越谷施設」)のうち、301号室、303号室、401号室及び402号室
16滋賀県甲賀市信楽町小川565番地1及び565番地2所在の建物(通称「甲賀信楽施設」)のうち、別棟東側の部屋
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公安調査庁長官によるアレフに対する観察処分に関する報告書の不報告認定等について - 第5頁
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